リジェネラティブな社会をつくる−RegenerAction Japan 2025記者発表会レポート

2025年10月28日(火)、東京建物株式会社は、国際カンファレンス「RegenerAction Japan 2025」の開催に先立ち、記者発表会を開催した。リジェネレーション(再生)を軸に、都市や社会の未来について、分野の垣根を越え多角的に考える場となるカンファレンスだ。

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2025.12.05
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都市や社会の未来について考える国際カンファレンス

東京建物株式会社による国際カンファレンス「RegenerAction Japan 2025」の記者発表会では、東京建物が挑戦する「Regenerative City Tokyo」の概要や背景、進捗に加え、Climate Week NYC 2025で発表した「Regenerative Cities Manifesto」も取り上げた。同社と連携してプロジェクトを進める有識者やイノベーターも登壇した。

RegenerAction Japan 2025

2023年に始まり、3回目を迎えた「RegenerAction Japan」は、世界的な潮流になりつつあるリジェネレーション(再生)をテーマに、リジェネラティブな社会の実現に向け、国内外の先進事例を学び、体験し、ともに考える場。政治、環境、人間性、社会、文化、経済の6分野を横断し、あらゆる側面から都市や社会の未来について議論する国際カンファレンスだ。食や文化、デザイン、スポーツ、企業経営、森林、地域など、多岐にわたるテーマで、国内外の有識者やイノベーターが集結し、より豊かでリジェネラティブな社会を実現するための知見と実践を発信する。また、世界有数の大都市である東京にリジェネレーションの思想を取り込み、都市と地域の新たなエコシステムを構築し、次世代の都市モデルを創出することも目指している。

Regenerative City Tokyoに挑戦する背景

RegenerAction Japan 2025

東京建物株式会社代表取締役 社長執行役員 小澤克人氏。

東京建物は、2030年までに目指す長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」を掲げ、多様な事業展開を行っている。そんななか、2027年末までに地球・社会・人々のウェルビーイングを向上させる共創イノベーションプロジェクトを、八重洲・日本橋・京橋エリアを中心に10以上創出することを目標とする「Regenerative City Tokyo」構想を昨年発表。リジェネレーションという思想の中で東京のまちづくりに挑み、いずれはロンドンやパリ、ニューヨークなど、さまざまな国際都市のロールモデルになることを目指すものだと、同社代表取締役 社長執行役員の小澤克人氏は話した。

構想に至った背景について、小澤社長は、現代社会が直面する気候変動や社会の分断、地域格差などの課題を挙げた。さらに、「経済的な豊かさだけでなく、人とのつながりや自分らしい生き方など、豊かさの定義が多様化している現状も踏まえ、住んでいる人や働いている人など、実際に利用する人々が価値を見出せるようなものを提供し続けることが重要」だと説明した。

取り組むにあたり、東京建物は本社がある八重洲・日本橋・京橋エリアに注目。江戸時代から商人や職人たちの食を支えてきた歴史や文化、人と人とのつながりをヒントにまちづくりを考えたという。食は世界共通で日常生活の基盤であり、人々をつなぐ普遍的な営みであることから、国内外のプレイヤーと連携し、深掘りや研究を進めている。

また、小澤氏は、サステナビリティとリジェネレーションの関係についても説明。「この2つは対立するものではなく、サステナビリティの先にリジェネレーションがあり、現状を維持するだけでなく、よりよい社会やより豊かな社会をつくることを目指すのがリジェネレーション」であると述べた。

リジェネラティブな社会への変革を加速するための声明文「Regenerative Cities Manifesto」

Regenerative Cities Manifesto

Future Food InstituteのSara Roversi氏(手前左)。

東京建物株式会社 都市開発事業第一部 八重洲プロジェクト推進室長・沢俊和氏は、Climate Week NYC 2025で発表した、未来の都市の在り方を示す「Regenerative Cities Manifesto」について説明を行った。

マニフェストで掲げる10の柱のうち、「1.都市を生きたシステムとして捉える」と「2.バイオリージョン全体の管理者となる」を詳しく紹介。都市には人々の営みや文化があり、時間とともに変化するため、建物だけでなく生活や文化をセットで捉える必要があること。また、都市だけでなく周辺地域の相互依存を認識し、地域全体のレジリエンスを高めることの重要性について語った。

現在進行中のプロジェクト

RegenerAction Japan 2025

左から、東京建物 都市開発事業第一部八重洲一丁目東プロジェクト推進室長 沢俊和、 湯河原町長 内藤喜文氏、シーベジタブル 共同代表 友廣裕一氏。

発表会には、東京建物とともにプロジェクトを進める有識者やイノベーターが登壇し、進捗について説明した。

神奈川県足柄下郡湯河原町と合同会社シーベジタブル、東京建物が進める「都市と地域の連携」をテーマにした共創プロジェクトの紹介では、湯河原町・内藤喜文町長と、合同会社シーベジタブル 共同代表・友廣裕一氏が登壇。海や温泉の地熱など地域資源を活用し、海藻の栽培や商品開発を通じて、環境保全と地域経済の活性化を両立させる「湯河原モデル」をさらに発展させる取り組みが紹介された。三者は「RegenerAction Japan 2025」内で、包括連携協定を締結。今後それぞれの強みや特徴を生かした連携を強化していくと発表した。

また、2024年のRegenerAction Japan ワークショップから生まれたコミュニティビールプロジェクトでは、Butterfly Lab株式会社代表・松村大貴氏とFuture Food Institute・中村圭氏が登壇し、立ち上げから実装までを振り返った。松村氏は「ビールづくりを通じて、人と人が共通の体験を持ち、未来を考えることが重要な営みだと思う。体験を通じてRegenerative City Tokyoへの変容につなげたい」と語った。

そのほか、都市と自然の新たな循環の形を提案する生物多様性再生プロジェクト「木庭」を手がける株式会社リバネス執行役員CHO・長谷川和宏氏や、「調和と循環」をテーマに食を通じた社会課題解決に取り組む料理人・野田達也氏も登壇した。

発表会を通じて示された都市の未来像

記者発表会では、東京建物が「Regenerative City Tokyo」構想に至る背景と、その実現に向けて掲げたマニフェスト、さらに各地で進行するプロジェクト事例を通じて、都市の未来像とリジェネレーションという概念の具体的な姿が示された。本カンファレンスでの有識者やイノベーターによる議論や交流を通じて、構想がどのように発展し、実装されていくのか。今後の展開に注目が集まる。

画像提供/東京建物株式会社 取材・執筆/永原彩代

※掲載している情報は、2025年12月5日時点のものです。

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