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米イリノイ州シカゴで、マイノリティとして生きる一人の黒人女性が立ち上げた書店「セミコロン・ブックス」。マイノリティコミュニティのセーフプレイスとして、人々をエンパワメントし地域が抱える問題の解決も目指す。
Kojiro Nishida
編集者・ライター
イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。
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シカゴで2店舗を運営する独立系非営利書店「セミコロン・ブックス」。ブラック・ヒストリー(アフリカ系アメリカ人の歴史)にまつわる本やマイノリティ作家による物語が並び、店内を飾るアートピースにもそれが反映されている。
この店のオーナーであるダニエル・ムーア氏は、社会から見過ごされがちなレズビアンの黒人女性として、多様な声が称賛され、自立が育まれる場所を創るためにこの書店をオープンさせた。
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「セミコロン・ブックス」創業者のダニエル・ムーア氏(右)
2019年の開業以降、マイノリティのコミュニティや、ただ“ありのまま”でいられる場所を求める人々のためのセーフプレイスになっているセミコロン・ブックス。ダニエル氏はかつて自身がそうしたように、“自分にとって安全な居場所を自ら創り出すこと”がなによりのエンパワメントになるということを人々に伝えている。
「もしあなたが社会や世界から疎外感を感じているなら、何かを創り出してください。それが自分にとって精神的、感情的、そして肉体的にも安全な場所を築く唯一の方法だから」
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ダニエル氏がセミコロン・ブックスを開くことを決意したきっかけは、ホームレスのシェルターを転々としていた幼少期の経験に遡る。過去を振り返り、「本が私の人生を救ってくれた」と話すダニエル氏。
世界中のどこにも逃げ場がない中で、本を読む時間だけが辛い現実を忘れさせてくれる避難所になっていたという。読書は彼女に無限の可能性があることを教え、大人になるまで人生の道標となった。
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セミコロン・ブックスでダニエル氏が掲げる目標の一つが、シカゴの若者の識字能力の向上だ。
全米教育統計センターが行った調査では、イリノイ州の成人のうち約5人に1人が、文字の簡単な読み書きはできても、本や新聞に書かれた文章などを理解することができない「機能的非識字」であることが明らかになっている。シカゴが郡庁所在地であるイリノイ州クック郡だけでみると、その割合はさらに高く、およそ4人に1人だ。
加えて、2023年のイリノイ州教育委員会(ISBE)の報告書によると、シカゴの公立学校に通う高校2年の生徒のうち、読解力が基準に達しているのはわずか22%しかいなかった。
セミコロン・ブックスでは、地域の子どもたちやイリノイ州全域の刑務所に本の寄付を行い、3ヶ月に一度はシカゴ公立学校の生徒たちが、店内にある好きな本を無料で手に取れる「#ClearTheShelves」というイベントも実施している。
経済的な理由で本を手にできない人々に読書の機会を提供し、本への関心を高めてもらうことで、マイノリティコミュニティの識字能力を向上させることが狙いだ。
2020年以降、セミコロン・ブックスが新しい本を無料で提供した学生の数は13,000人以上にのぼる。
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メディアの取材を受けるダニエル氏
現在はシカゴのみを拠点とするセミコロン・ブックスだが、今後はロンドンや東京など海外への進出も視野に入れているという。
「実は数年間東京に住んでいたことがあり、大好きな街です。東京では本やアートにまつわる活動がしっかり評価されることが素晴らしいし、人々も魅力的です」と話している。
いつかセミコロン・ブックスが、世界最大の非営利書店になることを思い描いているダニエル氏。東京進出が実現したときは、ぜひまた話を伺いたい。
※参考
Semicolon Books
Semicolon Books: A haven of independence and empowerment in Chicago|Mozilla
1 in 5 Illinois Adults Is Illiterate, But It’s 1 in 4 in Cook County|Illinois Policy
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