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2026年も続く物価上昇。消費者物価指数(CPI)の推移をみると、日本では過去5年で約12%の物価が上昇している。さらに日本と世界の消費者物価指数を比較し、なぜ値上げが続くのか、円安や人件費の影響などを紐解く。日本のインフレは世界と比べてどうなのか、解説する。

ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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物価がどのくらい上がっているのか話すときに、よく使われるのが「消費者物価指数」。これは、モノの値段を数値化した経済指標のひとつ。英語の「Consumer Price Index」の頭文字をとって「CPI」とも呼ばれる。
消費者物価指数(CPI)は、総務省が毎月発表している。私たちがふだん購入する約600種類のモノやサービスの価格を定点観測し、基準となる年を100として、どれくらい上がったか(または下がったか)を算出している。
対象となる約600種類の商品やサービスには、食料品、衣料品、電気・ガス代、家賃、映画観覧料、ネット通信料など、さまざまなものが含まれる。全国の167市町村で、これらの価格について調査が行われる。
消費者物価指数は「経済の体温計」とも呼ばれる。これは、物価が適度に上がれば、企業の利益が増え、私たちの賃金も上がる「いい循環」が生まれるが、急激な上昇は生活を圧迫する。そのため、日本銀行が金融政策を判断する際の、もっとも重要なデータのひとつなのだ。
消費者物価指数には、3つの種類がある。
すべての品目を合算した数値。文字通り、世の中全体の物価の動きを表す。
野菜や魚などの生鮮食品は、天候によって価格が上下するため、それらを除いた数値。日本のニュースでもっとも一般的に「物価」として扱われる指標。
天候の影響のほかに、海外情勢に左右されやすい電気・ガス・ガソリン代も除いた数値。日本国内の「地力」としての物価変動が見えてくる。
総務省発表の最新の消費者物価指数の推移を見てみよう。下記の表は、2020年を基準(2020年を100.0とした場合)としている(※1)。
| 総合 | 生鮮食品 を除く総合 | 生鮮食品+エネルギー を除く総合 | |
|---|---|---|---|
| 2013年 | 94.9 (+0.4%) | 95.5 (+0.4%) | 94.8 (-0.2%) |
| 2014年 | 97.5 (+2.7%) | 98.0 (+2.6%) | 96.9 (+2.2%) |
| 2015年 | 98.2 (+0.8%) | 98.5 (+0.5%) | 98.2 (+1.4%) |
| 2016年 | 98.1 (-0.1%) | 98.2 (-0.3%) | 98.8 (+0.6%) |
| 2017年 | 98.6 (+0.5%) | 98.7 (+0.5%) | 98.9 (+0.1%) |
| 2018年 | 99.5 (+1.0%) | 99.5 (+0.9%) | 99.2 (+0.4%) |
| 2019年 | 100.0 (+0.5%) | 100.2 (+0.6%) | 99.8 (+0.6%) |
| 2020年 | 100.0 (+0.0%) | 100.0 (-0.2%) | 100.0 (+0.2%) |
| 2021年 | 99.8 (-0.2%) | 99.8 (-0.2%) | 99.5 (-0.5%) |
| 2022年 | 102.3 (+2.5%) | 102.1 (+2.3%) | 100.5 (+1.1%) |
| 2023年 | 105.6 (+3.2%) | 105.2 (+3.1%) | 104.5 (4.0%) |
| 2024年 | 108.5 (+2.7%) | 107.9 (+2.5%) | 107.0 (2.4%) |
| 2025年 | 111.9 (+3.2%) | 111.2 (+3.1%) | 110.3 (3.0%) |
上記の表をみると、2020年より7年前の物価は、2020年から5%低い程度。それに対して、2025年は2020年よりも約12%も上昇していることがわかる。過去5年間の主なできごとと消費者物価指数の動きを下記にまとめた。
| CPI | 主なできごと | |
|---|---|---|
| 2020年 | 100.0 | 新型コロナウイルス感染症蔓延 |
| 2021年 | 99.8 | コロナ自粛期間、原油価格の下落、携帯料金の値下げ |
| 2022年 | 102.3 | ロシアのウクライナ侵攻開始でエネルギー・食料高騰 |
| 2023年 | 105.6 | インフラ・円安の進行 |
| 2024年 | 108.5 | 歴史的な円安、輸入原材料・エネルギー価格高騰 |
