今回は、エシカル協会代表理事の末吉里花さんをナビゲーターに迎え、「エシカルへの第一歩」をテーマにインタビューを実施。「何からはじめたらいいかわからない」「難しくてよくわからない」と感じる人へ前編後編に分けてお届けする。ELEMINISTと一緒に学んでいこう。
Chihiro Oshida
エディター・ライター/エシカル・コンシェルジュ
文化服装学院卒業後、出版社やPR会社勤務を経て、オーストラリア・バイロンベイへ留学。帰国後、エシカルに出会う。エシカル・コンシェルジュとして、イベント企画やエシカル初心者向けのお話会を開…
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末吉さんは、アフリカ最高峰・キリマンジャロを登頂し、地球温暖化が進めばいつか消えてしまうといわれる氷河を前に「環境問題の解決につながる活動をしていこう」と心に決めたという。
そして2015年、エシカル協会立ち上げを行なった。エシカル・コンシェルジュ講座を軸に、持続可能な社会実現のための普及活動に取り組んでいる。
ELEMINISTでは、エシカルの草分け的存在である末吉さんに、「エシカルへの第一歩」をテーマにインタビューを実施。無理なく続けられるエシカルのアイデアやヒントを前編・後編に渡ってたっぷりと聞いた。
前編でお届けするのは、末吉さんがエシカルに目覚めてからはじめに取りかかったことや家での工夫、ふだんの心がけ。いますぐ実践できるアイディアが満載だ。
末吉:まずは自分が持っている洋服をクローゼットからすべて出して、洋服たちの取り調べをすることからはじめました。フェアトレードブランド「ピープルツリー」創始者のサフィア・ミニーさんとの出会いが私のエシカル活動の始まりなので、「ファッションで世界を変える」という言葉が頭に刷り込まれていたんですよ。
ーー取り調べですか?
末吉:出してみたら、母や祖母からもらったものやなぜ買ったか思い出せないもの、どこでつくられたかわからないもの、素材に疑問を持つようなもの、ずっと着ていない服がたくさんありました。捨ててしまうのはもったいないので、もう着ないものは大切な友達にあげたりと整理をしたんです。そのうちに洋服にも生まれ故郷や辿ってきた道があって、一枚一枚に異なるストーリーがあることがわかりました。それからは、洋服を買うときはきちんとそれぞれのストーリーを知ることからはじめています。
Photo by 一般社団法人エシカル協会
左:お気に入りの1970年のヴィンテージワンピース 右:「ピープルツリー」創始者のサフィア・ミニーさんと
末吉:物心ついた頃からヴィンテージファッションが大好きでした。よく母や祖母から洋服をもらったり、あとは中学から高校まではNYに住んでいたので、街中のヴィンテージショップ巡りもしていました。
それから、サフィアさんもよくヴィンテージアイテムを着ていたんです。フェアトレードとミックスしたファッションスタイルがとてもすてきで……。フェアトレードはもちろんですが、洋服を長く着続けることもとても大切にされていました。そう考えると、ヴィンテージもエシカルであり、「エシカルはオリジナリティを表現できる」と気づいて嬉しくなりました。
Photo by 一般社団法人エシカル協会
左:曽祖母のMIKIMOTOの帯留めをブローチにしたもの 右:曽祖母から譲り受けた十字架の真珠のリング
末吉:整理することで「Rethink(リシンク)」、考え直すきっかけになると思います。
末吉:私がふだんの生活のなかでいつも意識していることのひとつです。
ーーどんなことを意識されているんですか?
末吉:7Rです。「7R」の上から順に常にできることはないか考えるようにしています。順番がとても大切で一番こだわりのあるエシカルといえます。
Photo by 一般社団法人エシカル協会
1.Rethink(リシンク)考え直す
2.Refuse(リフューズ)断る
3.Reduce(リデュース)減らす
4.Repair(リペア)修理する
5.Reuse(リユース)そのままの形で再利用する
6.Repurpose(リパーパス)別の目的のために再利用する
7.Recycle(リサイクル)再び資源として利用する
末吉:3Rの基本は「リデュース・リユース・リサイクル」ですが、私はそれでは足りないと思っています。最近は最初に「リフューズ」を足して4Rや、さらに「リペア」を足して5Rなどいろいろ聞きますが、私はオリジナルの7Rを基準にしています。基準が明確なので何をするにも迷いがなくなりました。
ーー買い物や何かを選択するときにとても役立ちそうですね!
末吉:それからリフューズは相手に理由まで伝えることがとても大事で、私もいつもそうしています。断るだけだと相手に不快な思いをさせてしまうかもしれないので、なぜ断ったか伝えることで理解が深まりますよね。
ーーそうですよね、私も日頃から心がけています。それにしても、リパーパスもはじめて聞きました!
末吉:リパーパスはあまり聞かない言葉かもしれませんが、アップサイクルと同じ考えです。そういえば以前「Re」から始まる言葉を見つける授業があったんですが他にもたくさんありましたよ!
ーー自分に合った「Re」を見つけて、末吉さんのようにオリジナルのMy「R」をつくるのも楽しそうですね!
