コンシャスキャピタリズムというワードの意味について、きちんと知っておこう。コンシャスキャピタリズムの概念、意義について詳しく解説するとともに、それを推進する企業などの実例も紹介。今後の展望までを含めて、いま知っておきたいことをまとめた。
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コンシャスキャピタリズム(Conscious Capitalism)とは、意識的という意味の「conscious」と、資本主義を指す「capitalism」をかけ合わせたワードで、「意識の高い資本主義」「思慮深い資本主義」などと呼ばれることもある。
そもそもこれは、2013年、米大手オーガニック食品会社「ホールフーズ」共同設立者であるマッキー氏と、大学教授のシソーディア氏による共著「Conscious Capitalism」で提唱された言葉と概念。
日本版「世界でいちばん大切にしたい会社 コンシャス・カンパニー」という著書名で、2014年に出版されている。
本著では、コンシャスキャピタリズム及び、コンシャス・カンパニーについて、以下の4本の柱が重要だと説いている。
① 企業の存在域を再考する
利益追求だけでなく、その企業の事業が、どのような社会的価値を生むかをとらえなおす。存在意義を高めることで、ステークホルダーとの関係性を強化することにもつながる。
② ステークホルダーとのよい関係を築く
顧客や取引先にかぎらず、その企業の事業が影響を与えるステークホルダーすべてに対し、環境や社会なども含めた影響を注視する。ステークホルダーとのよい関係性によって、よりよいビジネスが生まれるという考え方。
③ リーダーシップ
ステークホルダーの関心を集めることに始終せず、その企業のコンシャスキャピタリズムに賛同する同志を募ることにリーダーシップを発揮する。
④ 企業文化
そこで働く喜びや達成感が得られる源になるような、思いやりのある企業意識、企業文化を社内に浸透させる。
売り上げなどの数値だけでなく、情緒や精神面にも価値を見出すことも、コンシャスキャピタリズムの特色だろう。
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コンシャスキャピタリズムを積極的に推進している企業の例を見てみよう。
まずは、著者が設立に携わっているオーガニック食品や自然食品小売業「ホールフーズ」は外せない。
企業使命として”環境と人の繁栄”を掲げ、食の安全はもとより環境への負荷が少ない有機栽培の導入、持続可能な観点に立った調達などを重要視している。
また、発展途上国において起業を助けるマイクロクレジットの財団運営や、学校に野菜を提供する奉仕活動、地域に健康的な食事を提供するプログラムといった、非営利の事業を運営していることでも知られる。
さまざまなエシカル・アクションで信頼を得る「Patagonia」もまた、コンシャスキャピタリズムを取り入れている企業だ。
もともとアウトドア製品を扱うブランドとして、”故郷である地球を救うためにビジネスを行う”が企業の目標。売り上げの一部を、環境団体に寄付するなど自然環境の保護に取り組んでいる。
ほかにも、同社で扱う綿製品にオーガニックコットンを用いたり、リサイクル素材の有効利用にも熱心。環境問題のみならず、人権問題などにもアクションを起こし、たびたび話題になっている。
日本における、コンシャスキャピタリズムの状況はどうか。
前述の著者のひとり、シソーディア氏は「TOYOTAやHONDAはコンシャス・カンパニーだと思う」とあるインタビューで答えている。
ただ同記事で、TOYOTAが業績で世界一を目指したとき、コンシャスキャピタリズムの根幹が揺らぎ、品質や安全問題が噴出したとも記述。
同氏は、価値を生み出す経済の仕組みである資本主義のひずみについて指摘。自己の利益のみを追求してきたこれまでの資本主義のひずみを、是正しうるのが「コンシャスキャピタリズム」だと説いている。
新型コロナウィルスのパンデミックで、世界は一変し、グローバル資本主義は岐路に立たされている。そんな折、従業員を大切にする企業の業績は上向く傾向にあると「NHK スペシャル『パンデミック 激動の世界(3)』」(2020年9月27日放送)で報じた。
パラダイムシフトが避けられないいま、人や環境にやさしいコンシャスキャピタリズムは、単なるムーブメントに終わらず、さらに推進されていくのではないだろうか。
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