Photo by MycoWorks
マッシュルームレザーを製造するアメリカのマイコワークス(MycoWorks)は、大規模の工場をアメリカ・サウスカロライナ州にオープンした。同社を代表する独自開発素材「レイシ」などの需要に対応する。
Kanae Tahara
Freelance PR / Writer
社会貢献×ライフスタイルを軸にした日本国内の企業で広報、PR、コンテンツ制作などの経験を積み、2023年よりフリーに。現在カナダ在住。
Photo by MycoWorks
オープニングセレモニーには、サウスカロライナ州のヘンリー・マクマスター知事も出席し、テープカットが行われた。
米国を拠点にするマッシュルームレザーの製造企業マイコワークスは10月25日、アメリカ・サウスカロライナ州ユニオン郡に、商業規模の工場をオープンした。工場の広さは、12,000㎡以上。マッシュルームレザーの工場としては世界最大規模となる。
同社は、2022年初めに1億2,500万ドル(約180億円)の資金調達に成功。この工場はその資金を利用して建設された。今後12か月以内に稼働を開始し、まずは年間数十万㎡のマッシュルームレザーを生産する予定で、多岐にわたる需要に応えるという。
マイコワークスはこれまで、エルメスと最初のパートナーシップを結ぶなど、主にラグジュアリーブランドとの協業がメインだった。だが、新工場の稼働により大量生産へシフト。さまざまな価格帯の製品を提供し市場を拡大する計画だ。
Photo by MycoWorks
工場内部の様子。
マイコワークスでは連邦政府からの支援を受けて、新工場ではすでに150名以上の従業員を雇用しており、工場のフル稼働時には新たに約400人が雇用される予定だ。新技術の発展とともに地域社会へ新しい雇用も生み出す。
また、再生可能エネルギーを供給する近隣のロックハート パワー社と契約。工場で使う電力は、太陽光と水力で発電されたものを使用するという。
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マイコワークスが提供する独自素材「レイシ」。
マッシュルームレザーとは、キノコの菌糸体から生まれた新しい素材のこと。天然皮革や合成皮革と比較して製造時の環境負荷が著しく少なく、動物愛護の観点からも代替皮革として注目を集めている。
2013年にアメリカで設立されたマイコワークスは、キノコの菌糸体からレザーに似た素材を生み出す「ファイン・マイセリウム(Fine Mycelium™)」と呼ばれる特許技術を開発。この技術によって生まれた代表的な商品が「レイシ(Reishi)」と名付けられた素材だ。
レイシは、独自の細胞構造によって高い強度と耐久性を持つだけでなく、手触りが良く、再生利用が可能であり、生分解性があるという特徴を持つ。
デザインの自由度も高いことから、2021年にマイコワークスはエルメスとオーダーメイドの開発も可能にした。共同開発した「シルヴァニア(Sylvania)」を用いた「ヴィクトリアバッグ」は、当時大きな話題を呼んだ。
マイコワークスの大規模工場のオープンで、市場におけるマッシュルームレザーの生産量の増加、品質向上、コストダウンなどが期待される。
マイコワークスのマット・スカリンCEOは、この期待について、ELEMINISTに次のようにコメントした。
「2030年までに気候目標を達成しなければならない企業やそのブランドにとって、レイシは画期的な選択肢となるだろう。プラスチック使用量はほぼゼロで、低炭素、有害な化学物質なしで製造し、そして完全にカスタマイズが可能だ。この組み合わせの特性を持つ素材は他に存在しない。
サウスカロライナ州のこの工場が開設されたことによって、多くのレイシが市場に投入される。ファッションや家具など幅広い製品に使用され、あらゆる需要を満たしていくだろう」
マイコワークスが開発したレイシをはじめ、マッシュルームレザーが人々にとって当たり前になり、選択肢として選べるようになる将来が近いかもしれない。
※参考
MycoWorks Celebrates Ribbon-Cutting at South Carolina Plant | MycoWorks
MycoWorks, making leather from fungi, closes $125M to scale production | techcrunch
An Exclusive Collaboration by Hermès and MycoWorks|MycoWorks
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