Photo by Octopus Energy
2020年末に日本上陸を果たしたイギリス発の電力会社「オクトパスエナジー」。本国イギリスでは、風力発電タービンの設置を後押しする世界初の画期的な料金体系が注目を集めている。
Kojiro Nishida
編集者・ライター
イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。
知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
Photo by Octopus Energy
2016年にイギリスで創業した「オクトパスエナジー(Octopus Energy)」。現在はイギリスのほか、日本を含む世界18カ国でエネルギーを供給。風力、太陽光、バイオマスなどによるクリーンエネルギーを主に利用しており、イギリス内で供給されるエネルギーに関しては100%が再生可能エネルギーだ。
同社では、AIと機械学習を駆使した独自のテクノロジープラットフォーム「Kraken(クラーケン)」を使用し、効率的かつ顧客のニーズに寄り添ったサービスを提供している。
透明性の高い料金体系や優れたカスタマーサービスが高く評価され、短期間で急速な成長を遂げてきた同社。2023年第1四半期時点で、イギリス市場シェアの22%を占める約680万世帯が利用しており、早くもイギリス最大の電力会社としての地位を確立している。
Photo by Octopus Energy
オクトパスエナジーは2021年に、世界初となる画期的な料金体系をローンチし話題になった。「Fan Club(ファンクラブ)」と名付けられたこのプランは、風力発電タービンの近くに住んでいる利用者が、風が強く吹いているときに最大で50%まで電気料金の割引が受けられるというもの。
最初はヨークシャー、ウェールズの一部エリアのみが対象だったが、2023年9月にはリンカンシャー、東海岸の洋上に新たな風力タービンが設置されたことで、海岸沿いに位置するグリムズビーやスケッグネスといった街も対象エリアに加えられた。
オクトパス・エナジー・ジェネレーションのCEOであるゾイサ・ノース=ボンド氏は「私たちの"ファンクラブ"は、イギリスの人々がどれだけ風力を愛しているのかを示しています。この画期的な制度を、洋上風力発電所の近くに住む人々にも拡大できるのは素晴らしいことです。グリムズビーやスケッグネスの海岸線で雄大な風力発電所を眺める人々は、風が強いときに安い電力の恩恵を受けることができるようになります」と語っている。
Photo by Octopus Energy
オクトパス・エナジー・ジェネレーションのCEO ゾイサ・ノース=ボンド氏
2021年にファンクラブがローンチされて以来、2万件以上もの風力タービン設置の要望がイギリス国内から寄せられているという。
サステナブルな再生可能エネルギー源のひとつとして注目される風力発電だが、景観の変化や土地の利用、野生生物への影響などから設置する際は地元住民の理解や協力が不可欠。これまでは設置に反対する声も多かったが、ファンクラブという形で電気代の割引が受けられ、地元住民にもメリットのあるオクトパスエナジーの風力発電タービンは歓迎されているのだろう。
Photo by Octopus Energy
2020年には東京ガスとのパートナーシップにより日本市場への参入を果たしたオクトパスエナジー。崎陽軒、Panasonic Homes、BEAMSなどの著名企業が契約していることを公表しており、日本国内での注目度も高まっている。
気になるのは日本でもファンクラブの制度が設けられるのかどうかだが、現時点では日本での導入は発表されていない。イギリス以外の地域では、現在はアメリカとドイツの一部エリアのみだ。ぜひ今後の展開に期待したい。
※参考
A breezy bargain: Octopus launches first ever offshore ‘Fan Club’ tariff|Octopus Energy
Octopus Energy JP
ELEMINIST Recommends