Photo by https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000990.000080271.html
世界では人身売買・人身取引が行われている。被害者の数を正しく把握することは難しいが、明らかになっいてる被害者の数から、とくに人身売買が多い国がわかっている。それらの国と現状、さらに日本の評価についても紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
人身売買・人身取引とは、弱い立場にある人を強制的に獲得・輸送・受け渡して、強制労働や性的搾取、臓器摘出などを行うことを言う。被害者の権利や尊厳を奪い、身体的にも精神的にも大きなダメージをもたらす人権侵害だ。
国連薬物犯罪事務所(UNODC)の2022年人身売買報告書(※1)によると、2020年に報告された被害者の数は53,800人。2020年は過去20年間で初めて世界の被害者の数が減少に転じた。これは、新型コロナウイルスのパンデミックによる影響が表れているとみられる。
しかし、2017年から2020年までの4年間で、およそ19万人もの人が被害にあっている。また、人身売買・人身取引の被害者の数を正確に把握することはとても難しく、この数字には表れていない被害も多くあると考えられる。
2017年 | 44,989人 |
---|---|
2018年 | 46,384人 |
2019年 | 49,692人 |
2020年 | 53,800人 |
人身売買の被害に遭う弱い立場の人とは、主に女性や子どものこと。人身売買や人身取引の被害者の多くは、女性と子どもで占められている。UNODCの2022年人身売買報告書(※1)によると、2020年の人身売買の被害者の割合は以下の通りだ。
子どもだけで全体の35%、女性と子どもで全体の77%を占めている。また一方で、近年は男性の割合が増加していることも注目されている。
女性 | 42% |
---|---|
男性 | 23% |
子ども(女) | 18% |
子ども(男) | 17% |
アメリカ国務省は世界の人身売買の報告書で、2000年人身取引被害者保護法(TVPA)にもとづき、世界各国について以下のように評価している。
・第1階層(Tier1):TVPAの最低基準を満たしている
・第2階層(Tier2):TVPAの最低基準を満たしていないが、達成の努力をしている
・第2階層・監視リスト(Tier2 Watch List):TVPAの最低基準を満たしておらず、人身売買の被害者が多い
・第3階層(Tier3)::TVPAの最低基準を満たしておらず、人身売買の発生・通過・目的国となっている
ここでは、最低ランクである第3階層に評価された国々を紹介する。
アフリカは人身売買が多く発生している地域だ。アフリカで第1階層に評価された国はゼロで、第3階層や第2階層・監視リストがとても多い。なかでも、人身売買が多いと評価されたのが、チャド、南スーダン、エリトリア、ギニアビサウ、ソマリアだ。
東南アジアで第3階層と評価されたのは、中国、北朝鮮、ミャンマー、マカオ、カンボジア、パプアニューギニアだ。そのほか、第2階層・監視リストには、ベトナム、マレーシア、ブルネイが挙げられている。
中東も人身売買が横行している国が多い。シリア、イラン、アルジェリアのほか、リビア、イエメンなどもある。第1階層と評価された唯一の国が、バーレーンだった。
ロシア、ベルラーシは人身売買が多く、第3階層と評価されている。被害者の数は年々増加傾向にある。特にロシアは、ウクライナへの侵攻で多くの子どもや人々を連れ去っていることが指摘されている。
中南米では、ベネズエラ、ニカラグア、キューバで人身売買が多い。一方、コロンビア、アルゼンチン、チリは第1階層と評価されている。
ヨーロッパの国々やアメリカ、カナダなどが第1階層になっているが、日本は第2階層に評価されている。日本は技能実習制度の下で、移住労働者の強制労働が行われているとするほか、子どもへの性的搾取もあると指摘されている。実際、数は少ないが、日本でも人身売買・人身取引の報告があるのも事実だ。
UNODCの2022年人身売買報告書では、気候変動による人身売買の悪化が指摘されている。気候変動で自然災害が頻発すると、家や仕事を失う人々が増え、多くのストレスをもたらす。そのような環境が、人身売買を横行させる引き金になる可能性があるというのだ。
世界で減ることのない人身売買や人身取引。多くの人々が心や体に深い傷を負うことのないよう、世界が変わっていかなければならない。誰もが自分事として考えるべき問題のひとつと言えるだろう。
ELEMINIST Recommends