2025年8月8日(金)・9日(土)の2日間、ブックオフグループホールディングス株式会社を含むリユース業協会会員企業6社合同による、小学生向けのリユース体験イベント「8月8日 リユースの日 ~笑顔をつないで、未来のチカラに。~」が開催された。東京・秋葉原のアキバ・スクエアで行われた親子イベントの様子をレポートする。
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左から、フリーアナウンサー山下美穂子氏、株式会社アップガレージグループ 河野映彦氏、株式会社マーケットエンタープライズ 小林泰士氏、ブックオフグループホールディングス株式会社 堀内康隆氏、環境省 相澤寛史氏、株式会社ハードオフコーポレーション 山本太郎氏
8⽉8⽇はリユースの日だという。モノが⼈から⼈へと循環し続ける様⼦がイメージできる「∞(無限大)」と同じ形の8が並ぶことに由来する。一般社団法人日本リユース業協会が申請し、2023年に制定された。
そんな記念すべき日に開催されたのが、ブックオフグループホールディングス株式会社を含むリユース業協会会員企業6社合同による、リユース体験イベント「8月8日 リユースの日 ~笑顔をつないで、未来のチカラに。~」だ。2025年8月8日(金)・9日(土)の2日間に渡ってアキバ・スクエアで行われ、今回が初開催となった。
主な対象者は小学3〜6年生。とくに小学5、6年生については、学校の授業で持続可能な生活について学んでいるという。各企業のワークショップを通じて、循環型社会を自分ごととして捉えてもらうことが目的だ。
ブックオフのブースに設置された、持続可能な社会の実現に向けた宣言。
今回のイベントは、「本を売るなら」でお馴染みのブックオフの代表がイベント実行委員長を務める。ブックオフでは事業の中核であるリユース、リサイクルを中心に「すてない社会」を目指し、さまざまな取り組みを行っているという。
一例をあげると、国内店舗で販売に至らなかった商品をマレーシアやカザフスタンで販売する「Jalan Jalan Japan(ジャラン・ジャラン・ジャパン)」や、不要品回収システム「R-LOOP(アールループ)」、不要品査定額に応じた寄付ができる取り組み「キモチと。」などだ。リユースを通じてモノと笑顔を循環させ、持続可能な社会づくりに貢献し続けている。
事前応募というだけあって、参加した子どもたちも興味津々で聞いていた。
ELEMINIST読者にとっては身近なリユースだが、国内を見渡せばまだまだ浸透率は低い。環境省の調査によると、過去1年間でリユースを利用したことがある生活者は、たった3割(※1)程度というのが現状だ。
堀内康隆氏が「学校でリユースについて勉強したことがある人」と質問すると、多くの手が挙がっていた。
オープニングイベントの冒頭で「このイベントを通して、もっと日本国内にリユースを浸透させたい」と、イベント実行委員長でブックオフグループホールディングス株式会社 代表取締役社長 堀内康隆氏は意気込んだ。
リユースには4つの“いいこと”があるという。1)使わなくなってしまった人には捨てなくてすむ喜び、2)買う人にとっては安く手に入る喜び、3)燃やさずにすむことは地球にもやさしい、4)捨てないのでモノの寿命を延ばすこともできる。「ぜひ友達にも伝えてください」という問いかけに、参加した子どもたちは大きく頷いていた。
身長199cmの朝日健太郎氏。毎年靴を買い替える必要があったため、小学生時代からリユース経験者。
リユースに取り組むのは、民間だけではない。政府も循環型社会の実現に向けて大きく舵をきった。参議院議員の朝日健太郎氏もイベントに登壇し「この国の資源を守り、ごみを減らしていく」との考えを示した。
また、身近な例として自身のリユース体験を披露。元バレーボール選手でもある朝日健太郎氏は、古くなったボールを海外に届ける活動にも携わる。バレーボールをしたくてもボールが買えない子どもたちのためだという。「モノを通じてみんながつながっていく。これもリユースに込められた想いだ」と語った。
