スウェーデンの自動車メーカー・ボルボが展開する「Volvo Studio」の世界初となるEV専用ブランドスペースが、東京・南青山にオープンした。スタジオの様子や、そこで知ることのできるサステナビリティ先進国について、実際に体験したことを交えながら紹介する。
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エレミニスト編集部
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東京にオープンしたボルボ世界初のEV専用スペース「Volvo Studio Tokyo(ボルボスタジオトーキョー)」は、スウェーデンの首都ストックホルムをはじめ、ニューヨーク(アメリカ)、ミラノ(イタリア)、ワルシャワ(ポーランド)、上海(中国)にある「Volvo Studio」の1つ。EVに特化したショールームは現在のところ東京の一箇所だけだ。
クルマのショールームというと、購入を前向きに検討している人が訪れる場所、というイメージを持つ人がほとんどだろう。しかし「Volvo Studio Tokyo」では車体の販売を行わないどころか、セールスパーソンも在籍せず、(希望しなければ)個人情報の収集を強いることもないという。
「Volvo Studio Tokyo」は北欧らしい世界観と最新のデジタルテクノロジーが融合した、心躍る空間だ。スウェーデンの森や空などの豊かな自然の中に、モダンな北欧家具が置かれている。
入口にはQRコードが設置してあり、専用のアプリをダウンロードすると、ARを使った様々なデジタルアクティビティを体験することができる。
ボルボ車に乗り込んで大画面を目の前にする「バーチャルドライブ」は、まるでストックホルムの街をクルマで走っているような臨場感あふれるアクティビティだ。もし試乗用EVに空きがあれば、そのまま実車の試乗をおすすめしたい。
ストックホルムの名所を巡る7分間のバーチャルドライブ
また、モダンなスカンジナビアデザインのインテリアの中で、「フィーカ」体験をすることもできる。「フィーカ」とは、スウェーデン人の生活に根付いたカフェタイムのことで、心身のリフレッシュやコミュニケーションの活性化を目的とし、忙しい中でもメリハリを持つために大切にされている文化だ。
コーヒーはストックホルムのマイクロロースター「STOCKHOLM ROAST」のもの
このように、「Volvo Studio Tokyo」はボルボの考え方やクルマの性能だけではなく、北欧文化やスウェーデンについても気軽に触れることができる。EV車に興味がある人はもちろん、北欧好きや新しいデジタル体験をしてみたい人にとっても楽しめるだろう。なおスタジオ内のアクティビティ体験は、常駐する“ブランド・アンバサダー”がサポートしてくれるので安心だ。
新たにボルボが開発した「Nordico」は、ペットボトルなどのリサイクル素材や、北欧の森林から採取された生物由来の素材、リサイクルされたコルクなどを活用した高品質なインテリア素材
「Volvo Studio Tokyo」では、なぜ直接的に車体を販売することなくこのようなアプローチをしているのだろうか。その理由は、ボルボは以前からクルマそのものの性能だけを重視するのではなく、企業全体の在り方として、ウェスネスやサステナビリティ、そして地球環境への配慮を怠らない考え方を持っているからだ。“購入する予定がなくてもウェルカム!”というオープンマインドの真意は、人々と地球環境、そして未来を見据えた真のプレミアムを追求していること。そしてサステナビリティな体験を実現する場所でありたいという想いからきている。
実は新たに「Volvo Studio Tokyo」を開設するにあたり、前身である「Volvo Studio Aoyama」の内装素材を最大限再利用し、スタジオの電力を100%クライメートニュートラル電力で賄っている。クライメートニュートラル※とは、排出する温室効果ガスを実質ゼロにする環境保護への取り組みのこと。
ボルボでは製造工程で消費される電気エネルギーやその他の発電で発生するCO2(二酸化炭素)などの温暖化ガス量を算出し、それに基づいて排出量削減証明書を購入し、発生した二酸化炭素を相殺している。2040年までにクライメートニュートラルな企業を目指すというボルボの計画が、ここ「Volvo Studio Tokyo」でもきちんと進められている。
ボルボの理念をクイズ形式で知ることができる、ARを使った様々なデジタルアクティビティ画面から。ボルボは2025年までに全世界の工場をクライメートニュートラルにすると宣言している
ラグジュアリーの代名詞でもあったレザー(本革)を使用しないのは、アニマルウェルフェアと、温室効果ガス排出量の約14%を占める畜産による環境負荷を考慮してのこと
EV専用のショールームを開設したことは、2030年までに全ての新車を電気自動車にするという計画に向けて、全社を挙げて取り組んでいる1つの証だ。スピード感を持って地球環境問題にコミットしている姿勢は、さすがはサステナビリティ先進国・スウェーデンの企業といえる。
クルマに乗るということに対して、地球環境問題と必要性との間でジレンマを抱える人も多いかもしれない。よく知り、“選択”することで時代の恩恵を受け続けることは不可能ではない。実際にボルボで実践されているように、調達する原料が正確に追跡され、クライメートニュートラルの工場で作られたEVがクライメートニュートラルの電力で走れば、地球への負荷は大幅に減らすことができる。生物も地球も、そして自分さえも傷つけることなく共存していく、そんな夢のある未来に向けて、選ぶ力こそ我々が学ぶべきことのひとつといえるだろう。
Volvo Studio Tokyo
〒107-0062
東京都港区南青山3-1-34 3rd MINAMI AOYAMA
お問い合わせ先/Volvo Studio Tokyo
https://www.volvocars.com/jp/studios/tokyo
取材・執筆/河辺さや香 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)
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