
西武不動産が全国18地区で展開する森林保全プロジェクト「西武の森」が、本格開始から2年を迎えた。2030年度までに社有地約1億㎡の30%を環境保全地区とする目標に対し、2025年度末までに71.5%を達成している。

ELEMINIST Press
最新ニュース配信(毎日更新)
サステナブルに関わる国内外のニュース、ブランド紹介、イベントや製品発売などの最新情報をお届けします。

紙製コーヒーポッドで「おうちスターバックス」体験を
株式会社西武不動産は、全国に所有する約1億㎡の社有地のうち30%となる約3,000万㎡を2030年度までに「環境保全地区」とする環境保全プロジェクト「西武の森」を進めており、本格開始から2026年10月末で丸2年を迎えた。
対象地区として選定した18地区の「西武の森」では、この2年、それぞれの地域の特徴などを踏まえた活動を地域の人々とともに展開してきた。
こうした取り組みが全国に着実に広がり、2025年度末までの達成目標約60%に対して71.5%を「環境保全地区」にすることができ、極めて順調に進んでいるという。

本プロジェクトを展開するうえで、同社は地域との連携を特に大切にしてきた。この2年で、北海道標津町、鶴居村、宮城県栗原市、滋賀県愛荘町の4市町村や環境省(釧路自然環境事務所)などと「連携・協力に関する協定」を締結し、環境保全活動を連携して進めるとともに、地域の活性化につなげる活動を展開していく礎を築いてきた。
このうち、多くの希少種が確認されている「鶴居・西武の森」(北海道鶴居村)では、生物多様性の保全に官民一体で取り組んでいることが評価され、2026年6月に地域生物多様性増進法に基づく環境省の「自然共生サイト」に認定された(「飯能・西武の森」は2023年に認定済み)。この認定については、現在その他の「西武の森」でも取り組みを進めている。
西武グループでは、2024年5月に公表した「西武グループ長期戦略2035」において、特に取り組むべき6つのマテリアリティ(重要テーマ)を設定。本プロジェクトは、そのひとつである「脱炭素・資源有効活用」を中心に、生物多様性の保全や自然資本の維持に関する取り組みに基づき推進されている。
きっかけとなったのは、2007年に閉鎖した北海道深川市のスキー場跡地において、地元の森林組合から2022年に森林整備に関する提案を受けたことだった。それまでは災害防止の観点で森林整備を考えていたが、古い木を伐採して新しい木を植えることでCO2の吸収量が増え、それが地球温暖化防止につながることを学び、2023年より環境保全活動を開始。この活動を同市だけでなく他の未開発の土地でも行うこととし、2024年10月に全国18地区の社有地を「西武の森」と冠して本格的に始動した。
西武不動産 事業企画部 サステナビリティ推進室長の渡部精一郎氏は、次のようにコメントしている。
「当社が進めている森林保全プロジェクトは、地域の皆さまのご協力のおかげで想定を大きく上回るペースで進んでおり、大変ありがたく感じております。『西武の森』の多くは、もともと観光事業用地として取得した土地ですが、今日まで、開発に着手しなかったという背景があります。だからこそ、私たちは、地域の皆さまとともに足並みを揃えて、環境保全という考えだけに留まらず、地域の活性化にもつながる活動を展開していきたいと考えております。多くの皆さまから愛される、『西武の森』を目指し、今後も活動を続けてまいります」

本格開始以前に環境保全活動に取り組んでいた飯能、芦ヶ久保、葉山の3地区に加え、西武グループがホテルやゴルフ場、スキー場などの観光事業用地として取得し開発しなかった森、国立公園または国定公園などを含んだ地区も対象として、北海道から鹿児島県までの18地区を選定した。
北海道:標津・鶴居・深川・真駒内・森町
宮城県:栗駒高原
新潟県:小千谷
群馬県:長野原
埼玉県:飯能・芦ヶ久保
神奈川県:葉山・箱根・湯河原
滋賀県:愛荘・永源寺・マキノ白谷
宮崎県:南郷
鹿児島県:鹿屋
合計面積は3,096.7万㎡(このほか一部事業地等も対象)
同社が定義する「環境保全地区」は以下のいずれかに該当する地区・事業地を指す。
・自治体、関係行政機関等と環境保全等に関する合意書、協定書等を締結した地区および事業地
・森林組合、林業会社等と森林施業等に関する業務委託契約等を締結した地区および事業地
・自然共生サイト等、公的機関等による環境認証を取得した地区および事業地
環境保全に向けた主な活動内容
・過去に閉鎖した事業所等でのネイチャーポジティブ(自然再興)活動
・生物多様性の保護活動
・森林整備によるCO2の削減推進
・地元推進のエコツーリズムやボランティア活動等への参画による観光振興と保全の両立
・西武グループの事業所と連携した環境保全活動の推進と環境認証取得
・自然共生サイト等の環境認証取得に向けた活動

