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毎日何気なく飲んでいる水の安全性を危惧する昨今、ブラジルとイギリスの研究チームが水道水に潜むマイクロプラスチックの98.5%を、モリンガでろ過することができると発表した。生分解性で毒性リスクが低い天然素材が未来の浄水技術になるかもしれない。

Naoko Tsutsumi
エディター/ライター
兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。
2024年に発表された調査によると、世界中で検査された水道水の83%からマイクロプラスチックが検出された。
マイクロプラスチックが人体に与える影響はまだ正確に解明されていないものの、脳、生殖器官、心臓血管系にまで入り込むとされる。そして、ホルモンバランスの乱れや生殖機能への影響も示唆されており、国や地域を問わず誰にとっても他人事ではない。
そのようななか、2026年4月、ブラジルとイギリスの研究チームがマイクロプラスチック除去にモリンガの種子が有効であることを発表した。
その論文によると、平均18.8マイクロメートル(人の髪の太さの約4分の1)のマイクロプラスチックを対象に、モリンガの種子の抽出物をろ過システムで使用した結果、水道水に広く含まれているPVC(ポリ塩化ビニル)由来のマイクロプラスチックを98.5%除去することができたという。
PVCといえば、広く水道水に存在し、とくに人体への影響が懸念されているマイクロプラスチックのひとつだ。
飢餓をも救うと言われる栄養価の高さから、“奇跡”と表現されるスーパーフード、モリンガ。古代ギリシャやローマ、エジプトでは、水の浄化にも使われてきたというこの植物は、現代の汚染問題にも応えられる可能性が示された。
その仕組みは、「凝集剤」としての働きにある。
モリンガの種子を10年以上にわたり研究し、今回の論文の著者でもあるサンパウロ州立大学科学技術研究所のアドリアーノ・ゴンサルベス・ドル・レイス教授は、モリンガの種子が水中に分散している微細な汚れや粒子を凝集させ、ろ過しやすくする作用に着目。現在凝集剤として広く使われている硫酸アルミニウム(ミョウバン)と同等の働きがあり、アルカリ性の高い水では硫酸アルミニウムを上回る効果があると明らかにした。
種子を利用する最大のメリットは、環境負荷が低いこと。再生可能で生分解性があるので大量の沈殿物を生じさせることがない。さらに、神経変性疾患との関連性を伴うような毒性リスクが極めて少ないというメリットがある。
一方で、現時点では課題もある。
モリンガの種1粒で浄化できる水は約10リットル。大規模な都市型浄水施設への導入には大量の種子が必要で、使えば使うほど水中に残留する有機物も増えて、それを除去しなければならなくなる。
それでも研究者たちは前向きだ。「マイクロプラスチックの人体への暴露は今後数十年にわたって増え続ける可能性が高い」と警鐘を鳴らし、自然由来の解決策の研究を急ぐ。水の安全を自分と家族を守る選択肢としてモリンガ浄水技術のこれからの展開に注目しつつ、持続可能な水処理への応用に期待したい。
※参考
This ‘miracle tree’ can filter more than 98% of microplastics from tap water|CNN
塩化ビニルモノマーについて|環境省
Finding local solutions to tackle malnutrition in Timor-Leste|WHO
The tree that purifies water: Cultivating multipurpose Moringaceae in the Sudan|FAO
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