Photo by Oleksandr Sushko
モロッコでは、海水を飲料水だけでなく農業用水としても活用する海水淡水化プロジェクトが進められている。7年続いた干ばつや気候変動を背景に、水資源の確保に向けた取り組みとして注目を集めている。

natsumi_kawaide
ライター
フランスのパリに滞在中、ライターとして欧州の旅行見本市や日本文化イベントを取材。帰国後は旅行情報誌の編集に携わり、現在はフリーランスのライターとして活動している。
世界では気候変動の影響によって水不足が深刻化し、海水を淡水化して新たな水資源として活用する動きが広がっている。2024年時点で、世界では2万2,000カ所を超える海水淡水化施設が稼働しており、その多くは中東や北アフリカなど、水資源の乏しい地域に集中している。
こうしたなか、海水淡水化を国家戦略として推進しているのがモロッコだ。同国では2026年1月に冬の降雨を受けて、7年続いた干ばつの終息が宣言された。
しかし、モロッコ政府は海水淡水化を柱とする長期的な水資源戦略を維持している。モロッコのニザール・バラカ設備・水資源相は「降雨やダムへの流入だけに頼ることは、もはや十分ではない」と説明。干ばつは一時的な現象ではなく「気候サイクルの構造的な変化」が起きているとの認識を示した。
モロッコが描く構想は、沿岸部の都市では海水を淡水化した水を飲料水や農業用水として利用し、ダムの水や降雨は内陸部の農地やオアシスへ供給するというものだ。こうした水源の使い分けを通じて、水資源の確保を図る方針だ。
モロッコでは現在、17カ所の海水淡水化施設が稼働しており、さらに11カ所で新たな施設の建設・計画が進められている。2030年までには、飲料水の60%を海水淡水化によって賄うことを目標としている。
その象徴となるのが、カサブランカの南約40kmで建設が進む海水淡水化施設だ。完成すればアフリカ最大となる見込みで、再生可能エネルギーのみで稼働する施設としては世界最大規模になるという。年間約790億ガロンの飲料水を750万人へ供給するとともに、約2万エーカーの農地への灌漑用水も担う計画だ。
また、南部アガディール近郊にあるチトゥカ・アイト・バハ海水淡水化施設では、農業用水として海水淡水化した水が供給されている。野菜や果物の輸出産地であるスース・マッサ地域では約1,500戸の農家が利用しており、トマトや果物などの栽培を支えている。
一方で、海水淡水化には多くのエネルギーを必要とするほか、高濃度の塩水が海洋環境へ与える影響などの課題もある。モロッコでは新たな施設を風力・太陽光発電と組み合わせることで、運営コストの抑制と二酸化炭素排出量の削減を目指している。
海水淡水化は依然としてコストが高く、小麦などの主食作物を含む大規模な農業への活用には課題も残る。それでも、雨水だけに頼らない水資源の確保に向けた選択肢の一つとして、海水淡水化への期待が高まっている。
モロッコの取り組みは、アルジェリアやエジプト、セネガルなど海水淡水化の導入を進めるアフリカ各国にとっても、一つのモデルケースとなりそうだ。
※参考
Morocco’s answer to drought is in the ocean. Could more of Africa follow its lead?|CNN
Morocco declares end of seven-year drought after winter rains|Reuters
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