子どもの貧困問題を抱える沖縄 その原因や私たちにできることとは?

沖縄の古宇利島の海のイメージ

Photo by Skaterlunatic

一人当たりの所得が全国最下位であり、貧困率が高い沖縄県。なかでも子どもの相対的貧困率は全国トップで、苦しい状況に置かれている子どもは4人に1人とされている。なぜ子どもの貧困が深刻化してしまったのだろうか?本記事では、原因や貧困問題解決に向けた取り組みについて紹介していく。

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2024.01.29

沖縄における子どもの貧困

「子どもの貧困」と聞いて、発展途上国における問題だとイメージする人も多いだろう。しかし、日本でも子どもの貧困は引き起こっており、厳しい状況のなか生活している子どもも少なくない。そんな子どもの貧困問題で、とくに深刻な状況にあるのが沖縄県だ。

沖縄県の一人当たりの所得が、全国最下位であることを知っているだろうか。所得が低いことは大人だけの問題ではなく、子どもにも影響がおよんでいる。相対的貧困の状態にある18歳未満の子どもの割合を指す「子どもの相対的貧困率」は、23.2%(※1)。これは全国平均の11.5%と比較すると2倍以上にものぼる(※2)。

内閣府が平成28年度から開始した「沖縄子どもの貧困緊急対策事業」による取り組みなどもあり、当時の29.9%からは改善の傾向にあるものの、まだまだ解決にはほど遠いのが現状だ。

貧困状態であることによって、十分に食事を食べられない、必要なものを買いそろえることができない、水道やガスが止まってしまう、就学できない(教育が受けられない)など、厳しい状態で生活をしている子どもが、4人に1人いる状態なのである。

沖縄の貧困、その原因は?実態と問題解決に向けた取り組みを紹介

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沖縄で子どもの貧困が引き起こされる原因

なぜ、沖縄で子どもの貧困が引き起こり、ここまで深刻な状態になってしまったのだろか。ここからは、沖縄で子どもの貧困が引き起こされる原因について考えていこう。

収入が少ない

まず挙げられる原因として、収入の少なさがある。沖縄の最低賃金は令和5年度で896円(※3)。年々上がってきてはいるものの、全国平均の1,004円と比較すると100円以上差があり、全国でワースト3に入る低さだ。

さらに、沖縄県は非正規の職員・従業員率や失業率など、さまざまな貧困に関する指標でワーストを記録している。これらは家庭の収入(親の収入)の低さや不安定さに影響しており、それによって子どもの貧困を引き起こしている。

生活コストが高い

沖縄は生活コストが高いにもかかわらず、所得は全国平均の3分の2に過ぎない。この収入と支出のアンバランスが、貧困を引き起こす一因となっている。

宅配便などの送料が高いことから想像できるように、沖縄県外で生産された食品は、船や飛行機で運搬される際、輸送費などと比例して高くなってしまう。具体的には、本土では5kg1,800円で購入できるお米が、沖縄では2,300円で購入せざるを得ないような状況だ。

そのほかガスや電気、水道料金なども東京と大きな差はないうえ、車社会ゆえに、維持費などもかかってしまい、家計が圧迫されているのだ。

貧困の連鎖が起きている

貧困状態にある子どもは、家計の問題から進学することができず、仕事に就くケースが多い。しかし、高等教育を受けていないため、学歴の問題で高収入の仕事に就くことが難しいのが現状だ。

そうした子どもが貧困状態を脱せないまま親になり、さらにその子どもが家庭の経済状態から進学できず、低収入の仕事に就き……と、貧困を繰り返し、世代を超えて連鎖してしまっていることも、沖縄の子どもの貧困問題が深刻化している原因のひとつなのである。

言い換えれば、子どもの貧困を解決できれば、この世代を超えた貧困の連鎖を断ち切ることができ、沖縄全体の貧困問題を解決できるかもしれない。

沖縄の子どもの貧困問題解決に向けた取り組み

沖縄こどもの貧困緊急対策事業

内閣府では平成28年度から、「沖縄こどもの貧困緊急対策事業」に取り組んでいる。

この事業では、支援の対象である子どもの網羅的把握と早期対応を目的とした「小中学校におけるスクリーニングの支援」、把握した支援対象児童の家庭に対する積極的なアウトリーチ支援を目的とした「こどもの貧困対策支援員の配置に対する支援」、支援対象児童に対する支援の場として「こどもの居場所の運営支援」の3つの取り組みを軸としている(※4)。

沖縄の産業振興

「沖縄こどもの貧困緊急対策事業」と両輪で行なっているのが、沖縄の産業振興だ。沖縄の産業を盛り上げ、経済を潤すことで、住民の生活を豊かにしていく狙いがある。

具体的には、沖縄振興計画に基づく特別の措置により、沖縄の自主性を尊重しつつ、総合的かつ計画的な振興を図り、沖縄の自立的発展に役立てることで、沖縄県民の豊かな生活の実現を目指している。

沖縄県子どもの貧困対策計画の実施

沖縄県では、子どもの貧困率の上昇や、子育てを巡る社会的や経済的な変化を背景として、「沖縄県子どもの貧困対策計画」を立てており、以下3つを重点的に行なっている(※5)。

一つ目は、ライフステージに応じて、支援を必要とする子どもや子育て家庭につながり、適切な支援機関等へつなげる仕組みを構築する「つながる仕組みの構築」。

二つ目は、妊娠・出産期に困難を抱える保護者に対する支援の充実を目指す「保護者への支援」。

そして三つ目は、雇用の質の改善や生産性向上を図り、所得向上につなが る企業の取組を促進する「雇用の質の改善等に向けた取り組み」である。

私たちができること

沖縄の子どもの貧困問題について、私たちには何ができるのだろうか。できることについて、考えてみよう。

寄付をする

企業や個人からサポーターを募り、沖縄の子育て世帯に支援金を給付するプロジェクトを立ち上げているNPO団体などが多く存在している。

実際に現地に行くことはできなくても、寄付を通じて、ランドセルや制服、学用品など、入学にかかる費用の支援や、こどもを支援する民間団体をサポートすることができる。

ボランティアに参加する

沖縄在住の人や現地に行ける人は、ボランティアに参加する選択肢もある。

子どもたちに勉強を教える学習支援や、子ども食堂の手伝いなど、さまざまなボランティアを募集しているそうだ。単発でできるものから継続のものまであるそうなので、自分に合ったものを探してみるといいだろう。

問題を理解する

寄付やボランティアなど、実際に行動することも大事だが、時間やお金の問題ですぐに動くことがむずかしい人も少なくない。そんな人も、まずは沖縄で子どもの貧困問題が起きている、という事実をしっかり理解することが大切である。

寄付やボランティアができないから「関係ない」のではなく、どんなことに困っているのか、自分には何ができるのか、調べたり考えたりすることも、困っている子どもたちに寄り添うひとつの行動といえるだろう。

貧困に苦しむ沖縄の子どもを取り残さない

豊かな自然や独自の文化を持ち、毎年国内外から多くの観光客が訪れている沖縄県。観光収入などを想像すると、経済は潤っているように思えるが、実は生活に苦しんでいる子どもがたくさんいる。

貧困問題を解決するのは簡単ではないが、一人ひとりの小さな力を集めて、大きな力に変えていくことで、少しずつ解決に近づくことができるはずだ。

できることは人それぞれ。SDGsの考え方に“誰ひとり取り残さない”とあるように、誰ひとり取り残さない社会の実現に向けて、まずは自分ができることを考え、積極的に行動していこう。

※掲載している情報は、2024年1月29日時点のものです。

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