末吉:料理をするときに、なるべく使い捨てのものを出さないことですね。できるだけ無駄が出ないように食材を工夫したり、保存性の高い発酵食をつくっています。あと昔から、ラップは繰り返し使えるミツロウラップを愛用しています。そうすることで買い物に行く回数も減らすことができますよ。
ーーとくにいまの時期は新型コロナウイルスの影響で世の中に使い捨てのものがたくさん増えているので、せめて家の中ではごみを出さないようにしたいですよね。
Photo by 一般社団法人エシカル協会
左:いただいた手づくり味噌と自家製塩麹 右:愛用しているミツロウラップとBPAフリーのシリコンラップ
Photo by 一般社団法人エシカル協会
左:免疫アップのために毎朝飲んでいる有機にんじんの生姜入りコールドプレスジュース 右:ジュースをつくるときに大量に出るにんじんの残りカスを使ってつくったチリコンカン
末吉:本当ですよね。矛盾がいろんなところで起きていて、また元の状態に引き戻されるのではないか? という不安を私も感じています。でも、幸か不幸か地球にとってはいいことが起きていますよね。人の動きや経済活動が緩やかになったおかげで空気が綺麗になっています。さまざまな国で二酸化炭素排出量が激減し、大気汚染の改善も見られます。
ーーたしかにネガティブな要素の一方で、ポジティブなニュースもありますね。
末吉:長年この活動を続けてきましたが、いままでは経済が活発に動くなかでしかエシカルについて考えることができませんでした。すべてがストップしているいま、「本当に必要なものって何だろう?」「幸せのものさしって?」など、改めてエシカルとは何なのか考える一番いい時期だと思っています。
ーー忙しい日常のなかでは考えることができなかった、本質的なものに目を向けるチャンスなのかもしれませんね。
末吉:それと同時に、この状況が収束してまた通常に戻ったとき、世界がどのような戻り方をするのかについても、しっかり考えていきたいです。止まっていた分を取り戻すかのように、一気に経済活動が爆発することが一番怖いと感じています。
先日も日本政府はコロナ禍の隙をついて、パリ協定における「温室効果ガス国別削減目標」の引き上げをしないと決定しました。パリ協定とは2020年以降の気候変動に関する国際的な枠組みです。他国は削減目標量の引き上げを表明しており、日本の対応にも注目が集まっていました。今回の結果を受けて国内外から厳しく批判されていますが、いまの状況ではすぐに掻き消されてしまいます。
それをさせないためにも変化への動きは止めてはいけません。いつになるかはわかりませんが、新型コロナウイルスの問題はいつかは収束するはずです。でも、気候危機はこの地球で生きていくためにはずっと続く問題です。いまだからこそ、みんなで考えていきたい。同じ思いを共有する仲間たちとしっかりつながりながら、できることを粛々とやっていく。これが一番大事ではないでしょうか。
ーー収束後にどういう世界を求めるかは、「いま」にかかっているということですね。コロナ禍を一人ひとりがどう考え、ポジティブに変換していくことが鍵になっていきそうですね。もちろんいま一番優先しなくてはいけないことは、これ以上感染を広めないことですが……これもまたエシカルな考え方につながっていますよね?
末吉:そうですね。相手の立場を考えて「影響をしっかり考える」ことがエシカルなので、この概念を知っているだけで行動が変わりますよね。いままさに世界中でエシカルな考え方と行動が必要になっていると思います。
Photo by 一般社団法人エシカル協会
左:著書『はじめてのエシカル』 右:裏表紙カバー「エいきょうを シっかりと カんがえル」
末吉:はい。エシカル・コンシェルジュは、小さなことでも行動に移す実践者のことを指します。つまり「変化の担い手」である、ということです。
ーー私もこの講座を受講したことがエシカルなライフスタイルの始まりでした。
末吉:エシカルへの第一歩におすすめしたい講座です。今期は全11回すべてオンライン配信なので、全国どこにいても好きな時間に学ぶことができます。すでに募集をはじめているので、エシカルについて理解を深めたい方にぜひ受講いただきたいです。
エシカル・コンシェルジュ 2020春講座 詳細
後編は、末吉さんのヴィーガンについての考え方やおすすめレシピを特別にうかがった。末吉さんが大切にしている仲間のことやエシカルの魅力、日頃から参考にしている情報など盛りだくさんの内容でお届けする。
後編はこちらから
取材・文/大信田千尋、編集/深本南(ともにELEMINIST編集部)
編集後記
「家畜伝染病予防法施行規則の一部を改正する省令」のパブリックコメントが、5月13日から6月11日まで募集されている。末吉さんは、豚や牛、ヤギ、羊の放牧が大きく制限されるような基準があると危惧している。また将来的には、鶏にも派生する可能性があるという。
アニマルウェルフェアの体現のため、一般社団法人エシカル協会では広く署名を呼びかけている。改正案の詳細は以下の記事を参照されたい。
放牧制限しないで。家畜伝染病予防法施行規則の一部を改正する省令案
認定NPO法人アニマルライツセンター
記事詳細はこちらから
https://www.hopeforanimals.org/pig/infectious-disease-pub/
一般社団法人エシカル協会代表理事・日本ユネスコ国内委員会広報大使
慶應義塾大学総合政策学部卒業。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。日本全国の自治体や企業、教育機関で、エシカル消費の普及を目指し講演を重ねている。著書に『祈る子どもたち』(太田出版)。『はじめてのエシカル』、新刊『じゅんびはいいかい? 名もなきこざるとエシカルな冒険』(山川出版社)。消費者庁「倫理的消費」調査研究会委員(2015.5~2017.3)、東京都消費生活対策審議会委員、日本エシカル推進協議会理事、日本サステナブル・ラベル協会理事、NPO法人FTSN(Fair Trade Students Network)関東顧問、認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン アドバイザー、SOMPO環境財団評議員、一般社団法人地域循環共生社会連携協会理事、花王株式会社ESGアドバイザリーボード、新渡戸文化学園NITOBE FUTURE ADVISOR、1% for the Planetアンバサダー、ピープルツリーアンバサダー。エシカル協会
エシカル協会サイト:https://ethicaljapan.org
インスタグラム:https://www.instagram.com/ethical_association/
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