動物福祉と動物愛護はどう違う? 考え方や具体例をわかりやすく解説

草原でくつろぐゴールデンレトリーバーのイメージ

Photo by Samuel Girven

「動物福祉」や「動物保護」といった言葉を聞いたことがあるだろうか。言葉だけ聞くと似たような意味で捉えれることが多いが、この2つには大きな違いがある。本記事では、それぞれの考え方を詳しく解説しながら、具体例をふまえて違いをわかりやすく紹介していく。

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2024.01.18
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動物福祉と動物愛護の違いとは

「動物福祉」と「動物愛護」という言葉を聞いたことがあるだろうか。日本人にとって、動物愛護はなじみのある言葉かもしれないが、近年、動物福祉の考えが世界中で求められ注目されている。どちらも「動物を大切にする」意味では同じのように思えるが、何が違うのだろうか。

まずは、2つの考え方の違いについて詳しく解説していこう。

動物愛護

動物愛護とは、「動物を愛し、護る」という気持ちを指す、人間を主体とした考え方だ。ペットを飼ったことがある人は、想像しやすいかもしれない。

動物は私たちにとって、ともに生きる大切な存在であり、生活を成り立たせる上でも大切な存在だ。しかし「動物愛護」という言葉が当たり前に受け入れられる一方で、動物が虐待や殺傷されたという衝撃的なニュースを耳にすることも多い。

そのような状況から動物を守るために、日本では「動物愛護法」が定められている。動物愛護法とは「動物愛護管理法」のことで、環境省が発表している概要では、次のように定められている。

「すべての人が『動物は命あるもの』であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物がともに生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めています。」(※1)

そのほか、「動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼすことのないように努めなければなりません。」といった飼い主としての責任や、家庭動物、展示動物、畜産動物、実験動物のそれぞれについても、動物の健康と安全を確保するとともに、動物による人への危害や迷惑を防止するための飼養および保管等に関する基準を定めている。

動物愛護法は、動物を愛護することだけでなく、人へのさまざまな影響を防止し、人と動物のともに生きる社会の実現も目的としているといえるだろう。

動物福祉

「動物福祉」とは、「動物がよりよく生きる、幸福な状態」を指す言葉だ。具体的には、動物が精神的にも肉体的にも十分健康で、幸福であり、環境にも調和している状態のことを指す。動物福祉は、人間主体での「かわいがっている」「大切にしている」という感情や考えは抜きにして判断・評価する、動物主体の考え方といえる。

動物主体の考え方のなかでも注目を集めているのが、「アニマル・ベース・メジャー」だ。アニマル・ベース・メジャーは、「動物にとって必要な環境はこれ」などと決めつけずに、動物それぞれの、そのときどきの状態を見て正しく評価すべき、という考え方のことだ。

たとえば、同じ犬種の犬でも、たくさん走り回るような活発な犬もいれば、寝転がっている時間が長いおとなしい犬もいる。お風呂が好きな犬もいれば、苦手な犬もいるだろう。それぞれの個性や状態を見てしっかり判断し、必要があれば改善するのが、アニマル・ベース・メジャーだ。

アニマルウェルフェアとは 5つの自由と遅れる日本の現状を知ろう

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「国際的動物福祉の基本(5つの自由)」

動物福祉には、国際的な基準として「5つの自由」という原則がある。この原則は、英国において家畜に対する動物福祉の理念として提唱されたものだが、現在では家畜のみならず、ペット動物・実験動物など、あらゆる人間の飼育下にある動物の福祉の指標として国際的に認められている(※2)。

ここからは、この5つの原則を紹介していこう。

飢えと渇きからの自由

・その動物にとって適切かつ栄養的に十分な食物が与えられている
・きれいな水をいつでも飲めるようになっている

不快からの自由

・風雪雨や炎天下を避けられる環境が与えられている
・清潔に危険物のないリラックスできる環境である
・温湿度など、その動物にとって適切な環境下で飼育されている

痛み・負傷・病気からの自由

・怪我をするような危険物のある環境にいない
・病気にならないようにふだんから健康管理や予防をしている
・痛み、外傷あるいは疾病の兆候があれば、十分な獣医医療が施される

本来の行動がとれる自由

・動物が本来の(正常な)行動を表現するための十分な空間・適切な環境が与えられている
・動物がその習性に応じて、群れあるいは単独で飼育されている

恐怖・抑圧からの自由

・精神的苦痛、過度なストレスとなる恐怖や不安を与えていない
・上記のような場合は原因を確認し、的確な対応が取れている

動物愛護と動物福祉の具体例

ここからは、さらにイメージしやすいよう動物愛護、動物福祉それぞれの具体例を紹介しよう。

動物愛護

動物愛護とは、前述したとおり「動物をかわいがって大切にしよう」や「かわいそうな状態にならないようにしよう」という、人間が動物に対して持つ感情や考えのこと。

たとえば犬を飼っている人が、愛犬のために好きそうなおやつをあげたり、環境を整えたり、迷子にならないよう気をつけたり、しつけをしたりすることなどは動物愛護にあたる。

そのほか、ペットを飼っていない人でも動物が好きで大切に思っている人もいるだろう。そのような人が、動物支援センターや動物愛護団体に寄付をしたり、物資を支援するのも動物愛護といえる。

動物福祉

動物福祉の具体例としてイメージしやすいのは、家畜や動物園・水族館の飼育だろう。

動物愛護と違って動物をかわいがり守ることが目的ではなく、動物に対して、「生まれてから最期を迎える瞬間まで、できるだけ苦痛を減らして、幸せに暮らせるようにしよう」とする考え方だ。

家畜や展示動物として利用しながらも、そのなかで「動物がどれだけストレスなく快適に幸せに過ごせるか」「動物にとってよい生涯にできるか」を考えるのが動物福祉である。

たとえば、多くの人が食べている卵。その卵を産む鶏がどのように飼われているか考えたことはあるだろうか。卵を産むために育てられる採卵鶏には、「放牧」「平飼い」「エンリッチドケージ」「バタリーケージ」の4つの飼い方がある。より鶏にとってストレスなく育てるには、「放牧」が理想的とされている。しかし日本の養鶏場では、もっともストレスを感じやすい「バタリーケージ」の飼い方が90%以上を占めているそう(※3)。これは、動物福祉の考えに則っているとは言い難い。

また、「かわいい」「面白い」と人気の、動物園や水族館での動物ショーも、動物福祉の観点では、「動物にとって残酷である」と考えられ、そのようなショーを廃止する動きも出てきている(※4)。

動物福祉や動物愛護を意識した行動を

似ているようで大きく意味が異なる、動物愛護と動物福祉。しかし違うからといって、一方が正義で、一方が悪なわけではなく、共存できる考え方だ。

ペットを飼っている人や家畜や行なっている人、飼育員をしている人が自身の役割を全うすることはもちろんだが、そのほかの人も動物愛護や動物福祉の考え方を示すことができる。たとえば、ペットショップではなく保護団体からペットを受け入れる、飼育方法を考慮して食品を選ぶ、などもそのひとつだ。できることから意識して行動し気持ちを表すことで、動物にとって辛い環境を変えることができるかもしれない。

動物愛護だけでなく動物福祉の考えが当たり前になることで、命を大切にする輪ももっと広がっていくだろう。

※掲載している情報は、2024年1月18日時点のものです。

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