違法銃器からつくられた「ヒューマニウム」 世界平和に向けた取り組みとは

「ヒューマニウム」とは、違法銃器をリサイクルしてつくられる金属。銃や武器による暴力行為をなくすため、スウェーデンのNPO団体「IM」が指揮をとる「ヒューマニウムメタル」というプロジェクトから生まれた。暴力の象徴である銃に新しい可能性を付与する、平和への一歩となる取り組みだ。

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2020.08.28
SOCIETY
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ヒューマニウムとは

ヒューマニウムとは、違法銃器をリサイクルして人工的につくられる金属のこと。貧困などの社会問題に取り組むスウェーデンのNPO団体「IM Swedish Development Partner(以下、IM)」が立ち上げた、銃撲滅を目的とする「Humanium Metal Initiative」というプロジェクトから生まれた新しい金属だ。回収した違法銃器を溶解し、不純物を取り除いてから鉄の塊として鋳造される。

つまりヒューマニウムメタルとは素材そのものでもあり、「違法な銃器が平和な社会の妨げとなっていること」を人々に知ってもらうための活動でもある。

ヒューマニウムは革新的な生成方法と目的が評価され、2017年「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」で、テクノロジーやイノベーションに特化した「ライオンズイノベーション」を受賞。世界の広告やPR活動から優れたものを表彰する同アワードにおいて金属は異例の受賞となり、世界で注目されることとなった。

ヒューマニウムがつくられた背景

違法銃器をめぐり世界的に多発する問題

ヒューマニウムは、紛争問題などの引き金となる違法銃器の蔓延を防ぐことを目的に生成が開始された。違法銃器とは、違法な取り引きで密造された銃器や、所持や使用の登録がされていない銃器を指す。

世界に出回る違法銃器は数億丁にのぼり、銃犯罪による死者数は1日1,500人と言われている。紛争地域では幼い子ども兵士(Child Soldiers)が銃を持たされるなど、違法銃器はとくに発展途上国において深刻な問題となっている。ヒューマニウムは、問題の原因である武器を回収し、付加価値に変えて平和への糧とするプロジェクトなのだ。

内戦による銃から生み出された1tのヒューマニウムメタル

一番最初のヒューマニウムメタルは、中米に位置する小国のエルサルバドル共和国で行われた。同国は1980年から約12年続いた内戦において大量の銃器が流出。いまだ残る違法銃器と、それを使用した犯罪集団による治安の悪化が問題視されている。IMと地元当局との活動によって銃が回収され、約1tのヒューマニウムメタルを生み出した。

ヒューマニウムがもたらす世界平和

ヒューマニウムの目的は単に銃を金属に変換することではない。アーティストやデザイナー、ブランドなどに素材として提供し、商品化につなげるためのサプライチェーンがつくられている。すでに商品化まで進んでいるアイテムもあり、企業とのコラボレーション事例をいくつか紹介する。

TRIWA(トリワ)

スウェーデンの時計ブランド「TRIWA(トリワ)」は、2019年1月にヒューマニウムを採用した腕時計を発売した。銃犯罪の撲滅や世界平和への願いを込めて制作される。商品の売上の一部は、紛争によって引き裂かれた地域の復興や、武器によって負傷した被害者を救うために寄付される。

YEVO(イーボ)Labs

スウェーデン・ストックホルムを拠点とする音響機器メーカー「YEVO(イーボ) Labs」。2018年にヒューマニウムを使用した世界初のワイヤレスイヤホンを公開した。イヤホンと充電器の部品にヒューマニウムが使われている。

a good company(ア グッド カンパニー)

素材選定から廃棄まで配慮した製品を販売するスウェーデンのスタートアップ企業「a good company(ア グッド カンパニー)」ともコラボレーション。ヒューマニウムを用いたペン「A Good Humanium Metal Pen」が発売された。売り上げの25%はエルサルバドルでの銃犯罪に取り組むプロジェクトに寄付される。

持続可能なサプライチェーンを構築

ヒューマニウムメタルが成り立つ理由は、IMが考案したサプライチェーンにある。ヒューマニウムを採用したアイテムを販売して銃問題を広く伝えると同時に、収益は違法銃器による犠牲者の救済や、さらなる銃の接収資金にあてられる。

購入することで私たちもサプライチェーンの一部となり、世界平和に貢献できるということだ。

世界平和の象徴に

ヒューマニウムは、社会貢献や世界平和の象徴として特殊な意味を持つ素材と言える。私たちはヒューマニウムが使われたアイテムを購入することで活動を支援し、身に着けることで銃暴力反対の意志を示せる。

また、ヒューマニウムメタルの取り組みはSDGsの「平和で包摂的な社会の促進」を達成サポートも目的としている。争いをなくし、社会に平和をもたらす可能性を秘めているのだ。

※掲載している情報は、2020年8月28日時点のものです。

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