Photo by Fondazione Milano Cortina 2026
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックが開幕した。しかし、その舞台に必要不可欠な雪や氷は、気候変動によって失われつつある。オリンピックの未来を考える際、私たちは気候危機と向き合う岐路に立たされている。

Ouchi_Seiko
ライター
フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。
Photo by Fondazione Milano Cortina 2026
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックの会場
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックが、2月6日よりスタートした。イタリアでの冬季五輪開催は、1956年のコルティナ、2006年のトリノに続き、今回で3度目。アルプスの雪山を舞台にした華やかな競技に、世界の注目が集まっている。
一方で本大会は、「未来の冬季五輪」を考えるうえで象徴的な存在でもある。気候変動により、冬のオリンピックそのものが存続の危機に直面しているからだ。国際オリンピック委員会(IOC)が資金提供した最新の研究によると、2080年代までに冬季オリンピックの開催候補地の半数以上で、安定した気候条件が見込めなくなると予測されている。
研究では、今後どの程度温室効果ガスが排出され続けるかを複数のシナリオに分け、将来の気温や積雪量への影響を分析。その結果、もっとも現実的とされるケースでも、安定して大会を開催できるのは、93都市のうち46都市にとどまったという。
しかし、これは遠い未来の話ではない。2022年の北京冬季五輪では、史上初めて100%人工雪を使用した大会として、すでに前例が生まれている。さらに、同シーズンのスキー・ワールドカップでは、雪不足により多くのレースが中止や延期に追い込まれた。
Photo by Fondazione Milano Cortina 2026
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックの会場
こうした状況に加え、気候変動は、選手の安全や競技環境にも影響を及ぼしている。たとえば、雪不足による練習への影響、負傷者の増加、開催地の気候がますます不安定になっているという現実だ。
これを受け、500人以上のウィンタースポーツのアスリートがFIS(国際スキー連盟)に対し、気候変動対策の強化を求める署名を行った。さらに、冬季五輪出場選手約400人を対象にした調査では、95%以上が「気候変動が自身の競技や次世代のトレーニング機会を減少させ、冬季スポーツ文化全体に悪影響を及ぼす」と回答している。
Photo by Greenpeace
油で汚れた五輪マーク。「スポンサー:エニ」と表示されている
また、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック開催について、環境保護活動を行う国際的NGO、グリーンピースでは、イタリアの大手化石燃料企業のEni(エニ)がスポンサーについていることを指摘している。
グリーンピースによる分析では、同社の2024年の炭素排出量によって、将来的に氷河約62億トンが融解する可能性があるという。これは、オリンピックプールに換算すると約250万杯分にもなる。
そのためグリーンピースでは、冬季スポーツの将来を脅かす温室効果ガスを排出する一方で、大会スポンサーシップを通じて自社イメージの向上を図る「スポーツウォッシング」であると批判。開会式前日には、グリーンピース・イタリアの活動家らがミラノのドゥオモ広場に集まり、油が滴り落ちた五輪マークのオブジェとともに抗議活動を行った。
グリーンピース・イタリアの気候キャンペーン担当者、フェデリコ・スパディーニ氏は、IOCに対し「石油・ガス企業のスポンサー排除と、すべてのオリンピック大会での化石燃料スポンサー廃止を求めている」と述べている。
冬季五輪だけでなく、夏季オリンピックでも猛暑が続くなど、気候変動問題は近年ますます深刻化している。オリンピックの未来を守るためにも、IOCや開催地、スポンサーといった関係者も、そして選手や私たち自身も、環境への責任をより真剣に考える必要があるのではないだろうか。
※参考
The climate crisis and the future of the Winter Olympics|GreenPeace
Greenpeace Italy unveils Olympic rings leaking oil in Milan to call out fossil fuel sponsorship of Winter Games|GreenPeace
ELEMINIST Recommends