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LGBTQのような性的マイノリティに対する差別的態度や行動を指す「ホモフォビア」。「ホモフォビア(同性愛嫌悪)」の背景や関連する事件を振り返り、性的少数者の抱える問題について、どう受け止め理解すべきか考える。
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ギリシア語で「同一」を意味するホモと、「恐怖症」という意味のフォビアに由来する言葉「ホモフォビア」。
同性愛や同性愛者のコミュニティに対する嫌悪感や偏見、恐怖心を持つ人のことを指すが、差別的な態度や行動そのものを表す言葉でもある。
ちなみに、「トランスフォビア」とは、性同一性障害やトランスジェンダーに対して、「バイフォビア」は、同性も異性も恋愛対象になるバイセクシャルに対して、同様の嫌悪感を持っている人のことを指す。
これらの言葉は、LGBTQI+(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィア・インターセックス)のような性的少数者への暴力、ヘイトクライムなどの原因となることがわかっているが、宗教や文化、教育などにより同性愛を否定したり罰したりする国や地域もいぜん多く存在するのが現実だ。
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ホモフォビアの原因は一概には言えないが、一般的には、宗教的・社会的・心理的な要因が挙げられる。
キリスト教やイスラム教では、同性愛は神の意志に反する罪とされてきた。そのため、宗教的な価値観を持つ人々は、同性愛や同性愛者に対して否定的な態度をとることがある。
社会の大多数が異性愛であることから、同性愛は異常であり、病気とみなされてきた。そのため、社会の一般常識やルールに従う人々は、同性愛や同性愛者に対して拒絶したり、嫌悪を感じてしまう。
自分が性の対象になるかもしれないという不安や恐怖から、同性愛や同性愛者に対して防衛的になることがある。また、自分自身が同性愛的な感情を持っていることを否認、抑圧したりする人々は、同性愛や同性愛者に対して攻撃的(反動形成と呼ばれる自然な現象)になりがちだ。
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LGBT法連合会の公式サイト(※1)によると、ホモフォビアの事例としては、学校での差別的な発言やいじめ、就職や昇進への影響、法的不平等などさまざまなものがあるという。
「オカマ」「ホモ」「レズ」などと相手をさげすんだり、服装や髪型、声や仕草などから「男のくせに」「気持ち悪い」などと、同性愛者をからかう者がいる。思春期はとくに、嫌がらせや無視、嘲笑や中傷などの攻撃的な行為に走りやすい。
「同性愛は病気だ」「同性愛は異常だ」など、存在を否定するような主張をする者もいる。学校や職場だけに限らず、家庭のなかでも親から虐待を受ける例がある。
就職活動の際に必要な履歴書には、「男性」「女性」の選択肢しかないことに悩まされたり、同性愛者であることをカミングアウトした際には内定を取り消されることも。ハラスメントを受けたり、昇進・昇格に悪影響を及ぼす場合もある。
平等に与えられるはずの福利厚生面でも、パートナーやその子どもが法的な配偶者とは認められず、既婚者であれば当たり前のように受けられる扶養手当や家族手当、育児休暇などの対象にならないこともある。
同性愛や同性愛者に対して、法律上の権利や、医療・社会保障が制限される場合も少なくない。
例えば、同性婚や同性カップルの養子縁組を認めなかったり、戸籍上の性と心の性が一致しないことから、医療機関を見つけることが困難なこともある。パートナーの手術が必要となった際も、親族として認められず手術の同意書にサインできないこともある。
日本では同姓カップルの婚姻が法的に認められていないため、税の配偶者控除や遺族年金など、さまざまな社会保障を受けることが難しい。
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ナチスドイツの同性愛者迫害事件とは、1933年から1945年の間に、ナチス政権下で行われた、同性愛や同性愛者に対する差別や暴力、ヘイトクライムなどの一連の事件。
約10万人の男性が同性愛者として逮捕され、その内約5万人が公式に刑を言い渡された。
ナチスは同性愛を「不自然」で「退化的」なものとみなし、ドイツの「人種的純潔」を守るために、同性愛者を「根絶」しようとした。(※2)
2016年6月12日、アメリカ合衆国フロリダ州オーランドにあるゲイ・ナイトクラブ「パルス」で銃乱射事件が発生した。
