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デジタルデバイドは、インターネットにアクセスできる人とそうでない人の間に起きる情報格差問題だ。これは年齢や地域差、経済格差など、さまざまな要因によって引き起こされている。デジタルデバイドの種類や主な原因、問題点、解決に向けた取り組みを紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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デジタルデバイド(デジタル・ディバイド)とは、情報技術の利用やアクセスにおける情報格差や不平等のことを指す。主にパソコンやスマホなどのデジタル機器を利用して、インターネットの情報にアクセスできる人とできない人の間に生じる問題だ。
デジタルデバイドは個人や集団間、地域や年代別ごとのインターネット利用率の差など、さまざまな形で現れる。また、発展途上国と先進国の間に発生する教育的または技術的格差など、世界的にもこの問題は拡大しているのだ。
この問題を解消できれば、各国の政治や経済によい影響をもたらすだろう。
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デジタルデバイドは、環境や状況によって3つのタイプに分類される。デジタルデバイドの種類や、考えられる原因を紹介する。
個人間や集団間のデジタルデバイドは、個人や企業などの集団組織の中で生じる情報格差だ。これらは年齢や性別、教育や所得などの社会的要因や、障がいの有無といった身体的要因によって起きる。個々の状況や条件はさまざまだが、IT技術を利用できない層や、利用しない層は、教育や就職などの場面で不利になる可能性が考えられる。
日本国内の地域間におけるデジタルデバイドは、主に都市部と地方部との間で生じる問題だ。過疎化する地域や離島などでは、都市部と比較してインターネット環境が十分に整っていない場合がある。また、高齢者が多い地域では、年齢によってもデジタルデバイドが起きていると考えられるだろう。
国際間のデジタルデバイドは、先進国と発展途上国の間で顕著に現れている。先進国ではブロードバンドなどの通信インフラが整備されているのに対し、発展途上国ではこれらを利用するための環境が十分に整っていない場合が多い。さらに人種や言語の壁、教育水準や経済格差などが関連する国際間でのデジタルデバイドは、日本国内のそれよりも深刻といえる。
デジタルデバイドが起きる背景には、さまざまな複合的要因が関係している。デジタルデバイドの原因として、考えられる例をいくつか紹介する。
経済的格差は、デジタルデバイドが起こる大きな原因といえる。所得が低い世帯は、デジタル機器の購入や通信環境の開設が難しく、これがインターネットの利用率にも直結する。
実際、年収200万円未満の低所得世帯のインターネット利用率は61.0%にとどまるが、年収600万円以上の高所得世帯では90%を超えている。(※1)インターネット利用率は低所得層ほど低い傾向にあり、この経済格差が情報の量や質に影響を与えているといえるだろう。
年齢や年代によるデジタルデバイドは、高齢者層に多く見られる問題だ。たとえば、若年層はデジタル機器の使い方を比較的容易に習得するのに対し、高齢者はその操作方法を覚えたり生活習慣に取り入れたりするのに抵抗がある場合も少なくない。
貧困地域や紛争地域など、インターネットにアクセスできない場所に住む人々は、デジタル機器に触れる機会が得られない。その結果、得られる情報の質や量に差が生じたり、オンライン学習の機会を損失したりと情報格差が生まれるのだ。
身体的または精神的な障がいの有無も影響する。多くのデジタル機器は、障がいのない人の利用を想定して開発されており、障がいのある人にとっては使いにくい場合が多い。たとえば、視覚障がいのある人は画面や文字を見ることができない。そのため音声や触覚などの代替手段が必要になるのだ。
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デジタルデバイドによって起きる社会問題を紹介する。
