Photo by Andrew Coelho on Unsplash
波の音や鳥のさえずりなど、自然界には美しい音色があふれている。それらがSpotifyやApple Musicで、”アーティスト”として登録された。ストリーミング再生によって発生するロイヤリティの一部を環境保全団体などに還元する。アーティスによる楽曲へのサンプリングも行われている。
Kojiro Nishida
編集者・ライター
イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。
知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
Photo by Sounds Right
音楽をストリーミング再生することで自然環境の保護に寄与できる取り組みが新たに始まった。デンマーク・コペンハーゲンに拠点を置く「ミュージアム・フォー・ザ・ユナイテッド・ネーションズ(UN Live)」が主導するプロジェクト「サウンズ・ライト(Sounds Right)」だ。
「サウンズ・ライト」は、波の音や風、雷雨、鳥のさえずりなど、自然界の音をフィーチャーした音楽作品に発生するロイヤリティの一部を環境保全団体に還元することを主な目的とする。そして2024年4月、SpotifyやApple Musicなどの音楽ストリーミングプラットフォーム上で、自然を「NATURE」というアーティストとして正式に登録した。
これにより、人々が「NATURE」で自然の音を聞けば、そこで発生するロイヤリティの一部が「サウンズ・ライト」にも入る。
さらに、自然の音を楽曲にサンプリングしたアーティストは、参加アーティストの“一人”としてタグ付けできるようになり、その楽曲の再生によるロイヤリティの一部も「サウンズ・ライト」に入る仕組み。アーティストとリスナーそれぞれが自然環境保全に貢献できる画期的な取り組みだ。
「サウンズ・ライト」に集められた資金は、慈善団体「EarthPercent」によって管理され、生物学者、環境活動家、先住民族の代表や環境保全資金の専門家らなどで構成されるアドバイザーパネルが決定した寄付先へと配分される。主に「生物多様性重要地域」に指定されたマダガスカルやインド・ミャンマー、フィリピン、大西洋岸森林など、生態系が脅威にさらされているエリアの保全・再生プロジェクトが対象となる。
Photo by Sounds Right
現在SpotifyやApple Musicでは、全15曲からなるプレイリスト「Feat. NATURE」が公開されている。参加アーティストには、David Bowie x Brian Eno、Ellie Goulding、AURORA、UMI with V of BTS、Anuv Jain、MØ、London Grammar、Bomba Estéreoなどがいる。
Photo by Maddison Phipps
エリー・ゴールディングは国連環境計画のアンバサダーも務める。
英国のシンガーソングライター、エリー・ゴールディングは、2020年にリリースした自身の楽曲『Brightest Blue』に、コロンビアの熱帯雨林の音をフィーチャーしたリミックスでこのプロジェクトに参加。次のようにコメントしている。
「サウンズ・ライトの一員になれることを嬉しく思います。私は若い人たちが自然とつながり、環境保全に貢献するためのインスピレーションを提供することに情熱を注いでいます。
『Brightest Blue – Nature Remix(Feat. Nature)』には、この地球上でもっとも美しく生物多様性に富んだ環境のひとつであるコロンビア各地の生態系の音を使用しました。このような場所こそ、サウンズ・ライトの恩恵を受け、未来の世代のために保全されるべき場所なのです」
サウンズ・ライトの発表によると、今後4年間で6億人以上のリスナーから4千万ドル(62億4千万円*)以上の資金を生み出すことが予測されている。
今後この取り組みに参加するアーティストが増えることで彼らのファンも巻き込み、より大きなムーブメントになることが期待される。日本から参加する初のアーティストが誰になるのかにも注目したい。
*1ドル=156円で換算(2024年4月時点)
※参考
Sounds Right
Earth (yes, the planet) will now receive streaming royalties when you listen to nature sounds on Spotify, Apple Music | GOOD GOOD GOOD
ELEMINIST Recommends