ミツバチのおかげで象と人が共存? ケニアの「象とミツバチ」プロジェクト

野生の象

Photo by Thorsten Messing on Unsplash

アフリカのケニアでは、野生の象による事故や被害を防ぐため、ミツバチを活用した新しいプロジェクトが行われている。自然の力を利用したこの試みは、象と人間の共存を目指す新たなアプローチとして注目されている。

Ouchi_Seiko

ライター

フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。

2025.02.10
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ケニアで増える人間と象の衝突 共存するためには?

ケニアの風景

Photo by David Clode on Unsplash

2020年以降、ケニアでは急激な人口増加が進んでいる。世界保健機関(WHO)によると、現在の人口は約5,530万人。しかし、2050年には約8,350万人に増加するという。

さまざまな野生動物を保護してきたケニアだが、人口の増加とともに深刻化する問題がある。人間と動物の衝突だ。なかでも、住民がもっとも頭を悩ませているのが野生の象で、人間と象の居住地に明確な境目がない地域では、農作物が象に食い荒らされ、住民の安全が脅かされている。居住地やインフラの拡大により、象の生息地が縮小していることも、衝突の増加に拍車をかけている要因の一つだ。

ケニアでは、2010年から2017年の間に、人間と象の衝突で約200人が死亡した。さらに、人間への攻撃を理由に毎年50〜120頭の象がやむなく殺処分されている。

人間と象の衝突はケニアだけの問題ではない。他のアフリカ地域、インド、そして東南アジアに至るまで、急激な人口増加により象の生息地が縮小している。そこで、人間と象の接触事故を避けるため、ケニアではあるシンプルな共存策が導入されることになった。

共存の鍵を握るミツバチ

ミツバチ

Photo by Gaurav Kumar on Unsplash

9年間におよぶ研究の結果、ケニアの象は、農地に吊るされたミツバチの巣箱を86%の確率で避けることが明らかになった。研究はツァボ・イースト国立公園近くの26の農場で行われ、水や食べ物を求めて接近した約4,000頭の象について分析された。

このアイデアは、象の保護団体「セーブ・ザ・エレファンツ」の創設メンバー、イアン・ダグラス・ハミルトン氏とフリッツ・フォルラート氏が2002年に発表した研究論文に基づく。彼らは、象がミツバチの羽音を聞くと逃げ出すことを突き止めたのだ。

象の皮膚は厚いが、ミツバチは目や口、鼻といった部位を狙うことがある。ミツバチに襲われると、象は頭を振り土煙を上げ、警戒音を発して仲間に危険を知らせる。この研究結果を受けて立ち上がったのが、セーブ・ザ・エレファンツによる「象とミツバチプロジェクト」だ。

同プロジェクトでは現在、アフリカとアジアの97か所に14,000個の養蜂箱を設置している。養蜂箱は周辺地域の受粉を促すだけでなく、採れた蜂蜜などを販売することで農家の収入向上にもつながっているという。

さらに、セーブ・ザ・エレファンツは養蜂箱の普及を促すため、組み立てマニュアルの動画を無料で公開。その結果、象が生息する23の地域・100か所以上で養蜂箱設置の試験運用が進められることになった。

減少するミツバチの個体数対策にも期待

この自然由来の解決策は、人間と象の共存を可能にする突破口となるかもしれない。また、生物多様性に不可欠なミツバチの個体数を増やすことにもつながるだろう。

実際、ケニアでは2023年から養蜂家の育成プログラムがスタートしている。ミツバチの個体数を増やすことや農家の収入増、地域の活性化などが主な目的だが、住民が参加することで自然保護への責任感も育まれる。

とはいえ気候変動による干ばつが頻発すれば、ミツバチを活用した共存策の継続も難しい。事実、ミツバチの数はヨーロッパや米国をはじめとした各国で減少を続けている。人間と動物の持続可能な共存策を実現するという視点においても、気候変動への対策が急務といえる。

※参考
Can beehives help humans and elephants co-exist? A simple nature-based solution is keeping the peace|euro news
Kenya Beehive Project|DGB group

※掲載している情報は、2025年2月10日時点のものです。

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