所在地:北海道阿寒郡鶴居村/面積:390.5万㎡
全域が釧路湿原国立公園内に位置し、釧路湿原が見渡せる景勝地・宮島岬(環境省所管地)への入口にもなっている。同社は観光事業の開発用地として1987年に取得したものの、未開発の状態が続いていた。
当地ではクマゲラやエゾシマリス、ニホンザリガニといった希少種が確認されており、同社はこれらの保全を目的にトレイルカメラを設置し、エゾシカの生育状況の把握や、希少種が生育するエリアの水環境・土砂の流出状況の確認などを行っている。
2024年春に「鶴居村釧路湿原観光コンテンツ創出協議会」が立ち上がり、2025年2月には同社、鶴居村、環境省釧路自然環境事務所の3者で「連携・協力に関する協定書」を締結。その後、土地所有者として宮島岬までの林道整備を行うなど、自然環境の保全とアドベンチャートラベルの実施に向けて協力している。現在は鶴居村認定ガイドが同行するツアーに限って当地を開放しており、2026年6月30日に「自然共生サイト」に認定された。

所在地:北海道札幌市南区/面積:96.2万㎡
2007年に閉鎖した真駒内スキー場の跡地で、一部は太陽光発電事業で活用しているものの、約96万㎡は遊休地のままだった。
ゲレンデの跡地については豪雨による土砂災害などを防止するため森に戻すことが重要と考え、「森林再生の第一人者」として知られる北海道科学大学の岡村俊邦名誉教授の協力を得て、単に森に戻すのではなく北海道に昔からあった森に戻す森林再生に挑戦している。
用いるのは岡村名誉教授が考案した「生物学的混播・混植法」という手法。1年目の2025年4月には直径3メートルほどの防草シートを敷設し、1年かけて雑草を枯らす。2年目の2026年4月には、ミズナラやケヤマハンノキといった北海道に自生する20種の苗木から、異なる8種8本を1つの防草シートに植樹した。試験施工は4年間実施する予定で、今後は植樹した苗木の成長を確かめながら、ゲレンデ跡地に適している種を見極めていく。

所在地:宮城県栗原市/面積:328.4万㎡
全域が栗駒国定公園内に位置し、1980年代後半から90年代にかけてスキー場の用地として取得したが、開業には至らなかった。
希少な高山植物も多く、季節によって豊かに表情を変えていく自然を守りつつ次の世代へ森林を受け継ぐため、地元の栗原市と協議を続け、2025年8月に「連携・協力に関する協定書」を締結。
あわせて株式会社バイオームとともに、同社が開発・運営する生きもの探しアプリ「Biome」を使い、ネイチャーポジティブについての理解を深める環境研修プログラムの開発にも着手した。2025年から2年連続でモニター研修を実施し、2026年6月には西武グループが実施する「西武塾」の活動で、子どもたちがネイチャーポジティブについて学ぶ特別プログラムを行った。将来的には企業向けの環境研修プログラムとして商品化し、地域振興に貢献していく考えだ。

所在地:群馬県長野原町/面積:70万㎡
群馬県北西部の標高700メートル以上の高地に位置する。用地管理の一環で吾妻森林組合に支障木を伐採してもらったことがきっかけで、2025年から同組合に依頼して更新伐採を実施している。
更新伐採とは、範囲を決めて計画的に伐採・植林することで森を若返らせ、森林を健全な姿で次の世代へ引き継ぐための取り組み。2025年は4.4万㎡、2026年は1.5万㎡のエリアを対象に、カラマツやコナラなどを伐採し、シイタケのほだ木となるコナラを植林している。
2026年3月には「西武の森」では初となる間伐材を使用した看板を設置したほか、子どもたちに絵を描いてもらうオリジナルキーホルダーも制作した。

所在地:滋賀県愛知郡愛荘町/面積:13.8万㎡
愛荘町常安寺地区の民家や農地に隣接する里山で、そのほとんどが天然林。一部は保安林に指定されている。ゴルフ場の用地として1968年に取得したが、社会情勢の変化などにより開発計画は進まなかった。
地元の株式会社坂東林業と森林整備をスタートさせ、2028年度までに適正に管理された健康な森に戻す活動を進めている。また2026年6月には、愛荘町と同じ西武グループの近江鉄道との3者で「連携・協力に関する協定書」を締結。森林作業道を遊歩道として地域が利用できるよう活用を検討している。
2026年3月には町内の小学生を対象にした植林体験会を実施。10月12日には当地内をコースとした地元自治会主催のウォーキングイベントも開催された。
ホテルやスキー場のために取得され、開発されないまま残った土地。バブル期の名残ともいえるそれらが、いま森として価値を持ち直している。
興味深いのは、保全だけで終わらせず、ガイド同行のツアーや企業研修、小学生の植林体験、地域のウォーキングイベントといった「使い方」が同時に設計されていることだ。手つかずで守るのではなく、人が入ることで維持される森もある——里山的な発想が、企業の遊休地に適用されている。
問い合わせ先/株式会社西武不動産
https://www.seiburealsol.jp/
ELEMINIST Recommends