温室効果ガスを「地球のお布団」に例えるなど、相澤寛史氏のわかりやすい説明に子どもたちも聞き入っていた。
環境省の環境再生・資源循環局 資源循環課 課長 相澤寛史氏は、循環経済(サーキュラーエコノミー)について、スライドを用いながら子どもたちに説明。8月5日には国内統計史上最高気温の41.8度を観測したことにも触れ、リユースをすることでモノをつくるとき、捨てるときの温室効果ガスが出ないこと、それが地球温暖化を食い止めることにもつながると熱を込めた。
世界中で資源を繰り返し利用し、循環させていくサーキュラーエコノミーへの転換が叫ばれている。そのためには「一人ひとりの協力と行動が大事だ。一緒に考えていきたい」と未来を担う子どもたちへ理解を求めた。
何十年も前からリユース業に携わっているという企業もあり、さまざまなリユース体験が聞けた。
循環型社会の必要性を受け、リユース企業4社の代表も登壇。リユース事業を始めようと思った経緯の他、個人的にNo.1だと思うリユース品について紹介する場面もあった。
代表たちの回答に、司会者から「座布団1枚!」という声がかかる場面もあり、楽しい提案となったようだ。
参加者にリユースの魅力が伝わったところで、最後にリユース企業4社の代表から子どもたちへ、夏休みの宿題が伝えられた。テーマは「今日からできるリユースアクション」だ。
・物を大切に
「いま持っているモノ、着ているモノを大切に使えば、長く使えるし、次の人に使ってもらえるかもしれない。それがリユースのスタートになる」
株式会社アップガレージグループ 代表取締役社長 河野映彦氏
・断捨Re
「離ではなくリユースのRe。捨てるのはもったいない。自宅に使わなくなったモノを置く場所をつくり、たまったらリユースできるお店に持っていく仕組みづくりを」
株式会社ハードオフコーポレーション 代表取締役社長 山本太郎氏
・何か1つを誰かにあげる
「『自分は使わなくなったけど、何かほしいものある?』と聞いてみる。いらないものではなく、相手がほしいと思うものをあげるのがポイント」
ブックオフグループホールディングス株式会社 代表取締役社長 堀内康隆氏
・一日一 Re
「一日一善という言葉がある。1日1回リユースをするのは難しくても、リユースやサステナブルについて考えてもらえたら。もっと楽しさを広めていきたい」
株式会社マーケットエンタープライズ 代表取締役社長 小林泰士氏
司会者からは、「リユース日記をつけてみては?」という提案もあり、この夏休みにどんなアクションをしてみようかと、親子で話す姿が印象的だった。
各ブースでは、20〜30分程度のワークショップを開催していた。
子どもたちが楽しみしていたのが、リユース業協会会員企業6社による体験イベントだろう。「不要になったら捨てる」以外にどんな選択肢があるのか、親子で考えてみようという趣向だ。各企業の出展ブースでは職業体験さながらに、それぞれの企業の特性を活かしたイベントが用意されていた。紹介していこう。
車やバイク用品、自転車などのリユースを展開している株式会社アップガレージグループでは、車のタイヤの買い取りとタイヤホイールの取り付けを体験。ワークシートのチェック項目をみながらお店で売る値段を導き出す。サイズ、ホイールの色、形、汚れやキズの有無まで細かく観察し、「状態がよい、雨の日でもよく止まる」といったアピールポイントまで考える。どうしたら買い取った中古品をさらにすてきな商品にできるのか、ここでの体験を通して、子どもたちもリユースする楽しさを学べたようだ。
カメラの販売や写真の現像の他、中古カメラの買取販売も手がける株式会社カメラのキタムラ。現在、フイルムカメラはほぼ製造されておらず、現像できるところも少ないという。そんなフイルム文化を次世代へつなげようと、子どもたちに夏休みの思い出をフイルムカメラで撮ることを提案。スマートフォンのカメラとは違う操作にとまどいながら、ピントを合わせている姿が新鮮だった。撮ったフイルムは持ち帰ることができる。デジタルとは違う写真の仕上がりに、新しい写真の魅力を知ってもらえたら。
