求職者に給与を開示 EU各国で「賃金透明化」法整備

ガラス窓の近くにある木製のテーブル

Photo by Matt Hoffman on Unsplash

EUでは、給与に関する情報開示を促す「賃金透明性指令」の導入に向け、各国で法整備がすすんでいる。求人への給与明記も広がりつつあり、賃金の透明性を重視する動きが強まっている。

Ouchi_Seiko

ライター

フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。

2026.07.06

男女の賃金格差解消へ向けて

求職活動で応募や面接を重ねた結果、提示された給与が想像より大幅に低かった、という経験はないだろうか。EUでは現在、こうした状況を改善するため、「賃金透明性指令(Pay Transparency Directive)」の導入がすすめられている。

この指令は、賃金に関する透明性を高めるとともに、「同一労働同一賃金」の原則を強化することを目的としたものだ。背景には、EUで男女間の賃金格差が依然として残っていることがある。EU統計局によると、男女間賃金格差は11%だ。これは、女性の平均時給が男性より11%低いことを意味する。

「賃金透明性指令」の具体的な内容としては、企業はまず求人票や面接前の段階で、初任給または給与水準を求職者に示さなければならない。また、応募者に過去の給与履歴を尋ねることも認められない。

さらに、従業員が求めた場合には、企業は本人の給与水準や、同じ仕事または同等の価値を持つ仕事の平均給与について、男女別の情報を提供する必要があるという。

従業員100人以上の企業には、男女間の賃金格差に関する情報の公表も求められる。賃金に関する報告で、正当な理由で説明できない5%以上の男女間賃金格差が確認された場合には、賃金評価で見直し等を実施しなければならない。

賃金透明性指令ではこのようなルールに加え、賃金差別の被害者が司法的救済を受けるための仕組みも強化している。

賃金透明化で法整備された国はEUの半数以下

テーブルの前に座る人々

Photo by Dylan Gillis

同指令について、すでに関連法案を公表しているのは、デンマーク、フランス、アイルランド、イタリア、オランダなどの10カ国だ。また、ベルギー、マルタ、ポーランドでも指令の一部が導入されている。

ただ、その進捗状況はそれぞれに異なる。2023年に採択された賃金透明性指令は、EU加盟国では2026年6月7日までに国内法化することが求められていた。しかし、現実では多くの加盟国で、期限を守れていない。

国際法律事務所アドルショー・ゴダードの調査によれば、2026年5月時点では、EU加盟27か国のうちオーストリア、ブルガリア、クロアチア、ハンガリー、ルクセンブルク、ポルトガルの6か国が、賃金透明性指令の導入に向けた措置を講じていないという。

また、スウェーデンでは法案が公表されたものの、政府は2026年3月、「雇用主に過度の事務負担をもたらす」として検討を無期限に停止している。

賃金透明化の遅れがもたらす影響を懸念する声もある。欧州労働組合連合(ETUC)は、その導入が遅れることで、EUの女性は少なくとも年間48億ユーロの損失を被ると推計している。女性1人当たりでは、年間465~700ユーロ(約8~13万円)の減収に相当する。

こうした負の影響がある一方で、「透明性を選ぶ雇用主にはチャンスがある」と、Indeed Hiring LabのEU労働市場エコノミスト、リサ・ファイスト氏は指摘する。同氏は、「いますぐ行動を起こせば、求職者との信頼関係を強化し、応募の質を高め、将来を見据えた採用戦略につなげることができる」と希望の声をあげている。

※参考
New EU rules on pay transparency explained|European Commission
Pay transparency: Which EU countries are ready for the new rules?|euronews

※掲載している情報は、2026年7月6日時点のものです。

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