レアアースとは? レアメタルとの違いや環境への影響を解説

ノートパソコン

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レアアースは、ハイテク製品に使用される材料だ。技術の進歩が目まぐるしい現代において、レアアースの存在は欠かせない。この記事では、レアアースの基本概要やレアメタルとの違い、世界や日本の産出の状況と環境への影響などを解説する。

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2024.06.13

レアアースとは

ハードディスクを修理する男

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レアアースとは、鉱物から抽出される金属のうち、31鉱種あるレアメタルのなかの17種類の元素(希土類)の総称(※1)。1794年にスウェーデンで発見され、極めて希少な物質と考えられたことから、レア(希少な)アース(土類)と名付けられた。

日本語で「希土類元素」とも呼ばれるレアアースは、地殻のなかに広く分布しているものの、鉱石から抽出するのが難しいこと、混然一体となっており元素ごとの分離が難しいことなどから、希少とされている。スマートフォンや電気自動車、光ファイバーなどのハイテク製品の製造に不可欠なため、ハイテク産業にとって非常に重要な資源だ。とくに中国が世界の供給量の大部分を占めており、戦略的資源として注目されている。

レアアース17種類と元素

レアアースは、周期表の元素番号57番から71番で構成される「ランタノイド」元素15種に、スカンジウムとイットリウムを加えた17種の元素で構成されている(※2)。

ScスカンジウムYイットリウム
LaランタンCeセリウム
PrプラセオジムNdネオジム
PmプロメチウムSmサマリウム
EuユウロピウムGdガドリニウム
TbテルビウムDyジスプロシウム
HoホルミウムErエルビウム
TmツリウムYbイッテルビウム
Luルテチウム

レアメタルとの違い

そもそも世の中には多くの金属があり、さまざまな用途で使われている。そのうち代表的なものが、「ベースメタル」、「貴金属」、「レアメタル」の3つだ。鉄や銅、亜鉛、鉛、アルミニウムなどのように生産量も使用量も多いものが「ベースメタル」(下の表、緑色)、金、銀、白金(プラチナ)やパラジウムなど希少で耐腐食性があるものが「貴金属」(下の表、青色)。(※3)

そして、明確な定義はないが、埋蔵量が希少もしくは技術的・経済的な理由で抽出が困難な金属のうち、産業への利用価値が高く安定供給が望まれるものが「レアメタル」に分類される(下の表、黄色)。レアメタルは経済産業省の区分によると47元素あり、一例として、チタン、ニオブ、タンタル、コバルト、インジウムなどがある。そのうち17元素だけがレアアースと呼ばれている(下の表、赤色)。

レアアースを含む金属の元素一覧 link

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レアアースの主な用途

ハードウェア

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希少性の高いレアアースは、何に利用されているのだろうか。

ハイテク製品

レアアースは、ハイテク製品に利用される。一例として、ネオジムやサマリウムなどのレアアースは、スマートフォンやタブレット、スピーカーなどの小型で高性能なハイテク機器の性能を向上させる。また、半導体や光学機器などの製造にも欠かせない。ハイテク業界において、レアアースは技術革新と製品の発展に不可欠な材料として重要な役割を果たしている。

自動車

レアアースは、とくに電気自動車(EV)のモーターやバッテリーに不可欠だ。ネオジム磁石はモーターの効率を高め、軽量化を実現する。またレアアースはリチウムイオン電池の性能向上にも寄与し、EVの航続距離を伸ばすことに貢献している。さらにハイブリッド車や燃料電池車でもレアアースが使用され、エネルギー効率の向上や環境への配慮にも寄与している。

医療機器

レアアースは現場でも使用されている。とくに画像診断装置(MRIやCTスキャンなど)の磁石や、X線管、レーザー装置、超音波検査装置などの医療機器において欠かせない材料だ。これらの医療機器は、診断精度や治療効果の向上に貢献している。またレアアースは特定の医療用医薬品や治療法にも使用され、癌治療や慢性疾患の管理などの先端医療技術にも利用されている。

レアアースの主な産出国と埋蔵量

トレーラー

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レアアースは、どこで採掘・生産されるのだろうか。

レアアースの主な産出国

世界におけるレアアースの生産量は、2022年で約30万トン。そのうち中国が20万トンを超え、世界の生産量の約70%を占める最大の産出国となっている。次いで、アメリカが4万3千トン(シェア約14%)で2位、オーストラリアが1万8千トン(同6%)で3位、ミャンマーが1万2千トン(同4%)で4位と続く。(※4・5)

2012年当時は世界の生産量の約9割を中国に依存していたことから、産出国の多角化が進んでいる。しかしながら、まだまだ中国への依存度は高い。

中国の産出量が多い理由としては、次の2つが考えられる。
・労働コストの低さと環境規制の緩さ
・資源が豊富な新興国への積極的な投資


レアアース鉱石の多くは放射性物質を含んでおり、精錬の過程で有害物質や放射性廃棄物が発生するが、中国では環境規制の緩さから処理コストが抑えられる。また、コンゴ民主共和国のコバルトの鉱山開発やインドネシアのニッケルの精錬所への投資など、中国は鉱物原料の調達網の確保に早くから注力していた。(※6)

