リサイクル率EU最低国が激変 ルーマニアで国民に定着したデポジット制度

ルーマニアのグレーの建物

Photo by Lucut Razvan on Unsplash

数年前までリサイクル率が1%と、EUで最低水準だったルーマニア。だが飲料容器のデポジット制度導入により、短期間で回収率が大きく改善。現在では国民の約9割が少なくとも一度利用しているといい、習慣として定着しつつある。制度は単なる仕組みにとどまらず、人々の行動そのものを変えている。

Ouchi_Seiko

ライター

フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。

2026.04.20

飲料容器のデポジット制度導入

飲料容器の回収率が、わずか2年で大きく改善したルーマニア。かつてEU内でリサイクル率がもっとも低かった国に、大きな変化が起きている。

背景にあるのは、ルーマニア政府、飲料メーカー、小売業者のパートナーシップのもと、2023年11月に導入された飲料容器のデポジット制度だ。

仕組みはいたってシンプルで、水、ビール、ジュースなどの飲料を購入する際に、消費者はボトル1本につき0.5レウ(約18円)のデポジットを支払う。使用後に容器を洗浄し、回収場所に持ち込めば、デポジットが返金されるというもの。対象はプラスチック、アルミニウム、ガラスと幅広い。

このシステムを運営する「RetuRO」によると、2023年11月のスタートから2025年9月末までに、約75億個の飲料容器が回収されたという。内訳は、ペットボトルが約40億本、缶が約20億個、ガラス容器が約15億個。リサイクル可能な素材は50万トン以上にのぼった。

また、同システムは小売店返却モデルで運用されており、飲料を販売する店舗は、自動回収機の設置か、人による回収を実施するかいずれかが求められる。店舗側には、処理コストを補うためのインセンティブが設けられている一方で、運営側は、すべての利益を再びシステムに投資する仕組みになっている。

数字以上に変わった、人々のリサイクル観

水で満たされた透明のボトル

Photo by Steve A Johnson

ルーマニアのこうした変化は、出発点を考えるとより際立つ。というのも、同国は10年以上にわたり、EUのリサイクル率で最低水準だったためだ。ルーマニアで2021年にリサイクルされた資源はわずか1%。国内の廃棄物の4分の3、実に74%がそのまま埋立地へと送られていた。

環境への影響も深刻で、欧州環境庁からは「リサイクル目標を達成できないリスクにある」と指摘されていたほどだった。

しかし、デポジット制度の導入後、ルーマニア国内では数か月のうちに変化が見られるようになった。

これまで一度もリサイクルをしたことがなかった高齢者たちが、新たな習慣と小さな収入源を得るようになり、親たちは子どもにそれを日常の行動として伝える。若い世代のなかには、リサイクルを自分たちのアイデンティティの一部だと語る人も現れているという。

現在では、この飲料回収制度での回収率がピーク時で94%に達し、2026年1月には108%を記録。販売された量を上回る容器が回収された理由は、人々が家に保管していた古いボトルまで持ち出したためだ。

雇用とGDP増加 仕組みが生んだ経済効果と社会の変化

もう一つの特徴は、飲料容器のデポジット制度が、ルーマニアの経済面に好影響をもたらしていることだ。スタート以来、国内では2000以上の雇用が生まれているほか、初年度だけでGDPが約3億4600万ドル増加した。

さらに、高品質の再生PETが国内だけで十分に回収されるようになり、原材料を輸入する必要もなくなっている。

今では、ポーランド、トルコ、ブルガリアなど各国の政府関係者が、同制度を学ぶためにルーマニアを訪れているという。

このデポジット制度は、ルーマニア人の10人中9人が「少なくとも一度は利用したことがある」といい、10人中6人が「定期的に利用している」という。回収率が急上昇したのはもちろんだが、それ以上に、人々の行動が変わったことに大きな意味があるだろう。

シンプルな仕組みではあるものの、多くの国民が自発的に行動したこと、そしてそれが習慣化している事実にも注目したい。

※参考
How Romania took its national recycling rate from 12 percent to 94 percent in just two years|Unworthy
‘We like it a lot’: how Romania created its hugely popular deposit return schemehe|The Guardian

※掲載している情報は、2026年4月20日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends