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毎日の食卓に欠かせない卵。地球温暖化の主な原因とされる二酸化炭素の削減が求められるなか、捨てられる卵の殻をトイレなどの製造に活用する取り組みが始動。タイの大手食品企業と衛生陶器メーカーの手によって、卵の殻に新たな命が吹き込まれようとしている。

Naoko Tsutsumi
エディター/ライター
兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。
タイの大手食品企業「Charoen Pokphand Foods(CPF)」と、便器や洗面器、浴槽などの衛生陶器を製造する「Siam Sanitary Ware(COTTO)」は、パートナーシップを締結。CPFの自社孵化場(卵を孵化させる施設)で出る卵の殻を、衛生陶器の製造に活用するプロジェクトに向けてコミットメントすることを発表した。
この協業プロジェクトは、卵の殻の主成分である炭酸カルシウムが、便器や洗面器などの製造工程で使われている石灰石の主成分でもあることにCOTTOが着目したことに始まる。
衛生陶器の製造では、表面に「釉薬(ゆうやく)」を塗布して焼成するプロセスがある。これは、菌の染み込みや汚れのこびりつきを防ぐため、さらには耐久性の向上のために、表面をコーティングする工程だ。
「釉薬」の原料になっているのが石灰石で、これを廃棄されていた卵の殻を活用することにより、廃棄物削減と天然資源の使用抑制を同時に実現。また、製造工程での温室効果ガス排出も抑えるという効果も期待されている。
卵の殻を活用する取り組みは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の原則に基づいている。
CPFの統合ブロイラー・ダック事業担当エグゼクティブバイスプレジデントのパヌワット・ニアンプレム氏は、「COTTOとの協業は、真の循環性を実現する好例」と話す。
卵の殻という副産物を単なる廃棄物ではなく価値のある原料として再利用するこの取り組みは、資源の利用効率が低く、循環の余地が大きいといわれる食品産業において、事業成長と環境保護、そして持続可能性を実現するという点で大きなインパクトをもたらすといえるかもしれない。
卵の殻はこれまで当たり前のように捨てられてきたが、多くの可能性を秘めた素材という認識へと変える必要がありそうだ。
世界卵機構(WEO)も卵産業における環境への配慮を強調しており、生産者に対して二酸化炭素排出削減や廃棄物の効率的な管理を奨励している。今後、技術の発展とともに卵の殻を活用した新しい製品はますます増えていくだろう。私たちの暮らしで生まれる廃棄物が、社会全体の循環を支える資源へと変わる——そんな発想の転換の重要度は高まっている。
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