犯人はオマール・マティーン容疑者(29)というアフガニスタン系の米国市民で、銃を乱射した後に警察との銃撃戦で死亡。この事件はアメリカ史上最悪の銃乱射事件となり、50人が死亡し53人が負傷した。
事件の動機については、犯人が犯行中に警察に電話をかけて過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓ったことや、IS系のサイトが犯行声明を出したことから、テロの可能性が指摘されているが、証拠は見つかっていない。
また、犯人の父親や元妻などの証言から、犯人が同性愛者を嫌悪していたことや、精神的に不安定だったことも明らかになっており、ヘイトクライムや個人的な恨みなども動機の一部だった可能性がある。
バラク・オバマ大統領は事件を「テロとヘイトの行為」と判決を下し、LGBTコミュニティーへの連帯を表明。また、銃規制強化の必要性も改めて訴えた。(※3)
保守的な考えを持つタフでひたむきな男性像を理想としているロシアで、2013年5月、同性愛告白の男性が複数の知人に暴行を受け、死亡した。
被害者となった23歳の男性は、同性愛者だと告白した直後に、複数の知人から暴行を受けた。肛門にビール瓶をねじ込まれ、服に火を放たれ、最後は石で頭を殴られるという残虐な事件だった。(※4)
2021年5月、イランで同性愛者と思われる男性が親族に惨殺された。同性愛を理由に兵役を免れたと知った男性親族3人が、彼の首を切って殺したものとみられている。被害者の男性は、身の危険を感じてパートナーとともに国外に逃れる計画を立てていたとメディアで報じられ、人権団体などが世界各地で非難の声をあげた。(※5)
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多様性を広めるためには、ホモフォビアへの理解促進が必要だと考えられている昨今。
世界では、性的少数者の権利や尊厳を守るためにどんな活動はおこなわれているのだろうか。
5月17日は国際反ホモフォビア/トランスフォビア/バイフォビアの日(International Day Against Homophobia, Transphobia and Biphobia)(※6)で、世界中でLGBTQ+に対する認識をうながすためにさまざまなイベントやキャンペーンが行われてる。
1990年、WHOが同性愛を病気ではないとしてリストから除外したことを記念して制定された。
WHOが提唱しているように、同性愛は病気でも、犯罪でも、禁忌でもなく、生まれながらの自然なこと。これは、国際医学会や日本精神神経学会でも認められている。
学校や職場などで、積極的にLGBTQ+に関する教育や啓発活動を行う。
同性婚やパートナーシップの承認、性別適合手術や性別変更手続きの容易化、ヘイトクライムやヘイトスピーチの禁止など、LGBTQ+の人々の権利や平等を法律で保障する動きがある。
LGBTQ+の人々や支援者が声を上げ、社会的な変化を促すプライド・パレードやデモなどでLGBTQ+の存在や多様性を表現したり、メディアやSNSなどでLGBTQ+に関する情報や意見を発信している。
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2020年の電通ダイバーシティ・ラボの調査によると、日本には約8.9パーセントの性的マイノリティに属す人がいると言われている。40人のクラスがあれば、3〜4人が性的マイノリティに当たるということだ。
人間には、よくわからないものは排除しようとする本能的な性質がある。あるいは、同性愛のような多様性を受け入れてしまうことで自分が不安定になったり、さらにそれが宗教や文化に根差した価値観である場合は、ホモフォビアもより強くなってしまう。
偏見や差別のない社会をつくるために、まずは性も個性の一つであり、多様な形があることから理解を深めていかねばならない。
参考:
※1 LGBT法連合会|性的指向および性自認を理由とするわたしたちが社会で直面する困難のリスト(第3版)
※2 ホロコースト百科事典|第三帝国における同性愛者の迫害
※3 BBC NEWS JAPAN|50人死亡のオーランド乱射は「テロとヘイトの行為」=オバマ米大統領
※4 REUTERS|ロシアで同性愛告白の男性が暴行死、背景に見える政治と宗教
※5 ニューズウィーク日本版|イランで同性愛の男性を親族が惨殺
※6 国連人口基金 駐日事務所|5月17日「多様な性にYESの日(国際反ホモフォビア/トランスフォビア/バイフォビア・デー)」に寄せて―UNFPA事務局長ナタリア・カネム
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