亡き人へ手紙を送る 英国で増える「白い郵便ポスト」

白い郵便ポスト

Photo by Kojiro Nishida

大切な人を亡くした悲しみに、どう向き合うか。イギリスでは、故人への思いをつづった手紙を投函できる「白い郵便ポスト」が各地に広がっている。

Kojiro Nishida

ライター

イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。

2026.09.14
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はじまりは9歳の少女の願い

電話ボックスと郵便ポスト

Photo by zeynep elif ozdemir on Unsplash

イギリスといえば、赤い電話ボックスに赤い郵便ポスト。ところが近年、各地で「白い郵便ポスト」が増えている。

白い郵便ポストが見られるのは、墓地や火葬場など。亡くなった家族や友人に宛てた手紙やカードを投函するための、特別な郵便ポストだ。

はじまりは2022年、イングランド中部の都市ノッティンガム近郊にあるゲドリング火葬場。亡くなった祖父母に誕生日やクリスマスのカードを送りたいという、当時9歳だったマチルダ・ハンディさんの願いを受け、この火葬場で働いていた母親のリアンさんが設置を提案し、実現した。

その年のクリスマス前に、「Letters to Heaven(天国への手紙)」と書かれた最初の白いポストが誕生し、設置後わずか数週間で、100通を超える手紙やカードが投函された。予想以上の反響を受け、同火葬場を運営するウェスターリー・グループは、イングランド、スコットランド、ウェールズにあるグループのすべての墓地・火葬場に、同様のポストを設置することを決めたという。

白い郵便ポスト

Photo by Kojiro Nishida

イングランド東部の港町、グリムズビーの火葬場に設置されている白い郵便ポスト。「Letters to Heaven(天国への手紙)」と書かれている。

その後、この取り組みはグループ外の墓地や火葬場、地方自治体にも広がりを見せている。最近では2026年8月、イングランド北西部のチェシャー・イースト自治体が、「Letters to Loved Ones(大切な人への手紙)」と名付けた白い郵便ポストを、管轄する8か所の墓地に設置。さらに1か所への設置も予定している。

なお、チェシャー・イースト自治体およびウェスターリー・グループでは、白い郵便ポストに投函された手紙は開封されることも、内容が読まれることもなく、完全な守秘のもとで扱われる。回収後は堆肥化され、墓地の敷地へと還されるという。もちろん通常の郵便サービスではないため、投函する際の宛先の記入や切手は不要だ。

グリーフケアの一環としても注目

手紙

Photo by Debby Hudson on Unsplash

白い郵便ポストは、グリーフケアのひとつの形としても注目されている。グリーフとは、大切な人やペット、ものを失ったときに生じる悲しみや喪失感のこと。グリーフケアは、その人が抱える思いや悲しみに寄り添いながら、喪失と向き合い、少しずつ日常を取り戻していく過程を支えることをいう。

もともとイギリスでは、家族や友人などの親しい人に、誕生日やクリスマスのカードを贈る習慣が広く根付いている。死別後も、故人に宛てて手紙を書き、伝えたかった思いや日々の出来事を書き出すことは、悲しみと向き合い、気持ちを整理するきっかけになるのかもしれない。

チェシャー・イースト自治体のデイヴィッド・ジェフリー議員も、「悲しみは、きわめて個人的な経験です。多くの方が、亡くなった大切な人とのつながりを持ち続けることに、心の支えを見出していると私たちは感じています」と話している。

※参考
'Letters to Loved Ones' post box scheme launched|BBC
‘Letters to Heaven’ memorial post boxes|Westerleigh Group

※掲載している情報は、2026年9月14日時点のものです。

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