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ブルーサイン(Bluesign)とは、繊維・アパレル業界における持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証のこと。本記事ではブルーサインの意味や定義、取得企業についてまとめている。
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ブルーサイン(Bluesign)とは、繊維・アパレル業界において、環境、労働、消費者の観点から持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証のこと。スイスに拠点を置くブルーサイン・テクノロジーによって運営・管理されている。
ブルーサインでは、製品のサプライチェーンが、安全な原材料、化学物質、生産プロセスを経ていることを認証するため独立した監査をおこなっている。
5つの原則によって構成されるブルーサインは、2つの認証基準と、達成度に応じた3つの認証レベルを設けている。なお、認証を受けた企業は「ブルーサイン・パートナー」と呼ばれている。
ブルーサインは世界でもっとも厳しい基準と言われており、その認証を受けることで、環境負荷の軽減や、労働者と消費者に対する安全性を証明できる。
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ブルーサインを構成する原則は「資源の生産性」「消費者の安全性」「排水」「排気」「労働衛生と安全性」の5つ。これらの原則をふまえ、持続可能なサプライチェーンであるかどうかを判断する。
資源の消費と環境への影響を最小限に抑えた上で、最大限の量と最高の品質および付加価値のある繊維製品を生産する。
良質で健康のリスクを伴わない繊維製品であること。加えて、すべての生産過程でサステナビリティを適用する。
環境面で無害な部品を用い、生産および排水処理の過程を最適化することによって、河川、湖および海洋への汚染物質の排出を最小限にとどめる。
生産過程すべてにおいて厳密に管理された制限値を遵守する必要がある。 低排出部品の使用およびエネルギー使用の最適化により、CO2排出量を抑える。
危険物質の保管や取り扱いに関する訓練を実施し、埃や騒音などの環境汚染となるものから、繊維業界における労働者の健康および安全を守る。
ブルーサインには「ブルーサイン・アプルーブド・ファブリック」と「ブルーサイン・プロダクト」の2つの認証基準がある。また達成度に応じて3段階の認証レベルも設けられている。ここでは認証基準と認証レベルについて詳しくみていこう。
認証の対象は、繊維および服飾品製造業者、アパレルブランド、化学薬品メーカーなど。製造した製品に汚染物質や有害な化学物質が混入していないかという点はもちろんのこと、部品や糸、染料など生産工程すべてを包括的に審査している。
ブルーサイン・アプルーブド・ファブリック(Bluesign Approved Fabric)は、製品に使用される生地の規格。生地の90%がブルーサインの規格に沿っている必要がある。残りの10%も、消費者の肌に直接触れない部分に使用されていなければならない。
ブルーサイン・プロダクト(Bluesign Product)は、製品をつくるすべての部品に関する規格。製品の95%はブルーサインの基準にしたがっており、残りの5%も直接肌に触れない箇所に使用されていなければならない。またプリント、ワッペン、バックル、ストラップなどの付属品においても、30%がブルーサインの基準を満たす必要がある。
ブルーサインでは、達成度に応じて3段階の認証レベルがある。「ブラック」と判断された場合は、ブルーサインの基準・要件を満たしていないため認証を得ることはできない。
ブルー:製品で使用されるものすべてがブルーサインの基準・要件を満たすもの
グレー:製品で使用されるものが特定の条件でブルーサインの基準・要件を満たすもの
ブラック:製品で使用されるものがブルーサインの基準・要件を満たさないもの
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環境、労働、消費者の観点から持続可能性を判断するブルーサイン。ブルーサインが重要視される背景として、繊維・アパレル業界がもたらす環境汚染や労働問題がある。
国連貿易開発会議(UNCTAD)が環境汚染産業の2位(※1)に指摘するなど、環境負荷の高さが問題となっている繊維・アパレル業界。大量生産・大量消費・大量廃棄といった要素が環境負荷の高さの大きな要因となっている。
衣服がつくられるまでには、原材料の調達、紡績、染色、裁断・縫製、輸送などさまざまな工程が含まれている。これらの工程のひとつひとつで、大量のエネルギーと水資源が必要とされている。とくにナイロンやポリエステルなどの合成繊維は大量のエネルギーを消費し、これらの繊維は石油由来のため、製造過程で大量のCO2が排出される。
また、ファストファッションの流行による大量生産によって、大量廃棄が問題となっている。簡単に安価な服を手に入れられるようになった一方で、供給量が急激に増加したことで在庫が増え、行き場を失った衣類の多くが埋め立てや焼却処分されている。衣料廃棄物は年間50万トンを超えると推計されており、焼却・埋め立て処分されるのは90%以上とされている(※2)。
ファストファッションでは、低コストで大量生産するため、安い労働力が求められる。そのため、人権侵害にもおよぶような労働環境や条件が問題になっている。
ファッション業界のあり方を考えるようになった事故として、ラナ・プラザ崩落事故がある。ラナ・プラザ崩落事故は、2013年にバングラデシュの首都ダッカから北西約20kmにあるシャバールで起きた事故のこと。8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落し、死者1,134人、負傷者2,500人以上を出す大惨事となった。
事故の原因は、ずさんな安全管理の中で繰り返された違法増築によるもの。犠牲者の多くは、ラナ・プラザに複数入居していたファストファッションブランドの縫製工場で働く人たちだった。
この事故は、世界的にみても例のない労働災害として注目され、繊維・アパレル業界全体で労働者の安全を担保する取り組みが急速に進む要因となった。
2022年4月時点、世界では約722のブランドや製造業者、化学薬品メーカーがブルーサインの認証を受けている。ブランドでは、2007年にパタゴニアが最初に取得しており、ほかにもブルーサインの認証を取得した「ブルーサイン・パートナー」には、次のような企業やブランドが挙げられる。
アパレルブランド:アディダス、ナイキ、パタゴニア、プーマ、アシックスなど
製造業者:旭化成、YKK、三菱ケミカル、三井物産アイ・ファッション、田村駒、タキヒヨー、東レ、東洋紡、豊田通商、ウラセなど
繊維・アパレル業界において、環境、労働、消費者の観点から持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証を示す「ブルーサイン」。世界でもっとも厳しい基準と言われるにもかかわらず、取得企業やブランドが増加する背景には、繊維・アパレル業界がもたらす環境汚染や労働問題が関係している。
ブルーサイン認証がある商品を選ぶことで、環境や労働者、消費者にやさしい選択につながる。「商品を選ぶ」という選択自体は小さなアクションかもしれないが、ひとつひとつ積み重ねることで、よりよい社会がつくり上げられるのではないだろうか。
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