フランス政府、服の修理・お直しに手当を支給 今ある服をより長く愛用することを奨励

裁縫道具とハサミ、生地

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フランスでは、古くなった服や靴を捨てずに修理した場合、7ユーロ(約930円)から25ユーロ(約3,200円)の手当が支給される。持続可能なファッションを推進する取り組みの一環で、2023年10月より開始予定だ。

今西香月

環境&美容系フリーライター

慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中

2023.07.31
SOCIETY
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手当支給で服や靴の修理を促進

ボーナス支給のインセンティブで衣類の無駄削減へ

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フランス政府は、古くなったり着れなくなったりした服や靴を修理する際、国民に手当を支給する制度を2023年10月より導入する。

1回の修理に支給される手当は、6ユーロ(約940円)から25ユーロ(約3900円)。例えば、靴のかかとの修理なら7ユーロ(約1100円)、衣類の修理なら10〜25ユーロ(約1500円〜3900円)だ。政府は5年間に1億5,400万ユーロ(約240億円)を拠出し、設立した基金より手当を支給する。

この制度は、家電の廃棄を減らし環境保全を促すために始まった「家電修理手当」をモデルにしたものだ。フランスでは毎年捨てられている衣類が70万トンにもおよぶが、そのうち3分の2が埋め立て処分されているという。そこで、ファッションにおける修理を奨励し、新たな雇用を創出することを目的とする。

フランスでは2022年より、売れ残った衣料品の廃棄が禁止されるなど、環境汚染産業と揶揄される繊維セクターの大規模な改革を進めている。今回の措置も、その一環だ。ブランドにトレーサビリティの向上を求め、衣料品の再利用やリサイクルを行う組織を財政より支援するという目的も含む。

フランスで衣類の売れ残り廃棄禁止法がスタート 寄付・リサイクルを義務化

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ベランジェール・クイヤール環境担当国務長官は7月、サステナブルをテーマにしたファッションの発信地「ラ・カゼルヌ」を訪問。「10月から服や靴の修理をサポートする」と述べた。

彼女は、すべての縫製工場と靴メーカーにこのシステムに参加するよう呼びかけている。また、政府はファストファッション対策の取り組みに力を入れ、消費者により“道徳的な商品”を購入して修理するよう促し、新しい商品の購入を防ぐことを目指していると述べた。

目指すは「環境保全とファッション産業の両立」

より持続可能なファッションを推進する取り組みの一環として、2024年1月1日より新しいラベル表示のルールもスタートする。衣類の製造に必要な水の量や、化学物質の使用の有無、マイクロプラスチック排出のリスクなどを記載する必要があり、衣料も対象だ。

フランスはEUで4番目に大きなファッション輸出国であるが、近年その量は減少している。また2020年には、フランスの衣類の平均消費は430ユーロ(約6万7000円)で、EU平均を下回った。

これは、ファッションの消費を減らそうというフランスの取り組みによる成果のサインとも言えるが、高級ブランドやビジネス団体のなかには、こうした政府のアプローチに批判的な立場の人もいる。

今後は、環境保護とファッション産業の健全な発展をどのように両立させるかが焦点となるだろう。

※掲載している情報は、2023年7月31日時点のものです。

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