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米国北東部のニューイングランド地方で、在来の生態系や漁業に深刻な被害を及ぼす外来種ヨーロッパミドリガニを、駆除するだけでなく「捕まえて食べる」ことで新たな市場や食文化をつくり、個体数を抑えようという動きが広がっている。

Aoi Kurogi
ライター
元新聞記者。幼少期に地球温暖化のドキュメンタリーを見て以来、環境問題に興味を抱く。現在は国際環境NGOなどでも執筆活動中。
マサチューセッツ州、バーモント州などの6つの州を含むニューイングランド地方で、在来の生態系や漁業に深刻な被害を与えている外来種「ヨーロッパミドリガニ」を食用として活用する動きが広がっている。単に駆除するだけではなく、新たな食文化や市場をつくることでその数を減らす試みだ。
ヨーロッパミドリガニは欧州原産の小型のカニ。在来の貝類などを大量に捕食し、藻場や湿地を破壊することで知られる。温暖化した海に適応しやすく、気候変動の影響により生息域はアラスカや日本、南アフリカなど世界各地に拡大している。
なかでも深刻なのが漁業への影響だ。米メイン州ではアサリの漁獲量が1978年の約360万kgだったが、2025年には約57万kgまで減少。漁業への被害は年間数千万ドルに上るとされる。
そこでうまれたのが「捕まえて食べる」という発想だ。ヨーロッパミドリガニを新たな水産物として市場に流通させる取り組みが広まっている。
食用になるのは脱皮直後の個体だ。ヨーロッパミドリガニは体が小さく、硬い殻のままでは食べられる身が少ないが、脱皮直後は殻ごと丸ごと食べられる「ソフトシェル」になる。硬い殻のままの個体では1匹8セントほどなのに対し、ソフトシェルは1匹3ドルで取引されることもある。
この商業利用を切り開いた企業の一つが、2020年に設立された「shell+claw」だ。捕獲したカニを一匹ずつ選別し、脱皮直後のソフトシェルをレストランなどに届けている。厄介者として扱われてきた生物を、捕獲から飼育、流通、調理まで含めた新しい市場を成立させようと取り組んでいるのだ。
創業者のマイク・マシ氏は海洋科学を教える高校教師だった。ヨーロッパミドリガニの「ソフトシェル」に市場としての可能性があると知り、事業化に踏み切った。同社は創業以来、18トン以上のカニを収穫し、3000個以上のソフトシェルを提供してきたという。
こうした動きを背景に、ニューイングランド地方でヨーロッパミドリガニを提供するレストランは2021年以降10倍以上に増加。フライ、サンドイッチ、パスタ、ソース、マレーシア風の麺料理「ラクサ」などにも使われるという。
食用だけではない。ペット用のおやつ、魚醤、さらにはカニを使った蒸留酒など、さまざまな商品への活用も試みられている。
ただし、食用化だけで外来種問題が解決するわけではない。捕獲や加工を担う漁業インフラの不足や、地域間の流通体制の未整備といった課題も残る。食用化はすでに定着してしまった外来種による被害を軽減する一つの手段にすぎない。
生態系への影響を根本から防ぐには、そもそも外来種を「持ち込まない」ことがもっとも重要だ。環境省は、外来種による被害を防ぐための「外来種被害予防三原則」として、「入れない」「捨てない」「拡げない」を掲げている。
ヨーロッパミドリガニはすでに日本でも確認されている。外来種とどう向き合うかは、私たちの足元にもある課題だ。
※参考
Invasive green crabs are bad for the environment, so maybe eating them could help | AP News
shell+claw
侵略的な外来種|日本の外来種対策|環境省 自然保護局
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