ミルク再利用からサーキュラー・エコノミーを目指すベルリンの「Isla Coffee」

キッチンからサーキュラー・エコノミーな社会を目指すサードウェーブコーヒーショップ「Isla Coffee(イスラ・コーヒー)」。余ったスチームドミルクをリコッタチーズやヨーグルトにつくり変え、再利用することでフードロスを防いでいる。

宮沢香奈(Kana Miyazawa)

フリーランスライター/コラムニスト/PR

長野県生まれ。文化服装学院卒業。 セレクトショップのプレス、ブランドディレクターを経たのち、フリーランスでPR事業をスタートし、ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積…

2020.09.30

サードウェーブコーヒーショップの新たな可能性を探るIsla Coffee

ベルリンでは、世界的に展開する大手チェーンより、老舗の「Bonanza Coffee(ボナンザ・コーヒー)」や「THE BARN(ザ・バーン)」といった独自のスタイルを持ったサードウェーブコーヒーショップが人気。

大手チェーンの氾濫しない街の姿は、個性を大切にするこの街の人々の特徴をそのまま表しているかのようだ。

Isla Coffee

Isla Coffeeはエントランスの大きなガラス窓から日が差し込み、奥まで明るく居心地のいい空間が広がっている

個人経営のオリジナリティーあるカフェが多数点在するノイケルン区に2016年にオープンした「Isla Coffee(イスラ・コーヒー)」は、地域に密着した居心地のよいサードウェーブコーヒーショップとして人気だ。

駅からすぐという好立地に、それほど広くない店内でも正面が一面ガラス張りで、自然光と白を基調とした内装がとても開放的。店内の通路を抜けた先には、小さなガーデンがあり、オープンテラスとして利用されている。

Isla Coffee

天気のいい日は、日光浴も兼ねて多くの人が店先のオープンテラススペースを利用している

エスプレッソコーヒーマシーンは、イタリアの老舗メーカー「LA MARZOCCO(ラ・マルゾッコ)」。ベルリンの最先端カフェの多くと同じマシンを導入している。

しかし、Isla Coffeeはスタイリッシュなサードウェーブコーヒーショップとしてではなく、食材をリユースする「サーキュラー・エコノミー」に尽力していることに注目してほしい。

Isla Coffee

イートイン用のコーヒーカップはクールなブラックで統一されている。持ち帰り用はリサイクル紙でつくられたカップを使用

Isla Coffeeでは、カプチーノやカフェラテ用につくったスチームドミルクの余り分を捨てずに取っておき、独自のレシピによってリコッタチーズやヨーグルトへとつくり変えている。つくったリコッタチーズはデザートに、ヨーグルトは朝食メニューに使われる。

Isla Coffeeでカプチーノやカフェラテに使用する牛乳は、1日に約12リットル。しかしほぼ毎日、そのうち約2リットルが残ってしまう。

その残った牛乳をリコッタチーズやヨーグルトにつくり変えることによって、廃棄処分を減少。月に約500ユーロの経費削減にもつながるというメリットも生みだした。

一般的なカフェでは余ったスチームドミルクをそのまま捨ててしまうという事実にも驚いたが、一般の利用者のほとんどがこの事実を知らないのでは?

オリジナルケーキ

余ったミルクからつくられたリコッタチーズを使用したオリジナルケーキ

オーナーのピーター・デュランさんはこう語る。

「僕は大学でサステナビリティーについて学んでいました。その当時から余った食材を再利用するサーキュラー・エコノミーに関心を持っていたんです。Isla Coffeeをオープンする以前はクロイツベルク区*にあるコーヒーショップ「Kaffee9」で働いていたので、そこで得た経験と知識を自分の店に活かしています。

どうやったら余った食材の再利用ができるか、無駄が出ないようにできるか、ごみを減らせるかといったアイデアを考えて、優秀なシェフやキッチンスタッフと一緒にできる限りのことをすべて実行しています。

世界的な問題となっているプラスチックは完全にゼロにすることは、いまのドイツでは非常に難しいですが、極力使用しないように努力しています」

*クロイツベルク区…かつての西ベルリンのもっとも東の区。Isla Coffeeのあるノイケルン区の北西に位置する。

オーナーのピーター・デュランさん

オーナーのピーター・デュランさん

Isla Coffeeが提携しているロースターは、ピーターさんの元同僚がオーナーでベルリンを拠点にする「VOTE Coffee」だ。他にも地元の農家で採れる季節の食材を中心にメニューに使用するなど、飛行機を使わない方法で仕入れを行っている。

このように地産地消システムを取り入れることにより、新鮮な食材が手に入るだけでなく、輸送費の削減やCo2の排出を防ぐことへつながるのだ。

VOTE Coffee

店内で豆を購入することも可能な「VOTE Coffee」

ピーターさんはこう続ける。

「まだ少し先の話になるかもしれませんが、ミッテ区**の「ローザルクセンプラッツ」というエリアに2号店をオープンさせる予定です。

1号店のここは近隣の人たちが多く利用してくれている地域に密着したカフェですが、2号店のエリアはビジネスマンも多く、雰囲気もターゲットも全く違います。そういったなかで僕たちのコンセプトや活動を広げていきたいと思っています。今後は、コーヒーのセレクトにももっと力を入れていきたいですね」

**ミッテ区クロイツベルク区のさらに北西。「ミッテ」はドイツ語で「中央」を意味し、首都の中枢を担う機関が集まっている。

店名の「Isla(イスラ)」とは、スペイン語で「アイランド」の意味を持つ。島にいるようなリラックスできる居心地のよいカフェにしたいという思いで付けたという。

1号店はその思いの通りに近隣に住む人や働く人たちの憩いの場になっており、ベビーカーや犬連れで気軽に訪れる人が多いとのこと。

2号店のオープンが予定されるルクセンブルクプラッツには、ブランドショップや競合となるであろうカフェが多数点在する。ファッション感度が高く、洗練されたカフェやレストランに行き慣れた人たちが行き交うエリアで、フードロスへの関心が高まってくれることを願う。

Isla Coffee(イスラ・コーヒー)
https://www.facebook.com/Islacoffeeberlin/

※掲載している情報は、2020年9月30日時点のものです。

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