レアアースの埋蔵量ランキング

埋蔵量はどのようになっているのか。世界全体の埋蔵量は2018年時点で1億2000万トンとされ、うち中国が4400万トンを占める。国別の埋蔵量ランキングは以下の通り。現在、産出量世界2位のアメリカの埋蔵量は140万トンにとどまる。(※7・8)

1位中国37%4400万トン
2位ベトナム18%2200万トン
3位ブラジル18%2200万トン
4位ロシア10%1200万トン
5位インド6%

日本でレアアースは産出される?

作業しているクレーン

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現在は輸入に依存しているレアアースだが、今後は日本国内での産出も期待されている。東京大学の研究グループが2012年に南鳥島周辺の水深6千メートルの海底下で、レアアースを豊富に含む「レアアース泥」を発見した。調査によると、世界需要の数百年分に相当する埋蔵量があるとされている。

2022年、日本政府はこのレアアース泥の採掘に乗り出すとし、採掘法の確立に向けた技術開発に着手。7年以内の試掘を目指す。中国では鉱山などで採掘できるが、日本では深海の底からの採掘となる。採掘方法が難しくなるため、コストをどこまで下げられるかが課題だ。政府は効率的な採掘・生産の手法を実現させ、いずれは民間企業が参入できる環境を整える予定だ。

レアアースの現状と課題

採掘場

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ハイテク産業に欠かせないレアアースは、現在どのような状況にあるのだろうか。長期的に活用するために乗り越えなくてはならない課題について見ていこう。

中国依存への懸念

中国には世界の37%のレアアースが埋蔵されており、産出量も世界1位だ。日本をはじめ多くの国々が中国に依存しているため、中国による生産・輸出の動向がダイレクトに影響を及ぼす。この20年間で産出国の多角化が進み、中国への依存度は下がりつつあるが、まだまだ高い状況といえる。

供給の不安定性と価格の変動

技術革新やクリーンテックへの移行に伴い、レアアースへの需要は年々増加傾向にある。一方で産出国やその供給量は限られる。中国など主要な産出国が生産や輸出を制限すると、レアアースの不足や価格高騰が起こり、ハイテク産業全体に影響を及ぼす可能性がある。

2010年以降の「レアアース・ショック」と呼ばれる急激な価格高騰は、中国による日本へのレアアース禁輸措置により起こった。その後、その余波により価格が下落するなど、レアアースを取り巻く世界市場は乱高下のリスクを孕んでいる。

環境問題への懸念

レアアースの採掘や生産は、環境への負荷も問題となる。採掘に伴う環境破壊だけでなく、レアアース鉱石がウランやトリウムといった放射性物質を含んでいることも問題だ。採掘や製錬の過程で大量の放射線物質や有害物・廃棄物を発生させてしまう。

レアアースは希少とされているが、地球上に無尽蔵にあるとされている。しかし、"レア"と言われる所以には、採掘方法、つまりは採掘に伴う廃棄物や放射性物質の処理が容易ではないことが関係しているのだ。持続可能なレアアースの採掘・生産には、環境に配慮した採掘技術の開発や有害物質の処理、リサイクルの促進が不可欠となる。

レアアースの課題解決のためにできること

ショベルカー

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レアアースの不足や環境への悪影響は、見過ごせない問題だ。このような課題を解決するために、私たちは何ができるのだろうか。

リサイクルの推進

使用済み製品や部品からレアアースを回収し、リサイクルすることでレアアースの供給量を増やすことができる。効率的にリサイクルすることで、レアアースの持続可能性を高められる。

環境への影響を知る

私たちの生活を豊にする、さまざまな精密機械に使用されているレアアース。技術の進歩により、今後もさらなる需要拡大と消費は進んでいくことが予想される。しかしながら、レアアースも地球資源のひとつ。地中や海底から発掘すること自体が環境への負担になり、精錬の過程で環境汚染につながる大量の廃棄物を発生させる。このことを多くの人が知っておくだけで、いま持っている物を長く大切に使い、不要になったらリユース・リサイクルするという行動が増えていくだろう。

レアアースを取り巻く世界や日本の動向に注目

工業地帯の夜景

Photo by Dominik Vanyi on Unsplash

レアアースは、ハイテク製品に欠かせない材料だ。しかし、過度に採掘・生産しようとすると環境破壊の恐れが生じる。今後、日本での採掘が目指されているが、技術面や環境への影響の面、経済的な面から、成功と言える結果が生まれるのか。また、中国やアメリカ、そのほかの主要産出国が今後どのような対応をしていくのか、動向に注目したい。

※掲載している情報は、2024年6月13日時点のものです。

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