| 2025年 | 111.9 | 円安継続、人手不足にともなう人件費・物流費上昇 |
「インフラが進んでいる」「給料が上がらないのに物価が上がっている」などという声が多く言われるようになったのは、ここ数年のことではないだろうか。新型コロナウイルス感染症の蔓延が始まった2020年を基準にすると、ものの値段は上記のように変化してきた。
とくに物価上昇の引き金のひとつだったのが、2022年に始まったロシアによるウクライナの侵攻だ。これによって世界全体でエネルギーや食料の値段が上がった。おまけに2023年頃から円安が進み、この状態が続いている。
結果として、2020年から2025年の5年間で約12%の物価上昇となったのだ。
では、世界の物価はどうなっているだろう?総務省発表のデータより、主要国の消費者物価指数の変化と日本の消費者物価指数の変化をまとめた(※2)。2020年の日本を0.0にしたときの、主要な国々の消費者物価指数の前年比(%)だ。
| 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 0.5 | 0.0 | -0.2 | 2.5 | 3.2 | 2.7 | 3.2 |
| 米国 | 1.8 | 1.2 | 4.7 | 8.0 | 4.1 | 2.9 | 2.6 |
| カナダ | 1.9 | 0.7 | 3.4 | 6.8 | 3.9 | 2.4 | 2.1 |
| 英国 | 1.8 | 0.9 | 2.6 | 9.1 | 7.3 | 2.5 | - |
| ドイツ | 1.4 | 0.5 | 3.1 | 6.9 | 5.9 | 2.2 | 2.2 |
| フランス | 1.1 | 0.5 | 1.6 | 5.2 | 4.9 | 2.0 | 0.9 |
| イタリア | 0.6 | -0.2 | 1.9 | 8.1 | 5.7 | 1.0 | 1.5 |
| 中国 | 2.9 | 2.5 | 0.9 | 2.0 | 0.2 | 0.2 | 0.0 |
| 韓国 | 0.4 | 0.5 | 2.5 | 5.1 | 3.6 | 2.3 | 2.1 |
表を見るとわかるとおり、アメリカやイギリスでは2022年から2023年にかけて前年比8〜9%台という記録的なインフレを経験した。これに対し、日本はピーク時でも前年比3〜4%台にとどまっている。
この理由は、欧米がロシア・ウクライナ情勢によるエネルギー価格高騰の直撃を受けたが、日本は政府による電気・ガス代の補助金政策が下支えとなり、急激な消費者物価指数の跳ね上がりを抑制したと言われる。
また、欧米では人手不足にともなった賃金上昇がサービスの価格を押し上げたが、日本は賃金の伸びが物価に追いつくまでに時間がかかった。そのため、消費者物価指数の上昇がワンテンポ遅れてやってくることとなった。
「一時的なもの」と思われていた物価上昇だが、2026年現在も高止まりが続いている。これには、複数の要因が複雑に絡み合っている。私たちが直面している物価高の正体を、3つの側面から解き明かそう。
近年の物価上昇の大きな理由は、原材料やエネルギー価格の高騰だ。製品をつくるための「元手」が高くなることで、企業が価格を上げざるを得なくなる。これを「コストプッシュ・インフレ」と呼ぶ。
例えば、原油や天然ガスなどのエネルギー価格の高騰で、工場の稼働費や輸送トラックの燃料代が跳ね上がった。また、小麦、油脂、飼料といった輸入原材料の価格も上昇しており、食品メーカーや外食産業の利益を圧迫している。
日本は食料自給率が低く、エネルギー資源のほとんどを海外に依存している。そのため、円安は物価高にダイレクトに拍車をかける。アフターコロナに進んだ円安によって、さまざまな商品のコスト増につながっている。
これまでの物価高の主な理由は「モノ(原材料)」の価格上昇だったが、最近顕著になっているのが人件費の上乗せを転嫁したものだ。深刻な人手不足を背景に、従業員の確保のために、給料を引き上げざるを得ない企業が多い。その分だけ、商品やサービスの価格が上がっているのだ。
私たちが直面している物価上昇は、単なる一時的な価格変動ではなく、世界情勢や円安、そして国内の構造変化が絡み合った大きな転換点ともいえる。
消費者物価指数(CPI)の推移からわかるように、安さが当たり前だった以前の時代から、「モノの価値を正しく見極める」時代へと移り変わっている。そのときに大切にしたいのが、環境負荷や社会への影響にも配慮した「エシカル(倫理的)な消費」の視点だ。
安価な使い捨ての消費はもう終わりにして、品質がよく、環境負荷の低いものを長く使うスタイルに変えていこう。また、資源を無駄にせずに大切にすることは、家計の節約になるうえ、地球環境を守るアクションだ。
「高い・安い」だけに振り回されるのではなく、モノの本質や真の価値を見極める力がますます必要になっていくのではないだろうか。
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