Photo by Precious Plastic
廃プラスチックを個人でも再生できる──そんな未来を目指す、オランダ発のコミュニティ「プレシャス・プラスチック」。プラスチック廃棄物の削減を目指し、プラスチックのリサイクルに関するプロセスやマシンなどの情報を公開する、ユニークなオープンソースの再生プロジェクトだ。
聖京香/Kyoka Hijiri
ライター
イギリス在住25年のフリーランスWebライター。好きなものに囲まれながらも無駄を失くし、丁寧かつサステナブルな暮らしを目指して精進中。好きなものは猫と本と森林浴。
米ぬか由来のイノシトール 「初耳!だけど使ってみたい」の声が集まる
Photo by Precious Plastic
プラスチック汚染は、地球規模で深刻化している環境問題だ。とくに途上国ではリサイクルインフラが不十分で、ごみの多くが埋め立てられたり海洋に投棄されたりしている。
この状況を前に、「自分たちの手で何かできるはず」と立ち上がったのが、オランダ発のオープンソースプロジェクト「プレシャス・プラスチック(Precious Plastic)」だ。
プロジェクトの目的は明確だ。誰にでもプラスチックごみを再利用できる仕組みを世界中に広め、地域単位で実践可能にすること。
プレシャス・プラスチックの公式サイトでは、リサイクルマシンの設計図やチュートリアル、製品デザインなど、必要なリソースをすべて無償公開。誰でもリサイクルを始められる仕組みが整っている。
Photo by Precious Plastic
プレシャス・プラスチックは、現在では56ヶ国・2,000以上のプロジェクトが登録されるグローバルなコミュニティへと発展した。
実際に、プレシャス・プラスチックでは1年間で約1,400トンのプラスチックが再生されており、市民レベルの取り組みとしては注目に値する成果を上げている。
この活動は、単なるリサイクル技術の提供にとどまらない。地域のリサイクル拠点設立や製品販売、教育活動、さらにビジネス展開にまで広がっているのが特長だ。
たとえば、シンガポールの「Plastify」はペットボトル回収に加え、病院から出る医療廃棄物の再利用にも力を入れている。こうした動きが、地域経済や雇用の創出にもつながっているのだ。
プレシャス・プラスチックは、大きな社会課題に対し、小さな行動で解決策を示すプロジェクトとして始まった。
しかし、現状は厳しい。リサイクルされるプラスチックは全体のわずか9%未満であるという。実際、リサイクルされなかったプラスチックの多くは埋め立てられたり、自然界に捨てられたりしており、環境に与える負荷は決して小さくない。海に流れつくプラスチックごみは、魚よりも多くなるといわれるほどだ。
プレシャス・プラスチックは、こうした現実に正面から向き合いながら、企業に頼るのではなく、一人ひとりが関われるリサイクルのかたちを提案しているのだ。
国連環境計画(UNEP)の報告書によると、2017年には世界で年間約4億3,800万トンものプラスチックが生産された。だが、その多くがリサイクル困難な設計だ。
こうした現実のなかで、プレシャス・プラスチックは「一人でも始められる」ことにこそ希望を見出している。
必要なのは、情報へのアクセスと、ほんの少しの好奇心、そして行動力だ。プレシャス・プラスチックは英語での情報公開だが、興味のある人は一度サイトをのぞいてみてはどうだろう。
※参考
Make It Precious|Precious Plastic
DIY plastic recycling made easy: How a global community is fighting plastic pollution| euro news.
Global Plastics Outlook | OECD
Drowning In Plastics|UN Environment Programme
ELEMINIST Recommends