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スコットランドのネス湖近くにある広大な土地で、世界的にも希少とされる「ブランケットボグ」と呼ばれる湿原を再生するプロジェクトが進行中だ。1,000ヘクタールを超える規模は、スコットランドでは最大級の取り組みだ。

Kojiro Nishida
編集者・ライター
イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。
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スコットランド北部、ネッシーの伝説で知られるネス湖周辺では、大規模な自然再生プロジェクト「アフリック・ハイランズ(Affric Highlands)」の一環として、泥炭地の再生が進められている。対象となるのは、1,024ヘクタールにおよぶ広大な「ブランケットボグ」と呼ばれる湿原だ。
ブランケットボグとは、冷涼で多湿な海洋性気候の地域にのみ存在する、世界的にも希少な泥炭湿原のこと。スコットランドは世界のブランケットボグの約13%を擁しているが、同地域の泥炭地全体では、排水、燃料用の採掘、過放牧、山火事などの影響により、約8割が劣化しているとされる。
本来の機能を保った泥炭湿原は、地球上でもっとも効率的な炭素吸収源のひとつだ。水の流れをゆるやかに調整し、洪水や山火事のリスクを抑えるほか、水をきれいにし、湿原ならではの動植物を育む役割も担っている。
一方、過放牧によって泥炭が露出するなど劣化した湿原では、蓄えられていた炭素が二酸化炭素として大気中に放出されることもある。そのため、気候変動対策の面からも、泥炭地の再生は急務となっている。
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このプロジェクトで進められているのは、侵食を防ぎ、水位を上げ、植物が失われた泥炭地に再び植生を戻すための作業。排水路をふさいだり、小さなダムを設けたりすることで、乾燥した湿原に水分を取り戻していく。
なかでも重要なのが、自らの重さの最大20倍もの水を蓄えられるミズゴケの移植だ。ミズゴケは、水をたっぷり含んだ酸性の環境をつくり、泥炭の形成を助ける役割を果たす。
また、英国トンボ協会の支援を受け、トンボの繁殖池の再生も進められている。希少な湿原性のトンボに加え、湿地にすむ鳥類、カワウソ、ミズハタネズミなど、多様な野生動物の生息環境の回復が期待されている。
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食品・飲料企業も、資金面でこのプロジェクトを支えている。共同出資に名を連ねるのは、ウイスキー製造で泥炭を利用する地元の蒸留所や国際的な飲料企業などだ。
さらに注目したいのは、現地のコリモニー牧場という牧場がこの取り組みに加わっていること。約150頭の繁殖牛と180頭の繁殖用の雌羊を飼育する同牧場は、畜産業を続けながら泥炭地再生に取り組んでいる。
泥炭地の劣化の原因には畜産や林業も関係あると考えられているが、コリモリー牧場では「私たちの取り組みは、泥炭地の再生と畜産の両立がうまくいっていることを示している」と語っている。
1メートルの泥炭が形成されるには、1,000年かかることもあるといわれている。地元の農場や企業と連携しながら進むこのプロジェクトは、泥炭地再生の新たなかたちとして期待される。
※参考
Rewilding project aims to restore peatland near Loch Ness|BBC
Rare habitat restored near Loch Ness in landmark Scottish project|Inside EcologyEcology
よりよい未来のために 泥炭地を乾燥化から守る|環境省
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