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沖縄県の1人当たりの所得は全国最下位であり、都道府県別の子どもの相対的貧困率は全国トップだ。沖縄の貧困率が高い理由はなぜなのか?社会的背景を絡めながら、その原因や実態、問題解決に向けた取り組みを解説する。
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沖縄県の1人当たりの所得は全国最下位。都道府県別の子どもの相対的貧困率についても29.9%とトップで、全国平均の約2.2倍にのぼる。さらに、非正規雇用率や失業率、給食費未納率など、さまざまな貧困の指標となるデータについてもワーストを記録している現状がある。また、母子世帯の割合も全国でもっとも高く、家庭の経済的事情を背景に十分な教育を受けることができず、大人になっても収入が安定した職業に就くことが難しいという貧困の悪循環が起こりがちであることも大きな問題となっている。
沖縄県が行ったアンケートでは、貧困層の家庭では食料や衣料が買えなかった経験や、電話料金などの滞納、電気・ガス・水道を止められた経験がある世帯が多いことがわかった。さらに、非貧困層でも一部の世帯に同様の経験があることがわかっている。
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沖縄の貧困問題には、経済構造と社会構造が複雑に絡み合った、さまざまな原因があると考えられる。
沖縄県の生活費は全国的に見ても高い方だが、所得は全国平均の3分の2に過ぎないため、非常に厳しい状況となっている。生活費が高い主な理由としては、沖縄県外で生産された食品は、船や飛行機で運搬される際の輸送費などと比例して高くなる傾向にあるためだ。例えば本土では5kg1,800円で購入できるお米が、沖縄では2,300円で購入せざるを得ない。さらに、沖縄県は車社会であるために、車の維持費や都市部の住居費の高さによって家計が圧迫されることも考えられる。このように、収入が低いにもかかわらず生活コストが高いことが大きな原因の一つなのである。
沖縄県は、でき婚率、若年出産率、離婚率がそれぞれ全国1位であり、離婚率については19年連続で全国1位を記録している。ひとり親の家庭が多いことや、早すぎる出産は若い親から高等教育の機会を奪ってしまい、生涯賃金を大幅に引き下げる原因にもなるため、子どもの世代に貧困を引き継ぐ原因にもなっている。
沖縄県の最低賃金は年々上がってきてはいるものの、2022年度で853円であり、全国的に見るとワースト1位である。さらに、非正規雇用率や失業率、給食費未納率など、さまざまな貧困の指標となるデータについてもワーストを記録している現状がある。これにより、経済的に困窮した児童が多くなってしまっており、高等教育などを受けるチャンスがなくなり、学歴的な問題で収入に大きな影響が出ていると考えられる。
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現在では、自治体や非営利団体による支援の手が広がりつつある。
「黄金(くがに)っ子応援プラン」は、令和2年度から5年間の子ども・子育て支援の基本方針として策定されたものだ。国、県、市町村、その他社会のあらゆる分野の構成員と協働し、「誰一人取り残さない、多様性と包括性のある社会」、「子育てしやすい社会」の実現を目指すとされている。
支援するステージごとに合わせた支援方法がとられており、幼稚園・保育園における体制の改善などが行われている。また、市町村への幼稚園型一時預かり事業の促進を行うことで、保護者が働きやすい環境を整える取り組みも行われている。さらに、「沖縄子どもの貧困緊急対策事業」では、家計が苦しい非課税世帯に対して、母親の就労先への家庭状況の説明や、子どもの就学援助の申請サポートを行なったり、子どもの居場所を確保するために、食事の提供や生活指導、学習支援などができる場所を自治体レベルで提供している市町村も存在する。
NPO法人も、生活や教育などの支援に広く取り組んでいる。沖縄での大きな課題である教育格差を支援すべく、NPO法人では大学生や高校生などのボランティア講師による専用教材を使った個別学習指導を行っている。また、社会経験の不足やコミュニケーション能力の育成を目的とした課外授業や、自己肯定感を向上させるための有資格者による無償個別カウンセリングやメンタルケアを行っているNPO法人も存在する。
沖縄県では、2023年8月に、現在853円の時給を43円引き上げ、時給896円とする答申をまとめた。物価上昇などを反映し、引き上げ額はこれまででもっとも大きかった去年の33円を10円上回り、過去最大になっている。
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地域のボランティア団体や慈善団体に参加し、貧困層や支援が必要な人々に対する支援の手助けを行うことも、私たちにできる一つのアクションだ。これらのボランティア活動は、地域社会に貢献する方法の一つである。
貧困層の家庭や、それに苦しむ子どもたちを助けるために、国や自治体に加え、個人や団体があらゆる支援を行っている。とくにNPO法人は、寄付金や助成金、事業収入によって活動が成り立っているケースがほとんどだ。しかし、継続して活動を続けるための資金や人材がまだまだ足りていないのが現状のため、貧困問題に取り組む団体や非営利団体に寄付を行うことで、彼らの活動を支えることが可能になる。
個人の消費行動においても意識的に取り組むことができる。地元の商品やサービスを意識的に選択することで、地域経済の支援に貢献することが可能だ。気になる沖縄の農産物や工芸品があれば、購入を検討してみてはどうだろうか。
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沖縄県における貧困問題について、国や自治体の取り組みによって少しずつ改善が図られてはいるものの、依然としてその問題は深刻だ。企業や団体だけでなく、沖縄県全体、日本全体が積極的に取り組みを進め、変化していくことが重要だ。同時に、一人ひとりの所得を上げる動きも必要だろう。
これらの問題は、社会構造や離婚問題などと深い関わりがあるため、根本的な改善が重要である。そのためにも、自治体だけでなく、一人ひとりの支援や協力が求められている。
参考
内閣府|子どもの貧困に関する指標(沖縄県の状況)
日本財団ジャーナル|貧困率は全国平均の2倍以上。沖縄の課題を「一人もとりこぼさない学生支援」で断ち切る
令和2年度沖縄県の賃金(P.38-41,48)
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