楽器や家電、家具、オーディオなどの1点ものが人気の株式会社ハードオフコーポレーションには、ジャンク品で遊ぼうと子どもたちが詰めかけていた。PCのキーボードを好きに分解し、取り出した基盤をキーホルダーにするまでが体験だ。ドライバーやペンチを手にした子どもたちは、思い思いにキーボードのネジを外し、バラしていた。使えなくなったジャンク品も決してごみではない。修理したり、アイディアしだいでさまざまなモノに変化させることもできる。身を持って学んだようだ。
本を中心に、CD、DVD、ゲーム、洋服まで、さまざまなアイテムを循環させているブックオフグループホールディングス株式会社。ここでは、リユース品が店頭に並ぶまでの作業を体験する。好きなCDやDVDを選びキズの有無を確認、研磨機へ。袋に入れシールを貼って完成だ。仕上がった商品は実際に、BOOKOFF 秋葉原駅前店にて販売されるという。「持っているモノは大切に使って、次の人へつなげていこう」というスタッフの言葉に、子どもたちも体験を通して納得したようだった。
総合買取サービス「高く売れるドットコム」を運営する株式会社マーケットエンタープライズ。インターネットを通じて中古の農機具なども海外81カ国以上へ輸出している。そんなモノの値段はどうやって決まるのか、調査してみようというのがこちらの体験。例えば目覚まし時計なら、状態は? 動いている? 説明書はある? 人気のある商品なのか?など、子どもたちは見て、触って、気付いたことをワークシートに記入していく。モノの価値や使い終わったあとの行き先を考える、いいきっかけになったようだ。
誰もが簡単にモノの売り買いを楽しめるフリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリでは、モノとお金の価値・リユースを学ぼうという、小学生向けの教育プログラムにも力を入れている。今回のイベントに合わせて「リユース探検隊」という謎解きゲームのような冊子まで用意。どうすればごみを減らせるのか、またアプリの画像検索機能を使って、自宅にある不用品がいくらで売買されているのかなど、リユースに関する知識を楽しみながら学んでいたのが印象的だった。
回収ボックス「R-LOOP」が設置されているコーナー。こちらは衣料品だけではなく、おもちゃや雑貨まで無料で回収してくれるのが強み。分別されたものは、マレーシアやカザフスタンでリユースされているという。回収から販売までトレーサビリティが明確なので安心だ。会場全体で、リユースについての学びと楽しさを感じられるイベントだった。
質問コーナーでは子どもたちからするどい問いかけもあり、リユースへの意識の高さが感じられた。
深刻さを増す気候変動や資源の枯渇といった問題から、世界中でサーキュラーエコノミーへの移行が求められている。持続可能な社会の実現には、大量生産・大量消費・大量廃棄といった従来型の経済システムでは立ち行かなくなっているということだ。
今回イベントで取り上げたリユースは、使用しなくなったモノの形を変えず繰り返し使うことを指す。その結果、廃棄物を削減できるだけではなく、廃棄物を処理する際や新たにモノをつくる際のCO2の削減、さらに資源の有効活用にもつながる。そのため、リデュース・リユース・リサイクルの3Rのうち、リデュースに次いで2番目に優先順位が高いとされている(※2)。
リユース企業の代表からも「モノを大切にすることが、リユースのスタートだ」という言葉もあったが、家庭でリユースに取り組むことは、子どもにとってモノを大切にする心を育むことにもつながる。さらにいえば、モノの価値やお金について学ぶきっかけにもなるだろう。ぜひこの機会に家族でリユースについて考え、日常に取り入れてみてはいかがだろう。
撮影/森本修大 取材・執筆/村田理江、編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)
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