Photo by MycoToilet
カナダで、キノコの菌糸体で排泄物を堆肥に変える、水を使わないトイレがつくられた。水資源のない地域や、水道インフラの整っていない地域での利用が期待される。
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カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究チームが発表したのが、「マイコ・トイレット(MycoToilet)」。キノコの力によって排泄物を堆肥化する、世界で初めてのトイレで、世界で初めてとみられる。
トイレの背面には、排泄物を液体と固形に分離するシステムが備え付けられている。固形の排泄物は、キノコの菌糸体で覆われたエリアに分けられ、そこで菌類が臭いを吸収し、微生物が堆肥に分解する仕組みだ。
排泄物を堆肥化すると聞くと、ニオイが気になるせいか、ネガティブなイメージを持つ方も少なくないだろう。しかし、菌類は人や動物の排泄物を含むバイオマスの分解において非常に優れているという。
研究チームでは、微生物群がキノコとどのように相互作用して分解を最適化し、堆肥化にともなう特有の悪臭を回避するかを研究。実験室での実験では、キノコの菌糸体が悪臭の原因となる化合物の90%以上を除去できることが示唆された。
水のほか、電気も使用しない。化学薬品を使って排泄物を処理する、いわゆる「化学トイレ」とも異なり、薬品も使わない。研究チームは、安全で安心のトイレであると語る。
Photo by MycoToilet
この研究チームでは、試作トイレを大学構内のUBC植物園に設置。プロジェクトリーダーを務めるジョセフ・ダーメンは、下記のように語る。
「誰もが行う日常の習慣を、生態系の循環とのつながりを思い出させてくれる、心地よい体験に変えたいと考えた。そして、清潔で快適、かつ使いやすいシステムの開発を目指した」
メンテナンスは年4回で済み、車椅子でも利用できる。完全稼働すれば、年間約600リットルの土壌と2000リットルの液体肥料を生産することが期待できるという。水道設備のない地域などでも導入が可能だ。
9月下旬から始まったパイロットテストで、その成果を見ながら改良を重ねることで、今後の実用に期待が高まっていくだろう。
※参考
UBC launches world’s first mushroom-powered waterless toilet|UBC News
Botanical MycoToilet|Biogenic Architecture Lab
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