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スポーツウエアに多く使われるポリエステルは便利である一方、石油由来で環境負荷が大きい素材である。そこで、米スポーツメーカー大手のナイキはいち早く、「服から服」をつくる循環型ファッションの形を目指す。

鴨井里枝|Rie Kamoi
ファッションライター/エディター/ジャーナリスト
イギリスの美術大学でグラフィックデザインを学び帰国後、ファッション週刊紙「WWDJAPAN」の編集部に約10年在籍。ファッションビジネスやトレンドの分析を主に、海外ではNY、ミラノ、ロン…
スポーツメーカー大手のナイキは、繊維廃棄物を新たな衣料用ポリエステルへと循環させるスタートアップ企業、スウェーデンのサイア(Syre)と、カナダを拠点とするループ・インダストリーズ(Loop Industries)と複数年にわたる供給契約を締結した。
目的は、使用済みの繊維を再び衣料用ポリエステルへと再生する「textile-to-textile(繊維から繊維への)リサイクルポリエステル」を安定的に確保すること。これによりナイキは今後、自社の主力ラインにも循環型ポリエステルを段階的に導入する計画で、今回の契約で必要な量を“長期的に買い続ける”ことを約束した。
これまでファッション業界で使われるリサイクルポリエステルの多くは、ペットボトルを原料にしたものだったが、衣類の廃棄そのものを解決することには至っていない。今回のナイキの契約のポイントは、「使い終わった服を、また新しい服の材料に戻す」という、より理想的とされる循環を目指していることだ。
スポーツウエアはポリエステル使用率が高く、毎シーズン大量に生産されるカテゴリーだからこそ、循環素材の導入がもたらす環境効果は大きい。
サイアは、ベトナムに建設予定の次世代リサイクル工場で、繊維廃棄物を分解・抽出し、まったく新しいポリエステルへと再生する技術を持つ。ナイキの“戦略的リードサプライヤー”と位置づけられている。
ループ・インダストリーズは、PETボトルや繊維を化学的に分解し、純度の高い素材を復元する「Infinite Loop™」技術を開発。ナイキは同技術による再生ポリエステル樹脂の主要顧客となる予定だ。
両社ともに従来よりも高品質で、スポーツウエアに求められる性能を満たす再生ポリエステルの生産を目指している。
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スポーツウエアに多く使われるポリエステルは便利である一方、石油由来で環境負荷が大きい素材である。使い終えた服を再び服へと再生する textile-to-textile の仕組みは、この課題を根本から変えるカギとなる。
今回の提携により、スポーツ業界およびファッション業界にとって、未来のものづくりの持続可能性をより鮮明にのとする大きな一歩となると期待されている。
※参考
Nike Doubles Down on Recycled Fibres With Multiyear Offtake Agreements|Business of Fashion
Nike Signs Deals for Recycled Materials with Cleantech Startups Syre, Loop|ESG Today
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