アグリテクチャーとは、農業と建築を組み合わせてつくられた造語。近代的な建物のなかに、農業を取り入れることを意味し、そのデザイン性の高さや、都市型農業の重要性から注目されている。本記事ではアグリテクチャーの言葉の解説と、世界の事例を紹介する。
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アグリテクチャー(Agritechture)とは、農業(Agriculture)と建築(Architecture)を組み合わせてつくられた造語。アメリカ・コロンビア大学・持続可能性研究科の院生だったヘンリー・ゴードン・スミス氏が2011年に、彼のブログでつくりだした言葉とされる。
アグリテクチャーは、近代的な建築物のなかに、農業を取り入れることを意味しており、都市型農業として欧米を中心に注目されている(※1)。この「農業」にはいわゆる食べ物の栽培だけでなく、植物の生育としての意味も含まれているため、広義では「緑化対策のとられた建築物」を意味することもある。
アグリテクチャーの最大の強みは、建物の高さや傾斜を利用する垂直農法だ。これにより、広い土地のない都市部でも農業を可能にするだけでなく、農業に適した土地のない砂漠でも食物の栽培が可能になるのだ。
前述のとおり、農業を取り入れた建築物をアグリテクチャーというのに対し、農業を基盤とする住宅コミュニティを「アグリフッド」と呼ぶ。アグリフッドについては、以下の記事が詳しい。
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アグリテクチャーと呼ばれる建築事例は、欧米を中心に、世界各国の都市部で取り入れられている。
なかでも、トロントの「The Plant(ザ・プラント)」は画期的なアグリテクチャープロジェクトとされる。
The Plantとは、1階がレストランやブティック、2階がオフィス、3階から10階がコンドミニアムとなった複合型施設だ。
住宅の各部屋には、広々としたベランダがあり気軽に家庭菜園が始められるだけでなく、室内で植物を育てられる設備が備え付けられている。またコミュニティスペースには、野菜の栽培をするエリアやバーベキューができるダイニングスペース、共同で使えるキッチンもあり、採れたての野菜をその場で楽しめるようになっているのだ(※2)。
The Plantは大都市の中心部にある集合住宅でありながら、農業を間近に体験できることから、都市型アグリフッドとも言えるだろう。
グリーン・シティ開発が進められているカナダでは、The Plant以外にも複数の都市でさまざまな形の都市型農業が行われている。
また、フランス・パリでは都市型農業デザイン開発を行うAgripolice(アグロポリス)が手がけた屋上農園が、ホテルや大学につくられている。多くの垂直農法が管理のしやすい屋内で行われているのに対し、Agripolice社は屋外の栽培環境を選び、より環境負荷の低い農業をすることを選んでいるのだ(※3)。
アグリテクチャーの開発が日本でも進めば、私たちも、採れたての野菜を都会にいながら楽しめる日がやってくるのかもしれない。
※1:SUSTAINABLE AMERICA
https://sustainableamerica.org/blog/agri-tecture/
※2:The Plant Condos
https://theplantqueenwest.com/
※3:Agripolice
http://agripolis.eu/
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