パリ市、騒音を出すクルマを取り締まり 「感覚公害」対策でよりよい街へ

人混みや車で混雑するパリの街中

Photo by Aiham Abuwasel on Unsplash

パリでは2025年夏から、レーダーを使って騒音のひどい車両の取り締まりを開始する。「感覚公害」に分類される騒音を軽減し、住民に快適な生活環境を提供することが目的だ。

Ouchi_Seiko

ライター

フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。

2025.02.17
SOCIETY
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人の感覚に不快をもたらす「感覚公害」とは?

工事現場の風景

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工事現場の機械音、幹線道路付近の車の走行音、深夜営業の店周辺で聞こえる話し声など、人は不快な音に長時間さらされると、身体的・心理的ストレスを感じかねない。

こうした騒音は、振動や悪臭と並び「感覚公害」と呼ばれている。感覚公害は日常生活に密着しており、人間の感覚に直接的な刺激を与えるため、場合によっては深刻な健康被害を招くこともある。

実際、日本では典型7公害(大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭)に関する苦情のうち、感覚公害が3分の1以上を占めているという。

生活環境に悪影響を及ぼし、しばしば事件や裁判にも発展する騒音問題。フランスの首都パリ市では、そのなかでもとくに車の騒音を抑制するため、道路に騒音レーダーを設置し、2025年夏から厳格に取り締まる方針を発表した。

騒音を2デシベル減らすパリ市の計画

パリ市の騒音対策は、2021年から2026年までの5年間で、騒音を2デシベル削減することを目標とした「騒音削減計画」に基づいている。フランスのエコロジー移行省はその一環として、2022年にパリ市内の2カ所に2台の騒音レーダーを試験的に設置。調査の結果、1日あたり10台から44台の車両が規制値を超える騒音を発生させていたことが明らかになった。

この結果を踏まえ、パリ市は騒音を出す車両の取り締まりを2025年夏から強化する。騒音はバイク、スクーター、自動車を問わず、レーダーにより85デシベルを超えた場合に検知される。違反者には1回につき135ユーロ(約21,000円)の罰金が科され、15日以内に支払えば90ユーロ(約14,000円)に減額される予定だ。

なお、80デシベルは、救急車のサイレンや走行中の電車の音ぐらい。つまり、85デシベルの規制値は、大声で話さないと人との会話が成り立たないくらいの騒音だ。

騒音レーダーを設計したBruitparif社によれば、設置されるレーダーは、エンジンの空ぶかしやスピードの出し過ぎ、煽り運転、改造されたバイクのマフラー音など、過度な騒音をスピードカメラのように自動で検知するという。さらに、電柱の高い位置に設置されるため、交通量の多い場所でも違反車両を正確に識別できるということだ。

高まる改善の声 ヨーロッパに広がる

パリの小道

Photo by Clément Dellandrea on Unsplash

Bruitparif社の騒音レーダーは、ブリュッセルやバルセロナなどヨーロッパの他都市でも試験的に導入されている。これは、日常的に騒音公害を減らしたいという人々の意識の高まりを反映したものだ。事実、2022年にフランスで実施されたテストには、パリ市に加えフランス国内の6つの自治体も参加した。今回のパリ市での結果しだいでは、騒音レーダーがフランス全土に配備される可能性もある。

住民や観光客にとっては、取り締まりによって生活や街の環境の向上が期待できるだろう。大気汚染対策や光害対策など、これまでもさまざまな施策を講じてきたパリ市は、今後は音環境にも配慮し、より静かな街づくりを目指していく。

※参考
Paris: noise radars to punish noisy vehicles from summer 2025
Anti-noise radars will penalize overly loud vehicles starting in the summer of 2025
環境省白書|環境省

※掲載している情報は、2025年2月17日時点のものです。

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