パリ市、投票で「500の通りをカーフリー」に 住民の声をダイレクトに反映

エッフェル塔前

Photo by Jacek Dylag on Unsplash

パリ市は自動車乗り入れ禁止区域を拡大することを決定した。これは、住民投票で決まったことだ。そんなパリ市では近年、住民の参加のもとで新しい環境政策が次々と進められている。

Ouchi_Seiko

ライター

フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。

2025.04.11
ACTION
編集部オリジナル

微細藻類由来オイルの魅力と化粧品づくりの裏側に共感 サキュレアクト×ELEMINIST 新商品説明会レポート

Promotion

16歳以上に参加資格、パリ市の「環境にまつわる」住民投票

2025年3月23日、パリ市で市長が主催する住民投票が実施され、市内の道路沿いの緑化と、歩行者専用道路のさらなる拡張が決定した。対象はパリ市にある約500の通りで、今後は自動車の乗り入れがすべて禁止される。

近年のパリ市では、このような住民投票にもとづいた、歩行者にやさしい街づくりに関する新たな施策が次々と決定している。その大きな特徴は、市議会の審議とは違い、住民の意見が直接反映されること。住民はパリ市が設定したテーマについて、投票所で「賛成」か「反対」を選択する。

今回の住民投票は3回目で、過去にはSUVの駐車料金を3倍に引き上げることや、電動キックボードのシェアサービスを廃止することも決定されている。第3回目の投票率は4%と低かったものの、結果は66%の賛成票で可決。通りの整備は今後3~4年以内に完了する予定だという。

さらに今回は、16歳、17歳の未成年者にもはじめて投票権が与えられた。投票者56,489人のうち、この年齢層で投票したのは約300人だったが、住民の声が市政に届くという観点で見れば、パリ市の取り組みも大きな意味を持つのではないだろうか。

パリ市内10分の1の通りが歩行者専用道路に

パリの路地裏

Photo by carla baccari on Unsplash

環境団体クリーンシティ・フランス支部のコーディネーターであるクレマン・ドロニャ・ランドレ氏は、住民投票の結果について次のように述べている。

「パリ市民が都市設計の抜本的な変化を望んでいることを示しています。よりきれいな空気、より少ない騒音公害、より多くの緑地、そしてより広い公共スペースが求められているのです」

市民の望む変化は投票後も続いていく。どの通りを歩行者専用区域にするかについて、2025年4月以降、市民の意見を取り入れながら決定される予定で、各地区の規模に応じて5~8通りが選ばれる見込みだ。

整備が完了すれば、パリ市内で合計700の通りが歩行者専用になる。これは、市内にある通りの約10分の1に相当する。また、通りでは自動車の乗り入れが禁止されるだけでなく、植樹や植栽も積極的に行われる。

アンヌ・イダルゴ市長は、これまでに1,300キロメートル以上の自転車専用レーンを新設するなど、かつて自動車中心だったパリの街を大きく変えてきた。2020年以降はスクールゾーンの緑化や、駐車スペースの撤去も続々と進められている。

住民投票自体は2023年から始まり、投票率を上げることが課題であると考えられるが、パリ市はこの新しい試みによってさらに歩行者にやさしい街へと進化していくだろう。

※参考
Paris Votes to Make 500 More Streets Car-Free|Bloomberg
Citizens’ vote: Parisians say yes to greening 500 streets|Paris Secret
Paris votes to make 500 streets car-free|ZAG DAILY

※掲載している情報は、2025年4月11日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends