「環境主張」には国際的ルールがある? 企業がやるべき取り組みとは

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企業や組織が環境への取り組みを行っていることを公に宣言する「環境主張」は、ステークホルダーや消費者からの信頼を得るためにも重要な取り組みだ。ただし、これには国際的なルールがある。本記事では、環境主張や環境表示ガイドラインの概要、企業が行うべき環境主張の取り組み例を紹介する。

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2024.04.17
SOCIETY
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エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

環境主張とは

グリーンを大切に掌に乗せている様子

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「環境主張」とは、企業や組織が製品やサービスを提供するにあたって、どのような点が環境に配慮されているのかを自ら公に宣言すること。その際、取り組みの具体的な内容が消費者やステークホルダーに伝わるよう、説明文やラベル、シンボル、図表、環境認証などを用いるのが一般的だ。

持続可能な社会の実現に向けて世界的な動きが活発になるなかで、消費者の購買行動において"環境へ配慮した商品・サービスであるか"は重要な判断要素になってきた。企業や団体は、消費者に対し、効果的に「環境主張」を行う必要性がより高まっているのである。

しかしながら、"環境に配慮した"と一概にいっても、その基準が曖昧で"主張"の信憑性や科学的根拠が不明確であると、選ぶ側の消費者にとって判断が難しいという状況が生まれてしまう。

「環境主張」は、 ISO(国際標準化機構)/JIS(日本産業規格)の「環境ラベル及び宣言(Environmental labels and declarations)(ISO14020)」シリーズにおいて国際的にルール化されており、それに準拠する必要がある。

環境主張と環境表示の違い

「環境表示」とは、製品の原料採取から製造、流通、使用、リサイクル・廃棄の段階において、環境に配慮した点や環境負荷低減効果などの特徴を説明したものをいい、説明文やシンボルマーク、図表、「環境ラベル」などを用いた「環境主張」のこと。

日本においては、環境側面に関する表示を総称して「環境表示」と表現することから、国際規格であるISO/JIS において示される「環境主張」は環境表示に含まれる。(※1)

「環境主張」で押さえたいISO「タイプⅡ規格」

ISOは、環境表示に関する国際規格として「環境ラベル及び宣言(ISO14020)」シリーズを発行している。「環境ラベル及び宣言」には 3 つのタイプがあり、それらに共通する一般原則も定められている。

「タイプⅠ(ISO14024)」は第三者機関が認証したシンボルマークで表わすもので、日本ではエコマークが該当する。「タイプⅢ(ISO14025)」は製品やサービスのライフサイクル全体の環境負荷をデータでトータルに把握するもので、いずれも提供したデータなどの情報を第三者機関が認証するタイプだ。

そして「タイプⅡ(ISO14021)」は、企業が自らの表現や宣言によって行う環境主張に対して規定している。第三者が認証するものではなく、主張内容はすべて企業の判断に委ねられているため、情報の信頼性や透明性の確保が重要になってくる。

そういった観点から、「タイプⅡ規格」では、自己宣言による環境主張を行う企業に対し、下記のような5つの基本項目や、特定のシンボルマーク、特定の用語を使用する際のルールなどを細かく定めている。

5つの基本的な要求項目

① あいまいな表現や環境主張は行わないこと
② 環境主張の内容に説明文を付けること
③ 環境主張の検証に必要なデータ及び評価方法が提供可能であること
④ 製品又は工程における比較主張は LCA 評価、数値等により適切になされていること
⑤ 評価及び検証のための情報にアクセスが可能であること


「環境に安全」「環境にやさしい」「地球にやさしい」「無公害」「グリーン」といったワードは、曖昧かつ環境への配慮を大まかにほのめかす主張として規制されている。そのほかにも、5つの要求それぞれに細かな規定が示されている。

以下は、使用する際にルールが定められている用語。これらを謳う商品・サービスのうち、ルールに沿っていないものも少なくないという。

1. コンポスト(堆肥)化可能(Compostable)
2. 分解可能(Degradable)
3. 解体容易設計(Designed for disassembly)
4. 長寿命化製品(Extended life product)
5. 回収エネルギー(Recovered energy)
6. リサイクル可能(Recyclable)
7. リサイクル材料含有率(Recycled content)
8. 省エネルギー(Reduced energy consumption)
9. 省資源(Reduced resource use)
10. 節水(Reduced water consumption)
11. 再使用可能及び詰替え可能(Reusable and refillable)
12. 廃棄物削減(Waste reduction)
13. 再生可能材料(Renewable Material)
14. 再生可能エネルギー(Renewable Energy)
15. 持続可能(Sustainable)
16. 温室効果ガス排出に関する主張(Claims relating to greenhouse gas emissions)

