電通グループが開発した、ソーシャルグッドで企業と顧客がつながる自己主権型CRM基盤「つながLOOOP」。川崎市で実証実験を行い、地域住民・農園・企業が一体となって食資源循環社会の実現を目指すプラットフォームをつくった。
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エレミニスト編集部
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「つながLOOOP」とは、電通グループ独自のWallet技術をもとにWEB3.0を見据えたオープン・マーケティングインフラ基盤によって、生活者一人ひとりの社会貢献度をNFTで可視化・証明し、自治体や企業がその貢献度に対してインセンティブを提供することで企業と顧客がつながることができるサービスである。
これまでの市民有志による社会貢献活動では、生活者一人ひとりの貢献実績が可視化されず、また経済的な見返りも乏しいため、活動の規模や継続性に課題があった。つながLOOOPのサービスによって、生活者の社会貢献活動が可視化・証明され、自分の与信となる未来を目指し、本サービスの開発に至ったという。
サービス開発の背景には、Refi領域におけるグローバルでのトレンドがあった。ReFiとは「Regenerative Finance」の略で、ブロックチェーンを活用することで、環境問題や社会問題を解決しようとする取り組みを意味する。
グローバルでは、NGO活動にソーシャルトークンを導入し、インセンティブを与えることで活性化を図る「ValuesCo」や、ユーザーが気候にプラスの影響を与えることを可能にするWEB3.0プロジェクト「Ecosapiens」などの先端事例が多々存在するが、日本においては代表的な事例はほとんどないのが実情だ。
そこで、つながLOOOPでは、生活者の社会貢献活動をNFTにより実績証明化し、実績に応じた企業・自治体からのインセンティブ(独自体験)の提供を受けられるサービスを開発した。
つながLOOOPは、このサービスによって、生活者が社会貢献活動を楽しく、無理なく続けられ、さらにそれを通じて地域・社会を確実に変えていく、日本に前例のない仕組みをつくり、社会貢献活動の実績が自身の与信になる未来を目指す。
株式会社電通グループは本サービス開発に先立ち、2021年には「エコワリングKawasaki」としてプロジェクト化。川崎市で「NFT型コレクティブ・クリエイティブ」の手法を用いて共創を促進する実証実験を行った。
家庭で出る生ごみからつくるたい肥を活用し、地域住民・農園・企業が一体となって食資源循環社会の実現を目指すもので、参加者のエコ活動を記録し、活動実績に応じてNFTを付与。その実績に応じてインセンティブを付与するコミュニティプラットフォームをつくった。
さらに、参加者全員の活動成果をもとに、NFTコレクティブアートを作成。生ごみ削減実績を証明するアート作品としてNFTオークションにかけることで、個人のエコアクションが可視化・評価され、次のアクションを促すプラットフォームづくりとしての有効性についても検証したという。
結果として、半年の活動にもかかわらず約1000人の川崎市民が参加、27761.8kgの生ごみ量削減に貢献。参加者の91.7%が「周りにも勧めたい」、75%が「活動を続けたい」と評価している。実際に活動を行うことで、生ごみ量削減や参加者の満足度・継続意向アップにも寄与しソーシャルインパクトを生み出したといえるだろう。
また、企業からのインセンティブ提供を通した社会貢献活動への賞賛・評価される体験を通して、生活者の企業へのレピュテーションが向上することが明らかとなった。 これらによって、生活者の社会貢献活動が与信へと変わる未来への一歩として、自治体・企業・生活者をつなぐサービスの可能性が明らかになった。
つながLOOOPは、企業の既存の社会貢献事業や新規事業をより深化し、広げていくサービスと言える。そのうえで、一企業にとって、つながLOOOPと自社の既存事業や新規事業をかけ合わせることによるメリットはどこにあるのか。つながLOOOPを開発した株式会社電通の岩邊氏によると、メリットは3つあるという 。
自分の社会貢献活動を、ブランドや企業が応援・賞賛してくれるという圧倒的なブランド体験によって、生活者と企業との強いつながりをつくる体験型CRMを提供できる。
既存の自社SDGs活動をつながLOOOPと連携させることで、自社活動の参加者が、自治体や他社企業からインセンティブをもらえるようになる。それにより参加者が増え、より大きなソーシャルインパクトの創出が見込めるように。さらに自社の既存SDGs活動での貢献実績も証明できる。
自社の社会貢献度の見える化指標は2つ。参加者数や認知者数などのつながり貢献と、CO2削減量などのインパクト貢献の2つの指標で、これまで効果が可視化されにくかった自社の社会貢献活動の貢献度を見える化できる。続けるほど貢献度を蓄積でき、継続的な対外発信も可能に。
WEB3.0の仕組みを取り入れることで、あらゆる企業・自治体が参加でき、社会インパクトを大きくすることができるということだ。
今後つながLOOOPでは、さまざまな企業・自治体とタッグを組み、生活者と企業をつなぐ存在として、地域や社会を変える力になっていきたいという。
つながLOOOPは、「自社の既存の社会貢献活動の成果を可視化したい」、「既存の社会貢献活動の参加者を増やしたい」、「生活者ともっとつながりたい」……といった企業や自治体にとって、新しい選択肢となりえるのではないだろうか。
生活者にとっては、自分の「地域や社会のために行った活動」が実績として貯まり、自分に返ってくる。企業や自治体にとっては、生活者とつながり、自社の社会貢献活動を見える化しながら進化していく。生活者・企業・自治体にとって、良いことをして、良いことが返ってくるソーシャルグッドな循環の仕組みをつくっていくこの仕組みがどう広がるのか、期待したい。
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