デジタルデバイドが起きると、個々の情報収集能力に差が生じる。スマホやパソコンなどを使えば、ニュースや天気予報、ヘルスケアに災害情報など、あらゆる情報が容易に取得できる。しかしインターネットを利用しない層は、これらの情報に触れる機会が制限されてしまう。個々の情報収集能力に差が生まれることで、情報格差や社会的孤立などの問題が発生するかもしれない。
デジタルデバイドは、教育や就職にも影響する。コロナ禍以降、日本でもオンライン授業やオンライン面接などを活用する学校や企業が増加した。しかし家庭や地域など、環境的要因によってインターネットを利用できない子どもや若者は、教育や就職の場面で不利な立場に置かれてしまう。これは将来的な職業選択にも影響を与える可能性がある。
デジタルデバイドは、経済格差を拡大させている。昨今、インターネットを活用したサービスやビジネスが増加している。しかしIT技術を利用できない層は、インターネットが提供する最新の情報にアクセスできないため、ビジネスチャンスやスキルアップの機会を逃してしまう。とくに地方部や貧困地域などは、これにより経済成長から取り残される恐れがあるのだ。
デジタルデバイドは、高齢者にも影響を及ぼしている。現代において、コミュニケーションの主要手段となっているメールやSNS。デジタル技術の利用に不慣れな高齢者は、これらのツールを十分に利用できず、社会から孤立してしまう可能性がある。また、家族や友人との交流の機会が減ることで、必要な情報や支援を得ることが困難になるリスクも考えられるだろう。
ITリテラシーが低いと、セキュリティ犯罪リスクが増加する可能性がある。デジタルデバイドによってインターネットの利用に不安や抵抗感を持つ人々は、十分なセキュリティ対策ができないため、個人情報の漏洩や詐欺などの犯罪被害に遭いやすくなってしまうのだ。
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デジタルデバイド解決のためには、どのような取り組みが有効なのだろうか。ここではデジタルデバイドを解決するためにできる取り組みを紹介する。
過疎化地域や貧困地域などでは、インターネットに接続するための通信インフラが整っていない場合もある。通信インフラの整備は、そのような地域で発生するデジタルデバイドに対して有効な取り組みだ。
IT教育の推進は、デジタルデバイドの解消に有効な取り組みだ。教育によってより多くの人がIT技術を活用できるようになれば、社会全体の問題の解決につながるだろう。
IT人材を確保することも、デジタルデバイドの解消に役立つ。IT分野での専門的な知識やスキルを持つ優秀な人材は、サービスの改善やデジタル化の促進など、あらゆる場面で社会に貢献するだろう。
経済的事情によって、デジタル機器の購入や、通信環境の設備が困難な状況にある人や地域も存在する。経済格差によって発生するデジタルデバイドには、物理的または経済的な支援が求められるだろう。
ここでは、国や地方自治体が行っているデジタルデバイド解決に向けた取り組みを紹介する。
デジタルデバイドを解消するためには、まずインターネットを利用できる環境を整備する必要がある。日本では、2007年から総務省が「デジタル・ディバイド解消戦略」を推進し、地方部や過疎地における通信インフラの整備を進めてきた。
結果、2023年12月時点での日本全国のブロードバンドの世帯カバー率は、99.7%となった。(※2)通信インフラの整備は順調に進んでいるといえるだろう。
デジタルデバイド解消のために、デジタル機器や通信環境を無料で提供する機関もある。図書館などの公共施設では、デジタル機器の貸し出しや、インターネット通信環境を提供する取り組みが行われている。これにより、自宅のIT環境が整っていない人でもインターネット上の情報にアクセスできるのだ。
日本では、地方自治体や民間団体などがシニアや障がい者向けのデジタル支援講座を開催している場合がある。主に、パソコンやスマホなどのデジタル機器の操作方法や、インターネットの正しい活用方法などを学習できる。
情報化社会において深刻な社会問題となっているデジタルデバイド。これにより生まれる教育格差や経済格差は、国内外に大きな影響を及ぼしている。問題の解決には、IT教育の推進やデジタル環境の整備などの対策が必要だ。
まずは身の回りで起きているデジタルデバイドに目を向けてみよう。これまで気にしていなかった問題に目を向ければ、自分にできることが見つかるはずだ。
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