イタリア発の高機能ソールメーカー「Vibram(ヴィブラム)」が、2025年10月22日(水)〜25日(土)までの期間限定で、ポップアップイベント「ソール、張り替えてみよー 生まれ変わる靴ー」を開催した。ブランドが取り組むサステナブルキャンペーンや、靴のライフサイクルを延ばすリペアの可能性について紹介する。

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エレミニスト編集部
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履かなくなった靴の処分、みなさんはどうしているだろうか? エシカルな視点から考えれば、ごみとして捨てるのは避けたいところ。リサイクルしたいところだが、靴の場合は難しい。ゴム製のソールやアッパー部分のレザーなど、単一素材ではなく複数の素材からつくられているためだ。おすすめは靴の寿命を延ばすリペアや、中古品として次の人に使ってもらうリユースといった選択だろう。
今回、「ヴィブラム」が一石を投じるのは靴のリペアの可能性だ。好みの色やデザイン、はたまた機能性までプラスできるという。ソールを張り替えるだけで、見慣れた靴がまったく新しい靴に生まれ変わるのだ。2025年10月22日(水)〜25日(土)まで開催されたポップアップイベント「ソール、張り替えてみよー 生まれ変わる靴ー」では、リペアの魅力が余すところなく紹介されていた。
世界中のアスリートも認める高性能のラバーソール、イタリアのエスプリが詰まった多彩なデザインサンプル、そしてイタリアの熟練マスターによる職人技のライブ実演といった内容だ。会場となった東京・中目黒のギャラリースペース「calif art gallery」には、サステナブルだけで語るのはもったいない、ワクワクするような靴のリペア文化が繰り広げられていた。
イベントの内容を紹介する前に、「ヴィブラム」について説明しよう。1937年に北イタリアで創業した、ソールメーカーおよびブランドだ。登山中の事故をきっかけに「滑らない靴底をつくりたい」という想いから1937年に誕生。創業者ヴィターレ・ブラマーニが開発したラバーソールが、登山の安全性を大きく高めた。
優れたグリップ力を備える機能性の高さから、登山家やトレイルランナーなどアスリート御用達として名を馳せる。とくに「Carrarmato(カラルマート)」世界初の登山用ラバーソールで、アウトドア産業に革命をもたらしたといわれるほど。
また、シューズブランドにソールを提供するのみならず、2004年には自社製品「Vibram FIVEFINGERS(ヴィブラム ファイブフィンガーズ)」を発表。まるで素足感覚で歩ける5本指シューズは、フィットネスやアウトドアで注目を集める。近年はK-POPアイドルが着用したこともあり、ファッションアイテムとしてもSNSで話題になった。
そんな「ヴィブラム」が力を入れているのが、「#REPAIR IF YOU CARE」というサステナブルキャンペーンだ。“靴に第二の人生を”を合言葉に、ソールを張り替えることで靴の寿命を延ばす。廃棄を減らしサステナブルな社会の実現を目指すのが目的だ。そこには「ヴィブラム」だからこそ可能となる、熟練の技術があった。
取材に訪れたのは10月23日(木)。この日のメインはイタリアのマスター職人と日本のヴィブラムジャパンの職人によるリペアセッションだ。2人の職人が中古スニーカーのリソールを通して、お互いの技術とクリエイティビティを競い合う。ふだんは目にすることのない修理機械や工具、イタリア仕込みの熟練技に、訪れた人も興味津々だった。
工程としては、スニーカーのソールを剥がし、プライマー(接着剤)がつきやすいよう削って起毛させ、プライマーを塗ってソールを張り替える、という流れ。簡単なように聞こえるが、まずソールを剥がすのも一苦労。
ヒートガンで温めて接着剤を剥がしやすくしてから取り外す。簡単に剥がれるものもあれば、今回のような中古スニーカーの場合は機械を使って少しずつ削りとることも。
プライマーを塗布するのは手作業だ。塗る厚さによって仕上がりの強度に差が出る。ここでも培われた職人技がものをいう。
最後は好みの色やデザイン、目的に合わせたソールを貼る作業だ。職人のクリエイティビティが試される。靴の形に合わせてソールを整形し、貼り付ける。
このとき活躍するのが、サイドまで包み込むように圧をかけられるこの機械。日本にはなかなかないのだという。
他にはない唯一無二のデザインと、見慣れた靴がリフレッシュされた感動は大きい。これはリペアの枠を超えた、新たな靴のカスタム術といえそうだ。
会場内にはそんな「ヴィブラム」のカスタム術で生まれ変わった靴のデザインサンプルが多数展示されていた。まずはソールのバリエーションから紹介しよう。ファッション性の高い鮮やかなカラーに目を奪われる。PANTONE(パントーン)の色見本にあるものは基本的にすべて再現可能だという。
また、さまざまな機能を備えたソールの種類にも注目だ。機能性を高めるソールデザインはゴムの配合や「ラグ」と呼ばれるアウトソールの突起によって変わってくる。クッション性や硬さ、凍結や濡れた路面での防滑性、グリップ力の高さ、低温や高温に強いかどうか、といった具合だ。
サステナブルな取り組みでいうと、本来は廃棄されるはずのスクラップラバーをアップサイクルしたリサイクル率30%のソールや、天然ゴムと天然染料を使用した自然由来素材95%のソールなどもあるという。
さて、実際にどんなリソールが可能なのか。例えばストリート仕様として使っていたコンバースにゴルフ用のソールを張ってゴルフシューズに。ビジネスシューズにカモフラ柄のカジュアルなソールを合わせたデザインもすてきだ。
ソールのリペアと聞いて、よくある革靴用途の靴底の張り替えを想像したが、「ヴィブラム」が提供するのはそれらとは一線を画す別物。
特筆すべきは、やはりアウトドア生まれという高性能なソールと技術だろう。話を伺ったヴィヴラム ジャパンセールスディレクター 浅井吾一氏によると、日本の靴修理職人は、アウトドア用の修理は避ける人が多いのだという。理由は、命にかかわるからだ。そのため今回のイベントでは、日本の靴修理職人に向けたリソール技術の直接指導の場も設けたと話す。革靴だけではなくスニーカー需要にも応えるためだ。
靴の寿命を延ばすというサステナブルキャンペーンに賛同する形で参加した取材だったが、蓋を開けてみればファッショニスタの心をくすぐる新たな靴のカスタム術ともいえるものだった。「サステナブルだけじゃなく、ぜひ靴のカスタマイズを楽しんでほしい」そう浅井氏も呼びかけていた。
家に眠っている靴があるなら、ぜひ「ヴィヴラム」のシューズリペアを体験してみてはいかがだろう。見慣れた靴がリフレッシュされ、新たなお気に入りとして生まれ変わるに違いない。「靴を長く履き続ける、こんな楽しい方法があったのか!」そんな嬉しい驚きに満ちたイベントだった。
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撮影/岡田ナツコ 取材・執筆/村田理江、編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)
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