Photo by GOB
カリフォルニア州を拠点とするスタートアップが、菌糸体(菌類の体を構成する糸状の集合体)だけで設計された耳栓を発売。使用後に家庭用コンポストで堆肥化できるという環境負荷の低い耳栓は、プラスチック製の代替品として注目を浴びている。
Naoko Tsutsumi
エディター/ライター
兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。
Photo by GOB
衛生面を考慮するべきアイテムは、どうしても使い捨てにせざるを得ない。そんな使い捨てに対する抵抗感を解消する商品を開発したのが、アメリカのスタートアップ、GOBだ。
同社はプレシードラウンドで120万ドル(約1億8000万円)の資金調達を実現。さらに、環境問題に真摯に向き合うビリー・アイリッシュなどのアーティストをはじめ、ホスピタリティ、航空、モータースポーツ業界のリーダーが早くも契約を結ぶほど注目される理由は、その素材にある。
原料は、菌糸体の製造に関する特許技術をもつ世界的リーダーであるEcovative(エコバティブ)の菌糸体を採用。GOBのチームによると、「この耳栓は100%菌糸でできており、最大の衛生と性能を保証するために1回限りの使用に設計している」という。
Photo by GOB
GOBの耳栓の原料は、菌糸体のみ。マイクロプラスチックも有害な残留物も含まず、バイオベースの製品として米国農務省(USDA)より認証を受けている。家庭用コンポストで数週間から数か月ほどで分解され、土壌に栄養分を戻すという。埋め立て処分された場合でも、長期的な環境への影響を残さない。
従来の石油由来のプラスチック製品が数百年以上自然環境に残り続けるのに対して、菌糸体由来ならば、たとえ一度限りの使用であっても、役目を終えた後に生分解化するという点で環境への負荷は小さい。
さらに、農業副産物から栽培されるためエネルギーや資源の消費も大幅に少ない。GOBの調べでは「従来の石油由来の素材でつくられた1年分の耳栓(およそ200億個)の半分をGOBの菌糸体由来の耳栓に置き換えるだけで、年間約0.9~1.9億トンのCO2排出が削減できる」という。
菌糸体という革新的な素材と出合い、“使い捨て”を必要とする製品に可能性がひらかれた。
Photo by GOB
プラスチックフリーの耳栓は環境だけでなく、人の肌にもやさしく、低刺激。キノコ特有の細胞構造によって、形状記憶フォームのように心地よく耳にフィットするうえ、吸音性にも優れているという。
従来の使い捨ての耳栓が特定の周波数を消してしまうのに対し、GOBの耳栓はすべての周波数を均等に打ち消すため、ノイズを低減するそうだ。世界的に活躍するアーティストたちから支持を得ているだけあって、その音響効果は大音量で存分に発揮されるに違いない。
気になる価格は、4組入りで9.95ドル(約1500円)、12組入りで24.95ドル(約3800円)、30組入りで54.95ドル(約8300円)。
騒音に継続的に晒されることによるストレスは、不快感や睡眠障害、聴力障害などさまざまな健康被害を引き起こすことが知られている。人の健康と地球の未来、どちらも思いやることができるときが来たかもしれない。
ELEMINIST Recommends