電気自動車が蓄電池代わりになる 欧州で注目される「V2G」技術

V2Gイメージ

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気候変動による異常気象が、欧州の電力供給に負荷をかけている。熱波による冷房需要の急増、高温による電力網の不具合、暴風雨や山火事による設備損傷。停電への備えとして注目されているのが「V2G(Vehicle to Grid)」技術。車庫にあるEVが、その解決策になり得るかもしれない。

Naoko Tsutsumi

エディター/ライター

兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。

2026.08.19
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「V2G」とは? 電気自動車から電力網に放電する技術

「V2G」とは、「Vehicle to Grid(車から電力網への意味)」の略。電気自動車にためている電気を電力網(グリッド)に放電する技術だ。わかりやすく言うと、電気自動車を蓄電池代わりに使えることだ。

欧州で環境にやさしい交通やゼロミッション輸送システムを推進する国際NGOトランスポート・アンド・エンバイロメントの委託によるフラウンホーファー研究機構の調査によれば、V2Gが欧州全域で適切に導入されれば、電力網増強などのコストを2040年までに年間最大で220億ユーロ(約4兆円)削減でき、2030年から2040年の累計では最大1,750億ユーロ(約32兆円)の削減効果が見込めるという。

出力抑制の低減にも

V2Gはまた「出力抑制」を減らす役割も果たす。

電気は大量にためることができないため、需要と供給のバランスをとる必要がある。仮に、発電量が需要を上回ったとき、発電量を減らすことを「出力抑制」と言う。

ドイツだけでも2024年、約9,374GWhの再エネ電力が抑制された。これはEV約300万台を1年間走らせる電力量に相当する。V2Gが普及すれば、これまで抑えられていたこの電力を、無駄にせず活用できるようになる。

ミシガン大学のパース・ヴァイシュナフ助教授は、「自動車メーカーは、車を売る以外に売り込める新しいビジネスチャンスを探している」と話すが、充電インフラ企業にとっても同様だ。いくつかの実証実験で使われている双方向充電器も、バルセロナ発のEV充電企業Wallboxなど、欧州の企業が手がけているという。

駐車中に年間最大14万円の収入に?

フォルクスワーゲン取締役のマーティン・サンダー氏が「電気モビリティが真価を発揮するには、顧客にとって経済的にも意味のあるものでなければならない」と話すように、V2Gは個人のEVオーナーにも大きな経済的恩恵をもたらす。

フォルクスワーゲンは、傘下のエネルギーブランドElliと連携し、EV・スマートメーター・双方向充電器・電力料金プランを一体化したV2Gサービスを、2026年第4四半期にドイツで展開する予定だ。すでに事前登録も始まっているという。条件が整えば、駐車中の夜間に車のバッテリーを電力市場の需給に合わせて活用するだけで、年間700〜900ユーロ(約11万2,000〜14万4,000円)を得られる可能性があるそうだ。

同様の動きは、キアとヒュンダイ、メルセデス・ベンツなど各社にも広がっている。イギリスではBYDが、新電力会社オクトパスエナジー(Octopus Energy)の料金プランと組み合わせ、ドライバーが電力を供給できる仕組みをすでに始めている。

停電時の“隠れた電源”になる、EVが担う防災力

停電時の備えとしての価値も見逃せない。充電されたEVのバッテリーは、冷蔵庫や医療機器、照明といった重要な家庭設備を、条件しだいで数日間動かし続けることができるという。

もちろん、対応車種はまだ限られ、双方向充電器の導入には通常より数千ユーロ(数十万円〜百数十万円程度)高い費用がかかることもある。電力会社の接続承認に時間がかかったり、バッテリーの劣化を心配するメーカーもあったりと、課題も残る。

それでも、専門家の見方は前向きだ。カリフォルニア大学アーバイン校のスコット・サミュエルセン名誉教授は言う。

「停電時に家庭へ電力を供給できることの効果は、すでにわかっています。この技術は今後、非常に、非常に普及していくでしょう」

平時は移動のために使う車が、非常時には家庭を照らす「電源」になり、駐車時には経済的な恩恵をもたらす。EVは単なる移動手段から、私たちの暮らしを支えるインフラへと変わりつつありそうだ。

※掲載している情報は、2026年8月19日時点のものです。

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