米アスリート発・海を守るムーブメント 「Protect Where We Play」始動

海

Photo by Mathyas Kurmann on Unsplash

米国のアスリートたちが、未来の世代のために行動を起こそうと、スポーツファンに呼びかけ始めた。フィールドはすべて海につながっている。次世代の選手のため、スポーツを楽しむ子どもたちのために、いま海の大切さを見直そう。

Naoko Tsutsumi

エディター/ライター

兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。

2025.05.01
ACTION
環境

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選手がプレーするフィールドは海に守られている

アメリカの環境団体「Ocean Conservancy(オーシャン・コンサーバンシー)」は、長年にわたって健康な海ときれいな海岸を守るための世界的な活動を先導している。このほど、米国のトップアスリートとともに「Protect Where We Play(私たちのプレーする場所を守ろう)」をスローガンに、海の健全性と保全にフォーカスした新たな活動を始動した。

「あなたが海岸沿いに住んでいようと、何百マイルも内陸に住んでいようと、あなたの好きな試合やコンサート、イベントの未来は、海の健全性にかかっています」

オーシャン・コンサーバンシーの最高ブランド・コミュニケーション責任者、ジェナ・ディパオロ氏がこう言うように、海は、私たちが呼吸するのに必要な酸素の50%をつくり、二酸化炭素排出量の25%を吸収する。そして、排出された二酸化炭素などによって発生した余分な熱の90%を吸収する。

つまり、海こそが地球上のあらゆる生命を支える存在であり、海を守ることは海洋生物の保全のみならず、海から離れた場所に住む私たちにもつながる。そして、アスリートがプレーし、人々が観戦する場を守ることにもつながっているのだ。

そこで、アスリートが中心となり声を上げ、スポーツファンに呼びかけることで、海の大切さを知り、海を守る活動を広げていこうというのが、このプロジェクトだ。

この海洋保護活動にいち早くアクションしたひとり、オリンピック出場経験のあるWNBA(女子バスケットボールリーグ)のナフィーサ・コリアー選手は、「娘にも、そしてみんなの子どもたちにも、私に多くの喜びと成功をもたらしてくれた同じスポーツを楽しんでもらいたい」と、未来の世代に思いを寄せる。

また、NFLのケルビン・ビーチャム選手は、“全米でもっとも暑い州”のひとつであるアリゾナ州を拠点とするプロ選手として、気候の脅威から「プレーする場所を守る」ことの大切さを話す。

「私たちのホームスタジアムは、高熱と洪水から今後10年間でおよそ9億6500万ドルの損害を被る可能性があることが、調査によって示されています。私たちがプレーする場所を保護することは、私たちが今日大切にしているのと同じ経験を未来の世代が楽しめるようにすることであり、それがオーシャン・コンサーバンシーと協力できることを誇りに思う理由です」

ファンの熱気を力に、地球の未来を変える

洪水、猛暑、火災、その他の気候の影響は、近年ますます深刻になってきている。カリフォルニア州ロサンゼルスやその周辺で発生した大規模な山火事によって、NFL、NHL、NBAなどの試合が延期されたり、強烈な熱波によって人気アーティストのコンサートでファンが熱中症で命を落としたり……。スポーツやエンターテイメント界に激震を走らせた出来事はまだ記憶に新しい。

米国では、トランプ政権による気候変動政策の後退が懸念されるなか、スーパースターのリアルな声が、ファンの心に響かないはずがない。

オーシャン・コンサーバンシーは活動の一環として、著名なスポーツ選手だけでなく、アーティスト、団体からなる"チーム・オーシャン"を発足。彼らを応援する一人ひとりのファンが団結したときに発揮するエネルギーの強さを信じ、海洋保護のムーブメントをつくろうとしている。

ファンに呼びかける動きがあるのは、アメリカだけではない。

アメリカと同じくスポーツが盛んで、ファンの支持がカルチャーや経済にまで影響を与えるといわれるオーストラリアでは、クリケット代表主将のパット・カミンズ選手をはじめ、130人以上のアスリートが「気候変動修正案」を支持。

気候変動について将来の世代のために行動していない政治家や政策立案者に対し、スポーツの世界と同じように、どんな厳しい状況でも正しい判断ができる指導者が必要だと声をあげて、アクションを起こそうとファンに呼びかけている。

日本からもできるアクション

日本から遠く離れた場所の話だと、傍観者でいる必要はない。

推しの選手に思いを寄せるでもいい。大好きなスポーツへの思いを行動で表したくなったらまずウェブサイトから“チームオーシャン”に参加を。この活動に賛同する意思を表明できる。また、海洋保護区の野生動物を救うための寄付も随時受け付けている。

インスタグラム(@oceanconservancy)をフォローするだけでも、46.1万人のフォロワーと思いはひとつだ。

すべての源である海を守るためにみんなで考えて、自分にできることから始めるのもよさそうだ。

※参考
Protect Where We Play
Star Athletes Urge Sports Fans To Join Them On Ocean Protection|Forbes
Duty Of Care

※掲載している情報は、2025年5月1日時点のものです。

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