Photo by ils Stahl on Unsplash
従業員はほぼ全員が元ホームレス。そんな異色のレストランがイギリスに誕生した。プロデュースしたのは、ミシュランスターシェフのアダム・シモンズ氏だ。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
「すだちの香り」で肌と心が喜ぶ 和柑橘の魅力と風土への慈しみあふれるオイル
ミシュランで星を獲得したことのあるイギリスの有名なシェフ、アダム・シモンズ氏がこのたび、ロンドンに新しい店をオープンさせた。だが、他のレストランと一線を画すのは、ここで働く従業員のほとんど全員が元ホームレスであることだ。
アダム氏の目的は、レストラン業界でキャリアを積むための人材を育成すること。路上生活に陥った人々にチャンスを与え、ホームレスの悪循環を断ち切ろうとしている。
というのも、アダム氏はいまではミシュランスターシェフとして成功を収めているが、自身がコカイン中毒になり、家賃を支払えなくなってホームレスになりかけた人物だからだ。しかし家族が受け入れてくれたため、この逆境を乗り越えることができた。
「ホームレスになることがいかに簡単なことか、わかっている。人々はさまざまな理由で路上生活を送ることになるが、我々は彼らに2度目のチャンスを与えている」と語っている。そんな彼の思いは、「Home Kitchen(ホーム・キッチン)」という店名にも込められているだろう。
レストランのウェブサイトには、「ホーム・キッチンは非営利のレストランであり、社会的影響のプログラムだ」と記載されている。事業として利益を求めるのではなく、社会支援活動の一環というわけだ。
Photo by Pylyp Sukhenko on Unsplash
だが、調理経験のない従業員も多い。アダム氏のレストランでは、通常なら、そんな初心者が厨房に立つことはないだろう。しかしここでは、調理の研修もしっかり行う。
新入社員はまず3週間、料理短期集中コースを受講。その後2週間、アダム氏が携わる5つ星ホテル内にあるレストランでも研修を行う。また、90日間の試用期間が終わると、ロンドンの教育機関「ウェストミンスター キングスウェイ カレッジ」で1年間の料理技能認定コースを受講する資格が与えられる。
フルタイム契約の場合、時給13.15ポンド(約2500円)に加え、通勤手当が支給され、勤務中には食事も提供される。待遇面でも申し分ないだろう。
アダム氏は「ここのキッチンのスタッフはたくさんのミスをしますが、それでいいんです」と笑う。「彼らに自信をつけることが大切。だから従業員が失敗しても、それを受け入れて許すことが必要だ」と、話している。
コロナ禍をきっかけに、社会の格差が広がっているいま。アダム氏の野望はロンドンにとどまらず、イギリスのブライトンとアメリカのサンフランシスコにも、同様の店をオープンさせる計画だ。
ELEMINIST Recommends