アグリフッドとは、共同農園をもち、農業を基盤とする住宅コミュニティを意味する造語。とくにアメリカの健康志向な若い家族を中心に注目を集めている。本記事では、アグリフッドについて、海外と日本の事例を交えて紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
Photo by Jan Kopřiva on Unsplash
アグリフッド(Agrihood)とは、「アグリカルチュラル・ネイバーフッド(Agricultural Neighborhood)」の略称。アメリカでいま注目されている、農業を基盤とする住宅コミュニティのことだ。
アグリフッドはたいていの場合、大都市からそう遠くない場所に、農園関係の設備と、住居が一体となって整備される。
住宅地のなかには広々とした共同農園があり、住民たちは田舎暮らしをしているように近隣の人々と野菜や果物を育て、共同キッチンで一緒に料理をするなど交流を楽しみながら生活することができるのだ。
つまり、都会的な便利な生活を送りながら、田舎暮らしのように畑いじりをして新鮮な野菜を味わったり、自然の中でのびのびとすごしたりすることができるため、健康的な暮らしを望む若い世代にとって、いいとこ取りの住宅地となっているのである。
Photo by Zoe Schaeffer on Unsplash
アメリカでは現在、100以上ものアグリフッドが整備されているとされる。
日本では2016年に農林水産省が「都市農業」の振興をはかる基本計画を策定している(※1)。しかし残念ながら小規模な取り組みのみで、アメリカ同様の大規模なアグリフッド開発はまだ行われていない。
ここではアメリカと日本の事例から、3例をピックアップして紹介する。
アメリカ・カリフォルニア州のオレンジカウンティーにあるのが、開発業者であるランチョ・ミッション・ビエホ(Rancho Mission Viejo)が開発・運営するアグリフッド「エセンシア(Escencia)」と「センデロ(Sendero)」だ。
敷地内には共同農園のほか、アボカドやクルミなどの果樹園もあるのが特徴。住民たちは、植え付けや手入れ、収穫などの農業ボランティアプログラムのほか、定期的に行われる料理のワークショップやさまざまなイベントにも自由に参加できる(※2)。
カリフォルニア州に初めてつくられたアグリフッドが、「ザ・カナリー(The Cannery)」だ。
通常、アグリフッドは農地を活用して開発されることが多いが、こちらはトマトの缶詰工場を土壌改良し、再び住宅地付きの農地へと戻した点から、農地再生のモデルケースとして注目されている。
またこのアグリフッドでは、農地を就農支援に役立てるプロジェクトが進行しているのも特徴だ。
宅地開発を行った業者が、ザ・カナリーの位置するデイビス市に農地を譲渡。その農地を、市から就農者の育成を行うNPOに貸し出す仕組みとなっており、住民はその農地からとれる新鮮な農産物をファーマーズマーケットで購入して楽しむことができるのだ。
日本にはアグリフッドと呼ばれるような農園付きの住宅地はまだないが、畑付きの共同住宅は少数ながら存在する。
例えば、2011年に竣工した東京・日野市の「AURA 243 多摩平の森」は、貸農園付きの賃貸住宅だ。1960年に建てられた公団住宅をリノベーションし、デンマークの郊外型貸農園「コロニヘーヴ」をモデルに開発された(※3)。
アグリフッドのように共同農園ではなく、住民は賃料を払って区画された畑を借りて農業を楽しむスタイルだが、屋外に共用キッチンがあり、定期的に交流イベントも開かれている。
このほか、レンタル農園も都市部を中心に人気だ。住宅は併設されていないものの、農業経験者が教えてくれたり、水やりなどの世話を頼めるサービスを展開するレンタル農園もある。
本記事を読んで、アグリフッドに興味をもった人は、まずはレンタル農園から初めて、農業への理解を深めてみてはいかがだろうか。
※1
都市農業振興基本計画|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/tosi_nougyo/pdf/kihon_keikaku.pdf
※2
Rancho Mission Viejo
http://corp.ranchomissionviejo.com/
※3
AURA 243 多摩平の森
http://www.tanabe-bussan.co.jp/aura243/about.html
ELEMINIST Recommends