Photo by COBOD
フランスで、欧州最大となる3Dプリント集合住宅が完成した。3階建て全12戸の公営住宅で、建物の骨組みと壁のプリント工程はわずか34日。省資源・省エネルギーも実現したこの建物から、住まいづくりの新しい選択肢を考えたい。

Naoko Tsutsumi
エディター/ライター
兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。

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Photo by COBOD
「ViliaSprint²(ヴィリア・スプリント2)」と名付けられたこの住宅は、フランスの住宅開発会社Plurial Noviliaが手がけ、建築設計をHOBO Architectureが、施工をPERI 3D Constructionが担当したプロジェクトだ。使用されたのは、大型3Dプリンター「COBOD BOD2」。セメント状の材料を層状に積み重ねながら、建物の外壁を成形していく仕組みである。
この建物の特徴は、耐力構造(建物を支える骨組み部分)と、すべての壁面を現場で直接プリントした、フランス初の事例である点だ。
当初50日を見込んでいたプリント作業は、わずか3人の作業員の監督のもと、34日間で完了した。もちろん、屋根や窓、配線工事など、人の手による仕上げ作業は必要であり、着工から入居可能になるまでには、2025年3月から2026年初頭までの期間を要している。それでも、隣接地に建てられた従来工法による同規模の建物と比べると、3か月早く完成したという。
環境面への配慮も見逃せない。コンクリートを現場で製造することで輸送にともなう排出量を抑え、設計を最適化することでコンクリートの使用量もおよそ1割削減したという。さらに、パーライト断熱材や木製のバルコニー、500平方メートルの太陽光パネル、ガスとヒートポンプを組み合わせたハイブリッドシステムにより、フランスの環境規制「RE 2020」に沿って、約6割のエネルギー自給率を達成している。
今回のViliaSprint²は、あくまで平時における住宅供給を、より速く、より効率的に行うことを目的としたプロジェクトであり、災害対応を想定して設計されたものではない。しかし、この「速さ」という特性そのものは、災害からの復興や緊急時の住まいの確保という、まったく別の文脈でも実際に注目を集めている。
例えば、ViliaSprint²と同じCOBOD社のBOD2プリンターを使い、中米グアテマラでは2023年、地震への耐性を想定して設計された住宅がわずか26時間で印刷された。マグニチュード9.0の地震にも耐えうる強度計算のもとに建てられたこの住宅は、地震多発地域における3Dプリント建築の可能性を示す事例として興味深い。
また、ロシアによる侵攻で自宅と夫を失ったウクライナの女性とその家族のために、2024年、キーウ近郊のイルピンで130平方メートルの住宅が3Dプリンターによって建てられた。印刷にかかった時間はわずか58時間。かつて自宅があった敷地に、新しい住まいが生まれた。戦争によって住まいを追われた人々の暮らしを取り戻す一助として、3Dプリント技術が実際に活用されている。
建築におけるコストと環境、二つの課題に向き合うなかで磨かれてきた技術が、自然災害や紛争など有事で住まいを失った人々の暮らしを、少しでも早く取り戻す力にもなり得る。ViliaSprint²が示した「速さ」は、住まいのあり方を広げるきっかけになりそうだ。
※参考
Record-breaking apartment building gets 3D-printed in just 34 days|New Atlas
Earthquake-resistant house 3D printed in just 26 hours|New Atlas
A House 3D Printed in 58 Hours Is Donated to Soldier in Ukraine|3Dnatives
This company has 3D-printed a house that can withstand a 9.0 magnitude earthquake|euro news.
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