イギリスの国民参加型・世界最大規模「庭の野鳥カウント調査」 2025年もまもなく開始

双眼鏡で野鳥を観察する女性

Photo by Katie Nethercoat (rspb-images.com)

バードウォッチング発祥の地、イギリスで毎年冬に開催される「ビッグ・ガーデン・バードウォッチ」。人々の野鳥への関心の高さが窺えるこのイベントは、野生の鳥が直面する現状を知るための手がかりとなっている。

Kojiro Nishida

編集者・ライター

イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。

2025.01.22
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45周年を迎えた2024年は60万人が参加

枝にとまっているヨーロッパコマドリ

Photo by Andy Hay (rspb-images.com)

ヨーロッパコマドリ

イギリスで毎年1月に行われる世界最大規模の市民参加型の野鳥調査イベント「Big Garden Birdwatch(ビッグ・ガーデン・バードウォッチ)」が2025年もまもなく始まろうとしている。

野鳥や自然環境の保護に役立てることを目的に、英国王立鳥類保護協会(以下:RSPB)が1979年から毎年実施しているものだ。2024年はなんとイギリス全土で60万人以上もの人が参加し、計970万羽を超える数の野鳥が記録された。

1時間だけでOK 誰でも気軽に参加できるのが魅力

家の中から庭の野鳥を観察する家族

Photo by Ben Andrew (rspb-images.com)

前年の12月頃からRSPBの公式ホームページにてエントリーの受付が始まるため、参加希望者は住所や参加人数を登録しておくと、野鳥の数を記入する紙のシートと、鳥の識別に役立つ野鳥ガイドが郵送で自宅まで届く。

近年RSPBでは資源削減の観点から、紙を使わずオンラインシステムの利用を推奨しており、野鳥の数の登録や野鳥ガイドの閲覧まで、すべてペーパーレスで完結することも可能だ。

シートに野鳥の数を記入する人

Photo by Eleanor Bentall (rspb-images.com)

ビッグ・ガーデン・バードウォッチは毎年3日間実施されており、2024年は1月24日から26日まで。参加者は3日間のうちの1時間だけ、好きな時間帯に野鳥の数をカウントする。特別な場所に出向く必要もなく、ほとんどの人は自宅の庭やバルコニーから参加するが、近所の公園などで行ってもよい。

野鳥の数え方は、鳥の種類ごとに一度に見えた最大数を登録する方式が採用されている。1時間で見た「のべ数」ではない点に注意が必要だ。また、空を飛行中の鳥はカウントせず、木の枝や地面に着地している個体だけをカウントする。

1時間の観察が終われば、野鳥の種類ごとに一度に見えた最大数を登録し、観察を行った場所、時間、人数もシートに併せて記入しRSPBへ郵送(またはオンラインで登録)すれば完了となる。もちろん費用は一切かからない上に、調査に参加すればRSPBの公式オンラインショップで利用できるクーポンなどが配布される。

過去60年で3,800万羽の野鳥が減った!?

アオガラ

Photo by Ray Kennedy (rspb-images.com)

アオガラ

春になるとその年のビッグ・ガーデン・バードウォッチの集計結果が発表される。2024年の結果を見てみると、もっとも多くの数が報告されたのは「イエスズメ(House Sparrow)」、その次に「アオガラ(Blue Tit)」、「ムクドリ(Starling)」、「モリバト(Woodpigeon)」 そして「クロウタドリ(Blackbird)」が続く結果だった。

イエスズメ

Photo by Ray Kennedy (rspb-images.com)

イエスズメ

数でトップとなったイエスズメは、2024年に約140万羽が観察されたが、1979年に行われた第一回目のビッグ・ガーデン・バードウォッチの結果に比べると60%減少しているという。ムクドリの個体数も1979年以降、80%以上減っており状況は深刻だ。過去60年間では、3,800万羽もの野鳥がイギリスの空から姿を消したとされている。

そんななかでも個体数が増加・安定しているのはアオガラやシジュウカラなど、庭に吊るされた野鳥用餌台へ餌を食べにやってくる“ガーデン・バード”として親しまれている鳥だ。その種が好む餌や環境、生態によって生存の可能性に大きく差が開いていることがよくわかる。

長年にわたって集められたデータを通じて、野鳥の個体数や分布の変化を把握できるだけでなく、市民に環境保護の大切さを伝える機会にもなっているビッグ・ガーデン・バードウォッチ。身近なところで暮らす鳥が危機的な状況に直面していることを知るための貴重な手がかりだ。


※参考
The Royal Society for the Protection of Birds (RSPB)
RSPB Big Garden Birdwatch 2025 Together, Let’s Make It Count|Yorkshire Times

※掲載している情報は、2025年1月22日時点のものです。

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