どのようなケースが主張できないのか、「2. 分解可能」を例に挙げる。
ある製品が焼却などの廃棄物処理をしなくても、土の中に埋めて一定の期間が経てば、微生物などによって自然に分解されるという主張の場合、実際に特定の試験方法によって「分解」されることが実証されている場合でも、分解のプロセスを通じて環境に有害な濃度の物質が排出される場合は、この主張を行うことはできない(※1)。

環境表示ガイドラインとは

環境主張 環境表示ガイドライン

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「環境表示ガイドライン」とは、自己宣言により環境表示を行う企業・団体に向けて、どのような情報や表現が望ましいか、どのような情報の提供が必要かについて、ISOの「環境ラベルおよび宣言」タイプⅡ(ISO 14021)を元に環境省が整理し、まとめた指針。

最近の消費者の環境意識の高まりに応じて、日本においても環境表示・環境主張を行う企業や団体が増えているものの、ISO規格に準拠しているものは少なく、消費者に混乱を生じさせる一因となっていることが策定の背景にある。

また、環境に配慮した製品の提供や企業の環境への取り組みを奨励し、環境への負荷ができるだけ少ないものを選んで購入する「グリーン購入」などの経済社会の変革を促進するためには、環境主張・環境表示の適正化が重要であるとの考えからだ。

環境主張で企業が取り組むべきこと

環境主張 環境表示ガイドライン

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企業や団体が「環境主張」を行う際には、どのような取り組みを行うことが望ましいか。3つの例を紹介する。

環境ラベルの取得

企業が環境主張を行うときの一般的な方法のひとつが、環境ラベルを取得すること。

環境ラベルとは、環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられるマークや認証のこと。企業が環境主張を行う際には、 ISO/JISの「環境ラベル及び宣言(ISO14020)シリーズ」の基準を満たしたラベルである必要がある。

先述したように、「タイプⅠ(ISO14024)」では、日本では「エコマーク」が代表される。「タイプⅡ(ISO14021)」では、基準を満たした企業独自のマークが該当する。例としては、ライオン株式会社の「暮らし、まいにち、エコ。」マークや(※2)、NEC(日本電気株式会社)の「エコシンボル」マーク(※3)がある。「タイプⅢ(ISO14025)」では、日本では「エコリーフ」がある。

エコマークの意味とは 対象商品と認定基準・SDGsとの関連を解説

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LCA算定に基づく環境主張の開示

LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)とは、製品やサービスの素材や原材料の調達から、製造、流通、消費、廃棄に至るすべての過程における環境負荷を総合して、科学的、定量的、客観的に評価する手法のこと。

「タイプⅡ規格」における5つの基本要求項目においても、4つ目に「製品又は工程における比較主張は LCA 評価、数値等により適切になされていること」と記されている。

環境配慮を謳う製品やサービス、企業が増えていくなかで、一部分のみを切り取った表現や根拠を明確に示していないものは、信頼性に欠けるとともに、消費者の納得も得られない。今後はますます、環境主張において、明確な基準や根拠が必要となるだろう。

正確でわかりやすい情報公開

環境主張の目的は、環境配慮への取り組みの具体的な内容が消費者やステークホルダーに伝わること。そのためには、ホームページ上などで、根拠となる情報やデータがわかりやすく提示されていることが必要不可欠だ。

「タイプⅡ規格」における5つの基本要求項目の5つ目にも、「評価及び検証のための情報にアクセスが可能であること」が記されている。

適切な環境主張を行うことが重要

企業や組織のSDGsに対する取り組みが加速するなかで、消費者の環境への関心も年々向上しており、企業や組織の環境活動に対する注目度は高まりを見せている。そのため、企業は自社の取り組みやその情報を、透明性を持って消費者やステークホルダーに伝える必要がある。そのためにはISO/JISの「環境ラベル及び宣言(ISO14020)シリーズ」、「環境表示ガイドライン」に基づいた透明性のある環境主張を行うことが重要だ。

※掲載している情報は、2024年4月17日時点のものです。

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