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130のブランドと小売業者が名を連ねる、イギリスの慈善団体WRAP発表の「Textiles 2030」調査報告書によると、ファッション企業は繊維製品の生産において炭素排出量と水使用量をすることができたが、生産・販売量が上回り、相殺する結果となった。
鴨井里枝|Rie Kamoi
ファッションライター/エディター/ジャーナリスト
イギリスの美術大学でグラフィックデザインを学び帰国後、ファッション週刊紙「WWDJAPAN」の編集部に約10年在籍。ファッションビジネスやトレンドの分析を主に、海外ではNY、ミラノ、ロン…
環境保護を推進するイギリスの慈善団体WRAP(Waste and Resources Action Programme)が、2021年に発表した環境協定「Textiles 2030」。この2021/2022年報告書が公開された。
その内容によると、2022年は2019年に比べて、ファッション企業による繊維製品生産1トンあたりの炭素排出量が12%、水の使用量が4%それぞれ減少した。しかしながら、生産・販売量が13%増加。これにより、水の使用量は全体で8%増加し、炭素排出量はわずか2%減少にとどまる結果となった。
「Textiles 2030」は、WRAPが持続可能なファッションを推進するための行動計画を示すもの。オンラインショップのASOSや大型ファッションチェーンのPrimarkなど、130のブランドと小売業者が賛同し加盟している。
今回の報告書では、複数の大手ファッション企業が炭素排出量と水使用量の削減の成果を出した。しかし、イギリス人の年間衣料品購買数は平均28点と、依然として消費力は高いままで、企業と消費者の環境に対するマインドにはまだ距離がありそうだ。
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WRAPの行動変容・ビジネスプログラム担当ディレクターであるキャサリン・デイヴィッド氏は、「この状況を変えることは可能だ。しかし、生産数の増加は明らかに消費と関連しているため、消費者にも果たすべき役割がある」と警鐘を鳴らす。
「WRAPは繊維製品そして産業の改善を目標に掲げ、企業と協力しているが、問題のもう一面は消費者のアクションにより影響をもたらすことだ。イギリス人はヨーロッパのどの国よりも多くの服を買っているという調査結果もあり、手元にある服の4分の1は1年間着用せず、他の4分の1近くは数回しか着ないという結果が出ている。衣替えは断捨離の絶好の機会。服を寄付したり売ったりすることで、サーキュラーエコノミー実現につながり、企業の生産量を減らすことができる」
報告書では、企業によるリサイクル素材の増加やリセール市場の成長についても伝えられた。リサイクル素材はポリエステルやポリアミドの採用が増え、バージン素材からつくられる生地の量の減少に寄与。さらに加盟企業が使用する綿花の4分の3近くは、ベター・コットン・イニシアチブ(BCI)のような持続可能な方法で生産されていると発表した。
拡大するリセール市場では、下取りを導入するブランドや小売業者が増えたことで、使用済み繊維製品の量が倍増している。しかし、新製品の生産量は中古衣料品市場に比べて圧倒的に大きく、WRAPによると、市場に出回る繊維製品のうち、中古品はわずか9%に過ぎないという。
ファッション産業による環境への影響を抑えるためには、企業の取り組みに加えて、私たち消費者による、大量消費スタイルから「本当に必要なものだけを購入する」消費スタイルに変えることが欠かせないだろう。
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