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既存の税法が原因で、地主によるマングローブ林の農地化が問題となっていたタイで、2025年からマングローブ林の土地にかかる税金が免除となった。これによって生物多様性の宝庫であるマングローブ林の保全を目指す。
Kojiro Nishida
編集者・ライター
イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。
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タイでは1月1日から、個人が所有するマングローブ林が、土地に関する税金の課税対象から免除された。
海洋沿岸資源局(以下DMCR)のピンサック・スラサワディ長官によれば、これはマングローブ林という肥沃な湿地帯が農地へと転換されてしまう問題を緩和し、海洋の豊かな生物多様性を保つための動きだ。
その背景には、2019年に施行された「土地・建物税法」がある。この税法では、適切に使用されていない土地は“空き地”に分類され、農業に使用されている土地よりも高い税率で課税されるため、多くの地主たちが高い税金を避けるために自身が所有するマングローブ林の土地を農地へと変えていた。このことをDMCRは指摘していた。課税対象から免除することで農地への転換を防ぎ、マングローブ林を守るのが狙いだ。
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潮の満ち引きが激しい沿岸や河口に生育するマングローブは、哺乳類、爬虫類、鳥類、魚類、甲殻類、その他の水生生物まで多種多様な生き物が生息地としており、そのなかには341種もの絶滅危惧種も含まれているという。
複雑に張り巡らされるマングローブの根系は土壌を固定し、海岸の浸食を抑える働きがある。それによって、サンゴ礁や海草などの生息地が土砂によって押し流されるのを防いでいる。また硝酸塩やリン酸塩などの汚染物質をろ過し、海水の水質の向上にも役立っている。
マングローブ林は高潮や津波などの自然災害に対する防御線として機能し、沿岸地域を守っている。世界中で1500万人以上に対する洪水のリスクを軽減していると考えられている。
気候変動の大きな要因の一つとされている二酸化炭素を吸収し、根と土壌に多く蓄えるマングローブ。気候変動への影響の緩和に役立っている。その効果は、一般的な森林に比べて最大で4倍にもなるという。
人間、野生生物、そして地球にとってあらゆる恩恵をもたらしているマングローブ林。だが、これらの生態系の生息地の3分の2が失われ(または劣化し)、マングローブ林に生息する6種に1種以上は絶滅の危機に瀕しているなど、深刻な状況にある。
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マングローブ林が失われた原因の60%以上は、人間による直接的な影響だと考えられており、沿岸の開発や伐採、農業のための開墾、魚やエビの養殖地への転換などだ。
DMCRはタイの財務省や内務省などの政府機関と連携し、マングローブ林の保全に努めてきた。今回適用された税制の変更は、タイ政府が環境保護を重視し、税金免除という具体的な政策を通じてマングローブ林の保全に取り組んでいることを示す例だといえる。
DMCRではさらに、国のマングローブ林をより豊かにするため、地主に対してマングローブの苗を提供し、植林を奨励している。
※参考
Thailand's mangrove forests to be land-tax exempt|Bangkok Post
WHY ARE MANGROVES IMPORTANT?|Zoological Society of London
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